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《スキル》発動

 さてそんなこんなで俺たちも《ダンジョン》に入ることになった。

 場所は公園からはそこまで離れておらず、入口には危険を示すカラーコーンが設置されていた。

 不自然に出来上がった《ダンジョン》に潜るための階段は、前回のコンクリート製の階段ではなく石で出来た階段だった。


「新宿ダンジョンは協会が管理しているから、入口が整備されているが、普通ダンジョンはこんな感じで天然な場合が多いんだ。実際に見ると不思議だろう?」


 本沢さんはなぜかドヤ顔でそう語る。

 確かに試験では《ダンジョン》の種類について学ぶ。

 今回はオーソドックスな【天然型ダンジョン】と呼ばれるものであった。

 他にも、建物そのものが《ダンジョン》になってしまう【変貌型ダンジョン】、都市そのものが《ダンジョン》になってしまう【災害型ダンジョン】などがある。

 ダンジョン生成に巻き込まれた人には《スキル》が与えられないのは一般的には《ダンジョン》は攻略する意志のないものには《スキル》を与えないからだと言われている。


「……そうですね。噂には聞いていましたがダンジョンと現実世界との境界がこんな不思議なことになっていたなんて……」


 神之田さんはそう言いながら、不思議そうな表情で周囲をキョロキョロしている。

 周囲には魔物の姿を見ることはないけれども、すでに先行して3班が突入しているのだ。これは仕方ないだろう。

 ちなみに、白鷺さんはすでに先行していて、源内くんは最後の班だったはずだ。

 とは言いつつも、《ダンジョン》と言うだけあり、通路は複雑に分岐しており、魔物が出現するのは突然であった。


「さあ、お出ましだ」


 本沢さんが盾を構え、剣を抜く。

 出てきた魔物は人がたの狼だった。その目には理性があるようには見えなかった。

 それが、3体、洞窟の奥から出てきた。


「ローワーウルフか。では、最初は俺の戦い方を見ているがいい。行くぞ!」


 本沢さんはそう声をあげると、ローワーウルフに突撃する。


「行くぞ、【デコイ】!」


 本沢さんが使ったのは《騎士》に付属する【技能】と呼ばれるものだったはずだ。

 《スキル》には当然ながら様々な【技能】が内包されており、それを総称して《スキル》の名称が決まると言った感じか。

 俺の《時空操作》に関しても、それにまつわるスキル群のパッケージだと思ってもらえればいい。

 【デコイ】は《騎士》の代表的なアクティブスキル、と言うやつだろう。自分にヘイトを集めてターゲットを自分に固定する【技能】だ。要するに、狙われやすくなるようにする【技能】ということだ。

 ゲームをやっていない人に説明するならば、アクティブスキルは自分で使用することを宣言して使うスキルのこと、対するパッシブスキルは能力値の底上げなどの、使うことを宣言していなくても使用できる【技能】のことを指すと思ってもらえればいい。


 ローワーウルフは本沢さんに対して敵意を向けたのがわかる。

 狼のように唸り、手にした棍棒を握りしめ、本沢さんに向かって攻撃を始めたのだ。


「ははっ、来やがったな!」


 本沢さんはタワーシールドで最初のローワーウルフの棍棒を丁寧に受け止めると、そのまま片腕の剣で切り捨てる。

 そのまま、流れるような動作でローワーウルフの3体を鎮圧してしまう。

 全ての攻撃が盾をうまく使い、一歩も動かずに切り伏せてしまったのだ。


「どうだ? 前衛ってのは極めればすごい職なのだ」


 ドヤ顔の本沢さんではあるが、これならば確かにドヤ顔しても遜色ないだろう。


「こうしたダンジョンの魔物の体内には魔石と呼ばれる器官があるから、これを回収するのも【探索者】の仕事の一つだ。魔物によって位置が違うから、覚えておくといい」


 そう言って、本沢さんは懐から解体用のナイフを取り出しで、魔石をローワーウルフの死体から取り出していた。


「はえー……流石ベテランっすね……」

「まあ、君たちがどこかの組織……もちろん私としては猛虎会だと嬉しいのだがね。所属したらそう言う役割もこなしていくことになるさ」


 本沢さんはささっと魔石を解体すると、俺たちに手渡してくれた。

 魔石は紫色に怪しく輝いている。


「紫は最も等級の低い魔石だな。《鍛冶屋》の連中によると、この魔石を使って武器を作るとより良い武器が作れるそうだ」


 しかし、この魔石は血生臭い。まあ、死体から取り出したのだから、仕方がないだろうが……。


「それじゃあ、次はお前達の《スキル》の確認をしようか。お前達は俺が守るから、安心して【技能】を使ってみるといい」


 流石に、本沢さんの実力を見た後だと誰もが安心感を覚える。

 正直、本沢さんが三級だと言うのが信じられない。

 実力だったら間違いなく四級に指定された俺なんかよりも高いからだ。


 だが、俺が四級で白鷺さんが三級に認定されるのは、ある種当然だったのだなと思うのは自分たちのスキルを確認してからであった。


「じゃあ、最初は二級の森くんかな? とは言っても、【成長系】スキルの場合はほとんどがパッシブスキルのみだからな。何度か同じ武器を使ってみると良い。と言うわけで、神之田さんに一番バッターをお願いしよう」

「は、はぁ。と言っても、《縮地》って前衛向きの《スキル》だと思うんですけれど……」


 神之田さんはそう言いつつ、拳銃の安全装置を解除した。


 それから、級の低い順に《スキル》の披露を魔物相手にしていくことになった。

 神之田さんの《縮地》は文字通り瞬間移動を行う《スキル》だったようだ。

 柴咲さんの《神業》は二級のスキルだったのだけれども、言っていた通りすべての行動が最も効果的になるように自然に動作が補正されているように見えた。

 室園さんの《妄想具現化》は、室園さんの妄想が具現化される文字通りの能力であった。

 そして、室園さんは結局武器を具現化して前衛に突撃してしまったのは笑うところか。

 そして、俺の番になったのだった。


「さあ、次は四級の如月くんだ! 《時空操作》だったかな? 《ダンジョン》内ならばすきにはなってみると言い」

「え、まあ、仕方がないか」


 そもそも、それが目的で今回は《ダンジョン》に潜っているわけだしな。

 ただ、正直言って俺の《スキル》は本当に他の4人に比べて比べ物にならない《スキル》だ。


「わかりました。それじゃあ使いますね」


 俺は向かってくるローワーウルフの方向に手を向ける。


「【デジョン】!」


 すると、ローワーウルフの体を切り取るように空間がゆがみ、ぶつんと消えてしまう。

 どさっと言う音がして、残った首や手足が地面に落ちる。

 これで、一番手加減した【技能】だったはずだった。


「……グロっ!」


 俺は思わずつぶやいてしまった。

 やったことは簡単だ。体だけを他に場所に転移させたのだ。

 どこに? それは俺にもわからないけれどね。


「ふむ、なるほどね。簡単に言うならば《時空魔法》を使えるようになる《スキル》ってことかな? なかなかにすさまじい《スキル》じゃないか!」


 技名なんかは実際自分で意味のある言葉を指定することができるのだけれども、最小で即死魔法かぁ、なんて若干《時空操作》スキルにドン引きしつつ、これ以上の《スキル》があることに俺は不安しか感じていなかった。

 そして、俺の不安は的中することになるのだった。

閲覧ありがとうございます!


次回、如月が自分の《スキル》を封印するきっかけになる話です!

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