悪魔のために戦おう
昔、悪魔が定期的に人類を間引きに海から上がってきた。
僕は悪魔祓い、エクソシストを生業としており、今日も悪魔に民の命を奪われないためにパトロールを行っていた。
満月の美しい夜に、岸壁沿いに真っ黒の体を小さく屈めた青年がいた。月の光に照らされて、目を細く閉じる表情はなんとも眠たげで幼い。僕は悪魔かどうか確かめるために足音を立てず近付いた。
青年は手が届きそうな範囲に僕が近付いても驚いた様子がなく、僕は悪魔か確かめるために黒い体に触れた。
青年は驚いて翼を広げて飛び上がった。黒い筋張った翼は悪魔独特のデザインであり、人間とはかけ離れた不穏な造形をしている。相手が悪魔である限り僕も消すために全力で戦う必要がある。
海沿いであることから強い風が吹いた。悪魔のフードが揺れて歪な頭部が露になる。眉間に1本の短いツノが生えており、周りの頭髪は短く刈り込まれていた。僕は今の風で髪が目に入り、一瞬写りこんだ彼の姿を最後に瞼が開けない。暗く見えない世界のなかで悪魔と対峙することになり、目を擦った。
その隙に悪魔が長い鞭で僕を縛り、両手の自由がままならなくなった。悪魔の羽音を聞く限り悪魔は僕の近くに降り立った。
ジャキ・・・身に覚えのない音が聞こえる。体の痒さから察したが僕の髪は切り落とされたらしい。少しずつ目を開いた。
悪魔は自身の爪を擦り合わせ、間に髪を挟んで切っている。悪魔を目の前にして捕えられていながら、心地よい感覚に動揺していた。悪魔はキィと高い音で鳴きつつ僕の癖毛をばらしていった。
髪で顔全体が隠れていた僕は月明かりを直接見て目が眩んだ。すぐに視界が暗闇に包まれた。悪魔が僕に覆いかぶさっている。
悪魔が僕の頭を噛み始めた。今日が僕の命日だと思ったが痛みが無い。定期的に飲み込む音が聞こえ、髪を食べられてると悟った。
耳の裏を噛む際、彼の冷たい体が僕に沿う。僕は鳥肌と恐怖で不安だったが、気持ち良さもあり葛藤していた。ヨダレが出そうになった時、悪魔が海から水の塊をプレート状に加工して見せてくれた。
僕の頭は彼と同じ髪型になっていた。僕の髪が目に入り痛がったことから綺麗にしてくれたのだろうか。鞭が緩み両手が自由になった。両手で自分の頭を撫でるとエッジの効いた触り心地で、快感が頭皮を駆け巡った。
しかし悪魔を祓うのが僕の仕事なので胸から十字架を取り出し悪魔の前に掲げようとして、放り投げた。
人に対して友好的な悪魔は初めて見た。彼を消すのは惜しかった。
僕は悪魔のために戦おう。
悪魔は鳴いて僕に口付けしようと近付いたが、角が怖くて避けてしまった。
僕から触ってもいいかな。