《所属組織》を相談する
「あ、孝明さん、よかったら帰りの喫茶店で少しお話ししませんか?」
俺は白鷺さんにそう誘われて、近場の喫茶店に入る。
まだ17時ぐらいなので、18時までに切り上げればいいだろう。
「それで、孝明さんはどうしようと思っているんですか?」
「ああ、探索者としてってこと?」
「はい、現状私の《スキル》は自分で選んだ選択よりも孝明さんについて行く選択をした方がいい結果になると予知しているので聞いてみようと思いまして」
「……なんか便利だね」
自分の選択の先の未来を見ることができるというのはかなり便利なスキルに違いなかった。
まあ、そもそも女子高生が自分の判断で選択したとしていい結果を得られるのかというとそうとは限らないのは間違いない。
だからこそ、保護者が存在するわけだしね。
俺も親父の言うことを聞いてればな、なんて思うこともあるのは確かだ。
俺の場合は《スキル》を使って並行世界を観測したところであんまり意味がない。
別次元の同じ時間の俺を観測したところでなんの意味があるのだろうか?
いや、学術的には平行世界が存在すると言うのは極めて興味深いんだけれどね。
並行世界の概念を引っ張ってこの世界に持ってくることはできるらしいけれども、《ダンジョン》を……正確に言うならばこの世界に既に存在する概念をなかったことにする事はできない制限があるみたいだし、そもそも俺が生まれていない平行世界は観測できなかったりする。
それに、《スキル》の使い方はインストールされた関係で知識はあったとしても、どう使うかについては経験不足なので使い方が意味不明だったりと言う感じで全てを把握しているわけでもない。
正直、俺の与えられた《スキル》はあまり多用すべきものではないと思うし、この《スキル》自体が地球破壊爆弾であることは揺るぎないのだ。
だから正直、あんまり使いたくない。
「うーん、とりあえず決めないといけないからなぁ……」
バラバラと資料を取り出す。
国内で活動しているダンジョン攻略団体の資料だった。
最大手で最強と言われる【探索者】である南賀 洸太郎氏を擁する、株式会社ダンジョンストライカーズ。
確実に《ダンジョン》を攻略していき、依頼があれば田舎にも部隊を派遣して《ダンジョン》を攻略する堅実な【探索者】組織、株式会社聖騎士団。
《ダンジョン》の発見を活動の中心とする組織、公益社団法人危険を発見し隊。
他にも色々な組織が存在している。
「個人でも活動はできるんだったよな……」
「あ、孝明さん、個人で活動するって言う選択肢は無いみたいですよ。孝明さんは必ずどこかの団体に所属するそうです。どこを選んでも私の未来はあんまり変化がないので、孝明さんの自由に選んで大丈夫です」
「あれ、白鷺さんが決めちゃえば良いんじゃないかな……?」
「私が見れるのは私の選択の先だけですよ。孝明さんがどの選択をしても私はついていきますけれど、孝明さんの選択の結果は私には見れませんし……」
「ああ、つまり、俺の選択は白鷺さんには影響がないと言うことね」
「そうなりますね。ただ、ソロで活動した未来は存在しないみたいでした」
つまり、ソロで活動したとしても必ずどこかの組織に勧誘されて、そこで活動することになると言う事だろう。
それはそれで面倒くさい話である。
「なるほどね。白鷺さんの《未来予知》は結構制限があるんだなぁ……」
一緒にいる以上は俺の選択が多少影響が出るのだろうけれども、白鷺さんの選択ではないので予知できないと言う可能性もある。
どちらにしても、こういうのはこっちが主導権を握って選んだ方がいいに決まっているので、この目の前に広がるパンフレットから選んだ方が良いだろう。
とは言っても、こう言うのは就活と全く同じで情報を集める必要がある。
……ん? あれ、これって就活じゃん。
まあ、理系の職業につきたかったわけで、別に【探索者】みたいな肉体労働につきたかったわけではない。
筋トレは好きだけれども、それはスポーツや武術で使うためであり、仕事だったらエンジニアが良かった。
いや、正確に言おう。明確に命がけの仕事である【探索者】をやりたくなかった。今更どうにもならないが。
ともあれ、《ダンジョン》攻略は俺にとっては必須の課題になってしまったので、たとえ嫌でもやるしかないだろう。
初級だったら予備役扱いで、免許は持っていても必須ではなかったんだがなぁ……。
いや、もちろん法的根拠は無い。免許だからね。
だけれども、四級の奴が予備役のように振る舞っていれば当然ながら炎上する。
数日中にでも俺の名前は協会のホームページに記載されるからだ。
つまり、他の会社に就職しようとしても断られてしまうし、就職先が【探索者】の組織に限定されてしまうと言うわけだ。
俺は諦めて、スマホを取り出してそれぞれの団体の検索を行う。
検索するのはもちろん、その会社のホームページと就職サイトの評価だ。
「孝明さん何を見ているんですか?」
「ん? リクナビ。就活で使うから登録してたからね」
「へぇ……それで調べるんですねー」
「あれ、白鷺さんってこう言うサイト使ったことないの? 一応独り立ちしたいんだったよね?」
「……実はそこまで考えてなかったです」
聡明そうなのにそれは意外だった。
「私はとにかく独り立ちしたかった、それだけ考えて試験を受けたんです」
「そうなんだ。試験って費用かかるんじゃなかったっけ?」
「それは、お小遣いを貯めて、なんとかしました」
なんだか白鷺さんにはややこしい事情がありそうな気がした。
「それって、親から同意ってもらえるの?」
「それは大丈夫だと思います。……親は私に興味ありませんから」
あ、これは絶対問題抱えている奴だった。
今日出会ったばかりの俺に解決できるような話では無いと思うので、あまり深く触れないようにしようと思った。
「そうなんだ、大変だね」
「はい」
とりあえず、さらっと流す。
白鷺さんもあまり触れて欲しくは無いのか、それ以上は言及しなかった。
「それだったら、白鷺さんが俺と一緒にいるなら、一緒に決めようか」
「はい!」
と言うことで、俺たちは1時間ほど資料やリクナビの評価なんかを参考にしながら3つほど候補を決めるのだった。
初投稿です(暗黒微笑)
閲覧ありがとうございます!
なかなか話が進みませんが、申し訳ないです!
基本的には【探索者】は会社である事が多いです。基本的にチームを組んで《ダンジョン》を攻略しますからね。
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