盗賊団。
食事といってもこんな昼時にそんなに大掛かりな料理を出すわけではない。
せいぜい火を起こしお湯を沸かして固形スープを溶かすくらい。あとはビスケットか干し肉、そんな携帯食料を齧る。
商隊の計らいであたし達にもお湯が貰えた。紅の閃光のメンバーは交代で食事を取るみたい。あたしはとりあえず自前で用意したビスケットを食べた。
まあ、日数分の自分の食料くらいは自分で用意するのが礼儀。炎の竜の時は最初こそ普通だったものの、そのうち食料の買い出しから準備まで全て任されたっけ。
費用として渡されるお金は結構ギリギリだったので、かなりシビアに計算しなきゃ後で困った。
まあ普通に運べる荷物の大きさにも限界はあったので、任せてくれることでなんとかしようって気にもなったものだった訳だけどね。
こうした商隊の護衛で一番危険なのは実は魔物ではなくて人間だった。
山賊盗賊の類はまだあちらこちらに潜んでお金になる荷物を狙ってる。
一応、命と荷物、どちらか選べと言われたら最終的には命を守る。
荷物をある程度ばら撒いて逃げることで助かることもあるかな。
相手が魔物だった場合は割と気が楽だ。
やっぱりね。人間同士の殺し合いを見るのはあまり気分がよろしくない。
今回も。
何もないといいんだけど。
ピピー!
先頭方面の監視をしていたランガさん? 口笛が鳴り響く。
あう。やっぱりまったりとは行きませんでしたか。
不審な人間達がこちらに近づくことを知らす笛の音。
食事をしていた人達も皆持ち場に戻り、とりあえず不明な奴らの襲撃に備える。
騎乗で近づいてくるのは十数人。ちょっと規模が大きい?
あっという間に半数があたし達の馬車を追い越したかと思うと、ぐるっと周囲を囲まれてしまった。
こちらの護衛は五人。あとは商人だから戦力外だ。
むむむ。どうしよう。
あたしも表向きは戦力外だしさ。
「大人しくしろ! 逆らうと命はないぞ」
盗賊団? のリーダー格らしい男が馬上でそう声を張り上げた。
商隊の馬車は一応幌ではなく板の屋根で覆ってある。
こういう時に備え入り口も簡単に開かないようになってるし隊長さんはじめ商隊の人々は馬車の中に立て籠って。
「流石に、そう簡単には降参できないな」
魔法剣士のフランシスさんが剣を抜き、そしてその獲物に炎を纏った。
それが合図になったのか、盗賊団と紅の閃光との間で戦闘が開始。
人数では圧倒的に不利だと思われた彼らだったけれど、盗賊団とほぼ互角に戦って。
互いに決め手にかける、そんな状態になった時だった。
盗賊団の背後から、黄金に輝く魔人? が、現れた。