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《エピローグ》

「さて、君がここに呼ばれた理由はわかりますね?」

「は、はぁ……」


 翌日、協会の施設の一室で俺は向井田さんと対面で向き合って座っていた。

 あの偽装初級ダンジョンから全員脱出することはできた。死者1名、重傷者4名と言う結果であるが、ドラゴン相手にこの結果ならば相当良い結果らしい。

 ダンジョンのボスってのは実際にボス部屋に入るまでわからないのが通例であるが、ドラゴンがボスとして居を構えるダンジョンならば、通常に出てくる魔物も亜竜と呼ばれる種類が通例であるし、ローワーウルフが出てくる様なダンジョンであれば、獣系統のボスモンスターが出てるのが通例であった。

 だから、今回の場合は異例としか言いようがなかった。

 ちなみに、ドラゴンは30人単位の軍を編成して戦わなければならないほどの凶悪な敵で、日本でドラゴンが出現したのは今回が初めての例だそうだ。アメリカやブラジルなどの片手で数えられる例はあるため、通例が存在すると言うわけである。


 まあ、そんな凶悪な魔物を一撃で葬り去ったわけだし、呼び出されるのは仕方ないだろうと思う。

 だから、俺が呼び出された理由も推測することができた。


「俺の《スキル》に関してですよね?」

「ええ、今回の報告から、君の《スキル》の再鑑定と、ランクの再評価がなされることになったわ。それと、まだ君は卒業していないけれども、君の身柄は協会あずかりとなったわ」

「は、はぁ……」


 まあ、どの企業にしようかは悩んでいたところだったし、仕方ないのかなとは思う。

 しかしまあ、協会所属ね……。理由ぐらいは聞いておいた方がいいのだろう。


「理由は……?」

「もちろん、あなたの《スキル》です。どの企業・組織もあなたの様な強烈なスキル保有者を御するのは難しいとのことで協会所属が内定となりました」

「……?」


 なんというか、ピンとこなかった。

 一般常識として強力なスキルであればあるほど引く手数多な印象があったのだけれど……。


「如月さん、あなたのランクは【特級】です。これまでのランクでは評価できないためこの扱いになりました」

「は、はぁ……」

「【特級】は一般には公表されていないランクで、【特級】の《スキル》は如月さんを含めて国内で2例目、世界でも同等の評価が付けられた探索者は12名確認されています」

「……」


 まあ、確かにあれほどの能力ならば、そういう扱いになるのもわかる。

 だけれども、その特級というランクが秘匿されている理由がわからなかった。


「あの、向井田さん。なんでその【特級】は公表されていないんですか?」


 俺の質問に、向井田さんは素直に答えてくれた。


「そもそも、【特級】の《スキル》は、世界の常識を揺るがすレベルの能力であるとされているわ。あなたが仲良くしている白鷺さんの《スキル》である《未来予知》は自分自身の選択の結果を先取りしてみる事ができるって能力故に三級になるわけだけれども、これがもし、制限なく予知できるのであれば、【特級】になるわ」

「そうなんですね。それが……?」

「さて、こんな能力を持った人が果たして世間ではどの様に扱われるでしょうか?」


 向井田さんの質問に対して、俺は少し考える。

 要するに、俺の様な世界を滅ぼしてしまう様な、価値観を変えてしまう様な能力を持った人物は、当然ながら排斥されてしまうのだろう。

 普通に考えれば、白鷺さんの様に明確な理由がなければ隣にいるのも怖いだろう。


「つまり、恐れられて差別されると」

「その通り。それに、そんな世界を変えてしまう様な能力なんて、一般企業じゃ持て余してしまいますからね」


 それだったら、俺はこのまま《スキル》を使って戦う様な《ダンジョン》攻略を行う必要はないのかな?

 そう考えると、俺が協会に所属することになる理由がわからないが……。


「もちろん、如月さんは探索者ですので《ダンジョン》攻略は行ってもらいますよ。協会からの派遣という形になりますが……」

「あ、ダンジョンには潜る必要があるんですね……」


 正直、俺は《ダンジョン》に潜る動機がない。

 そもそも就職活動だしね。

 もう決まってしまった様なものだけど……。

 いや、待てよ? 協会ってそもそも公務員じゃないか? ならば、仕事として《ダンジョン》に潜る必要はあれど、あんまり使いたくないが俺自身は《スキル》で絶対安全だから、案外楽な仕事なのかもしれなかった。


「そうだ、給与とかってどうなるんですかね?」

「そうですね、国家公務員特別法によって定められているんですが、資料として後ほどお渡ししますので確認してくださいね」

「はい」

「では、日本ダンジョン攻略者協会の説明を始めますね」


 これ以降は協会への内定者説明会の様なものであった。

 協会の設立過程や、経歴、所属人員の推移や対処してきたダンジョン災害などだった。

 その内定者説明会が終わったのは夕方であった。


「うーん……。ああ、貴重な日曜日が終わってしまったなぁ……」


 外はすっかり夕暮れだった。

 更新された探索者免許証には【特級】の記載がされており、運転免許証のゴールド免許の様なデザインをしている。


 しかし、協会所属の探索者に就職内定を貰ったとして、俺は何をしたら良いんだろうか?

 そんなことを考えながら、日本ダンジョン攻略者協会の施設を後にしたのだった。

閲覧ありがとうございます!


第一章エピローグ、主人公が探索者になるまでです。

まだ、《スキル》をうまく使ってやり過ごせば良いと考えている段階といった感じです。

一章では全力を出さないことを決めた話ですが、二章では《スキル》を使いたくないと思うような出来事が起きます。


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