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待合酒場。

 あたしはシズカ。シズカ・マックロード。14歳。


 でも外見はまだ10歳前後に見えるらしい。幼く見えるっていうのはちょっとふにゃぁだけど。


 出身は魔族。黒い髪に黒い瞳、この人族にありふれた金髪碧眼の人に比べたら年齢の割には若く見られるらしい。


 まあ魔族にはツノがあるっていうのが通説になってるから助かってる。


 あれは実は魔の結晶なんだよね。


 マトリクスで覆った身体の感知部みたいなもの?


 基本自分の意思で出し入れできるものなんだけど、そこの所は知れ渡ってないらしいからあたしを魔族と疑う人は誰も居なかった。


 人族の住むこの土地、エデン。その東、ノドの地にある魔人の国エノク。


 まあエデンにしてもその周辺田舎の集落には黒髪の人種も住んでるし、あたしもそういう一族の出身だと思ってもらえたらしいんだ。




 孤児の多いこの街では冒険者の登録は10歳からできる。


 やっぱりね。孤児にも仕事を与えないと街の治安が悪くなるからっていうのが理由らしいけどそのおかげであたしはポーターのお仕事にありつけたの。


 そこはほんと感謝してるんだ。




 まあでも。


 どうしよう。このまま次のお仕事が見つからなかったら困る、な。


 そう思いつつギルドの扉を開けた。



「よう、シズカ! しけたツラしてんな。どうしたんだ?」


 そう声をかけてくれたのは最初にポーターのお仕事をさせてもらったドルトンさん。


 高齢のソロ冒険者さんでそろそろ荷物を運ぶのもしんどいからって募集かけたら来たのがあたしみたいな小娘で最初は機嫌が悪かったっけ。


 でもそのうち気心も知れて。あたし頑張って沢山荷物運んだしね。割とよくしてくれるようになった。


 今はもうほとんど引退みたいな感じで毎日ここギルドの待合酒場でお酒飲んで悠々自適に過ごしてる。


 それでも時々新人冒険者にアドバイスを求められたりしてるから。年の功? なんか気のいいおじさんだ。


「あはは。クビになっちゃったから次のお仕事探しに来たの」


「どうしてだ」


「もっとガタイのいい強い人雇うんだて言ってた……」


「そうかぁ。お前みたいにはしっこくて役に立つポーターはそうそう居ないのにな。


 はう。


「ありがとうドルトンさん。そう言って貰えると嬉しいよ」


「俺がもう少し若かったらな。ずっとお前をパートナーに指名したいぐらいだよ」


 はうう。なんだか優しさが身に染みる。


「でもな。まあもうお前さんもポーターだけなんてやってないで冒険者としての仕事も受けていけばいいとは思うぞ? 正直その辺の新人冒険者なんかには負けないだけの知識と経験がお前には既にある。今はまだランクは初級だったか? クエストこなして階級上げてどこぞのパーティーに所属しろ。悪いことはいわない。たぶんその方が実入りがいいぞ?」


「はうう。ありがとうございます。でももう少し。とりあえずポーターの仕事無いか窓口で聞いてきますね」


 一緒に行動するうちにあたしの身のこなしとかをちゃんとチェックしていたドルトンさん。その時も普通に冒険者の素質が有るって褒めてくれてた。


 だからかな。ずっとポーター一筋なんて、っていう風に思ってるんだと思う。


 まあね。


 普通ポーターって言ったら新人冒険者の経験値稼ぎか怪我して普通には戦えなくなった冒険者さんとかそんな人がするお仕事だしね。


 望んでポーターをしている人は少ない。ううん、ほんと居ないかも。あたしを除いて。


 だからあたしもポーターやりたい冒険者は嫌だなんて事は言わない事にしてる。


 だって。反感を買うだけだもの。


 あいつは命の危険を避けてポーターをやってるんだ、とか。


 そんな風に思われて信用を無くすもの。

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