ポーターのお仕事。
ありがとうございます。
ここから新展開です。
「こんにちわー」
「あらあらシズカさん。最近お見かけしませんでしたけどどうされてました?」
「はうごめんなさい。ちょっと実家の父が危篤だって連絡が来て」
「里帰りされてたんです?」
「そうなんですよう」
「だからエアメールも届かなかったんですかー」
「ごめんなさい」
「シズカさんのご実家って言うと東の辺境でしたっけ、結構長旅になりますよねぇ」
「まあそれでも。父の葬儀には間に合いましたから」
「それはそれは。ご愁傷様です」
あたしは「ありがとうございます」と小声でこたえ、
「ところで、ポーターのお仕事って引き合いありません?」
と、そう聞いてみる。
「ああ、それなら」
と、ルミーナさん。黒縁のメガネをクイっと持ち上げこちらを覗き込み。
「実は炎の竜さんからシズカさんご指名で依頼入ってるんですけど。どうします? 受けますか?」
「へ?」
「だから、炎の竜さん、シズカさんに戻ってきて欲しいらしいんですよ。あのあと男性のポーターを何人も紹介してるんですけど、皆さんクビになってしまって」
はう。
「どうして?」
「それがひどいんですよう。紹介した方達は皆ベテランさんだったのに、炎の竜さんったら、こんな素人よこしやがって、なんてクレーム言うんですよー。そんな筈ないんですけどねー」
はうあう。それはひどい。
「なんでも、遠征中の食事の用意から武器の替えポーションの調達にそれらの運搬まで、全てこなしてたんです? シズカさんったら」
あう。まあ、たしかに。
「まあ、それくらいならサービスで……」
「だからですかねー。本来であればそういった雑務はパーティーメンバー自身で行うべきものですから。ポーターはあくまで補佐。荷物運びですからね? お仕事内容を逸脱してますよ? そもそも新人の冒険者さんには遠征で必要な食料の量がどれだけか把握すら出来ませんからね。ましてや必要量のポーションをきっちり計算して運ぶなんてことも。元来、運べる荷物にも限りがありますから、帰りの荷物量も計算して持ち物を用意するなんて芸当、普通のポーターはしませんよ?」
あうう。でもさ、少しでも役に立とうと思ったんだもの。
「それにお話が本当なら……。シズカさん、あなた一体どれだけの荷物を一人で運んでたんです? 貴女が一人で運んでた量を男性二人でも運べなかったそうですよ?」
うきゅ。
まあ、力には自信があったから、さ。
「そう言うわけでして。炎の竜さんはシズカさんを探してましたよ。どうします? 戻ります?」
メガネの奥からこちらをギロンと覗くルミーナさんの目が怖い。
ふにゃぁ。どうしよう……。