猫の家。
そこから王都までの道のりは割と平穏に過ぎた。
魔物は何匹か出たけどそんなに強いのもいなくってたまたま遭遇しちゃった程度。
盗賊は、金色魔人を倒しちゃったのがきいたのか、あれ以来襲って来なかった。
に、しても。
あれって普通の盗賊なのかな? あんな魔人まで従えるなんて大掛かりすぎない?
そんなことを思いながらも今日は王都で買い物。
紅一点のアリエッタさんがあたしを街に連れ出してくれて。
「ほらほら、シズカちゃんに似合いそうよ?」
そんなふうに街に飾られたお洋服を見て回る。
「あたしそんなひらひらのお洋服着た事ないかなぁ」
魔族の中ではこういうひらひらした可愛い系のお洋服は流行ってなかったし。
「まあ。若いのに。お仕事の時はお仕事用着なくっちゃだけど、プライベートの時間にはこういうお洋服もいいものよ? まあ、シズカちゃんって一人暮らしだったっけ? まずは生活が安定しなきゃって思う気持ちもわかるけど」
「安い宿屋さん月極契約してるので荷物もそんなに置けませんし」
「そっかぁ。頑張って早く一人前の冒険者にならなきゃね? ポーターのお仕事はお給金少ないしさ」
「そうですね。がんばります」
「うんうん。っていうか適正とかもう調べた? 新人のうちはギルドの講習会とかにも積極的に参加しなきゃね?」
「はう。前のお仕事が専属で時間があまり取れなかったから、そういうの出たことないんです」
「もう。前のとこって炎の竜だっけ? あそこ評判悪いけどそんなことも……」
はう! ほんとはそれってあたしにとっては都合が良かったんだけどね? ただ、普通はそういうのは雇い主側が非難されるのかな?
「いえいえ。安定して雇ってもらえてただけ感謝はしてるんですよ。いきなりクビって言われた時はショックだったけどそれでもそのおかげでこうしてアリエッタさんのところのお仕事も貰えましたし」
「まあ。うちは常時ってほどポーターを必要としないから残念だけど、このお仕事が片付いた後もシズカちゃん指名で募集出すからね!」
「あうあうあう。ありがとうございます」
その後も王都の観光をいろいろして噴水の広場とか赤のレンガの時計台とか王宮庭園とか見て廻った。
ふふ。こういうのもちょっと楽しい。
最後に猫の家亭ってちょっと可愛い喫茶店でお茶をして。
あたしはローズティを頂いた。アリエッタさんは珈琲っていう黒い飲み物。最近王都で流行ってるらしい。
それにしても。
王都にはいろんな雑多な人種が住んでるんだな。と、あらためて感心して。
普通の人族だけじゃなくて獣耳にしっぽを持った獣人族、背中に鳥のような翼の生えた有翼族、蝶のような羽を持った妖精族、鱗のある竜人族、身長の低い小人族、明らかに大きい巨人族、金色の髪、赤色の髪、そして、黒髪の種族。
あからさまに魔人族の特徴とされる魔族のツノを見せているものはいなかったけれど、あたしみたいに紛れ込んでいるものもいるかもだし。
あの金色魔人なんかはもしかしたら混血? かもしれないなとかそんなふうにも思う。
あたし達が住んでいた街、リバーケイプなんかにはそこまで異人種が居なかったからちょっと新鮮だ。
猫の家亭には猫耳の店員さんがかわいいエプロンを着てフロアを行き交っている。
うん。こういうの、いいな。