ギルドマスター。
「なんだと! もう一回言ってみろ!」
「ええ、何度でも言いますわ。炎の竜リーダー、ドワン・リューデット。そこのシズカさんは貴方たち炎の竜とポーター契約を交わしてはいません。パーティーメンバーとして登録もありません。それなのに無理矢理言うことを聞かせようとそうして暴行を働くのであれば、当ギルドとしては見過ごすわけには参りませんよ? ギルドマスター、ルミーナ・レイクウッドの名に於いて、これ以上彼女に無理強いをするのであればあなた達の冒険者登録其の物の剥奪もあり得ますよ」
え!?
ちっ
っと舌打ちをしてあたしの手を離すドワン。
そのままジロっとあたしとルミーナさんを交互に睨め付けて、ふんと鼻息を荒くして振り返った。
憂さ晴らしか入ってきた入口を乱暴に開き、そのままドカドカと退出して行ったのだった。
はうあう。
って嘘!
ルミーナさんって……
「ギルマスだったんですか!? ルミーナさん!」
「え?」
え?
「知らなかったんです? シズカさん!」
ええーー!?
そっち?
っていうか知ってて当たり前のはなしだったの?
「はう、知らなかったです……、ごめんなさい」
「初級冒険者には毎年春に講習会も開いてますし、そこで訓示もおこなっていましたし……、ああ、そういえばシズカさんはこの街へ来られたのが秋だから、季節的にそういった機会ありませんでしたっけ」
あうあう。そういえばそんなものがあったとかは聞いた事があったかも。
「っていうかそんな偉い人が受付の窓口に居るなんて、普通思いませんよ」
「ふふ。私は後ろでデンと座ってるよりもこうして冒険者さんたちの顔が見える方が好きなんですよ。それに、将来有望な冒険者の卵に直接触れ合えるなんて、素敵じゃないですかー」
ああ。この人は本当にこのお仕事が好きなんだな。
そう思うとなんだか自然と笑顔になれた。
「やっぱりシズカさんには笑顔が似合いますね。この間からずっと難しいお顔をしてましたから」
ああ、ごめんなさいルミーナさん。っていうかありがとう。
「はう。ありがとうございますルミーナさん。助けてくれて」
心配してくれたことも、助けてくれたことも。みんな。
「いえいえ。さっきも言った様に炎の竜さんにはちょっと困ってるんです。これで少しは反省してくれるといいんですけどね」
あう。
あれで自分を省みるようなら、ねー。
ちょっと無理じゃないかな?
あのドワンさんだもの。
あたしはルミーナさんに勧められたポーター契約を受けることにしてギルドを後にした。
顔合わせ打ち合わせは三日後。ちょっと大きめの商隊の護衛パーティーの補助だっていう話だし今までとは勝手が違うかな?
あは。ちょっと楽しみだ。
ブクマ、評価、ありがとうございます。
励みになってます。
がんばりますね。