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白銀の少女。

 大量のホーンラビットを二人で担いで街まで戻る。

 これが漆黒の翼としてのはじめての稼ぎになるわけだ。なんだか嬉しい。


 魔獣は倒すと魔石が残る(魔獣っていうのはもう魔石とガワだけになった精神生命体だから)。魔物は体内に魔石を宿す。でも野獣にはほぼほぼ魔石と呼ばれるくらいの大きさの石は育ってない。あってもクズ石程度。そのお肉は美味しくいただけるから、けっこう重宝されるのだ。

 もちろん魔獣の魔石はけっこう良い値段で買って貰えるから、儲けようと思えば沢山運べる魔石集めの方が効率がいい。

 冒険者たちがポーターを雇ってまでして危険なダンジョンに潜るのは、もっぱらそうした魔獣の魔石集めのためだ。

 あたしたちは二人ともまだ冒険者免状を持ってないし、そもそも初心者クラスとみなされているから試験も受けさせて貰えないし、で、ダンジョンにはもぐることができない。

 丙種免状でさえ一年間の活動実績が無いと試験を受ける資格も与えられないのだ。

 かといって、今から免状持ちのベテランパーティーに入れて貰うのもちょっと嫌。

 あたしはタケルと一緒なら冒険者をやってもいいかなって思ったんであって、本格的に冒険者稼業に身を置きたいわけじゃないもの。


 将来的にタケルが一人でも冒険者としてやっていけるようになったら?

 どんどん腕が上がってあたしの補助がいらなくなったら?

 もっと強い魔獣と戦いたいって思うようになったら?


 その時は、あたしは身を引く覚悟はあるんだ。

 どこのパーティーからも引っ張りだこになるくらいになれば、あたしはもう用無しだもの。

 逃げてるんだってことは、わかってる。

 今だって結局、魔王になりきれない自分から目を逸らしているだけだっていうのは、充分わかってるんだ。

 だけど。

 だけどもう少しだけ、こうしていたい。

 もう少しだけ、タケルの事をみていたい。

 この気持ち、なんだかわかんないけど。でも。


 ♢ ♢ ♢


 大通りを歩きそろそろギルドかなって思ったところで人の壁。

 なんだろうと覗き込むと、道のど真ん中でまだ若い女の子が絡まれている。


「俺たちのパーティーに入れてやろうって言ってるのに気に入らないって言うのか!?」


「だって、おじさんたちポーターを探してるって言ってたじゃない。わたし聞いてたもの」


「そんなもの、初心者ならポーターからっていうのが常識だろうがよ」


「わたし、重いもの持つの嫌だもの。ポーターはやりたくない」


「魔道士職なんだろ? 初心者魔道士なんてパーティーのお荷物で金がかかるだけだろうに。上級職の魔術士か白魔導士になるにも魔導書やら魔術具やらが必要だろう? その点うちのパーティーなら先輩の上級職が二人揃ってるぜ? 師匠として師事するもよし、いい条件だと思うがな?」


「いらない。師匠なんかいなくても、わたし強いもの」


「はぁ? ふざけんじゃねえぞ? ちょっとみためが良いからって調子にのんじゃねえ。俺らのパーティー炎の竜のどこが気に入らねえって言うんだよ!」


 え?

 やっぱりあの男の人ってドワンさん?

 しばらくみない間にずいぶんとやさぐれててわかんなかった。

 一応イケメンなお兄さんではあったのに、今の彼、無精髭に頭もぼさぼさ、服も煤けてない?


 対するその前にいる少女。

 白銀のふわふわの髪、透き通るような肌。華奢な体躯。

 冒険者っていうよりもどこぞのお姫様っていったほうがピッタリくる、そんな美少女で。


 最初から聞いてなかったからわかんないけど、どうにもドワンさん、彼女の美貌に惹かれてナンパしたところを袖にされて激昂してる? そんな気がする。


「このやろう!」ってドワンさんの叫び声と、その少女から発せられた笛の音のような声がほぼ同時に聞こえたと思ったら。


 どすん、とドワンさんが倒れた。

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