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《スキル》習得

 試験が終わり体力検査を終えた後、俺たちは試験結果を待つことになった。

 それから数日後、合格者には協会が指定したダンジョン入り口まで集まるように指示の書かれた封筒が届いた。

 俺は合格していたので、ありがたく新宿のダンジョンに向かう。

 新宿の《ダンジョン》は新宿駅のことではない。

 四谷三丁目駅と信濃町駅の中間にある路地裏に入口が存在する。

 周辺は【日本ダンジョン攻略協会】のスタッフが監視しており、近隣は宿ができていたり武器の販売をしていたりするのだ。

 ここでダンジョンの外に出てくる魔物を狩ったりしているらしい。


「おーい、如月!」

「お、佐々木くん。受かったんだな」

「ああ、お前も受かったんだな!」


 《ダンジョン》前には合格者と思わしき人たちと、協会所属の攻略者と思わしき、武器や防具を装備した人たちが待機していた。


「お前はもう受付を済ませたのか?」

「ああ、すでに済ませたよ。むしろ佐々木くんの方が俺より遅く到着してただろうに」

「ん? そうなのか? 気づいたなら声をかけてくれればよかったのにな!」

「いや、速攻で人に紛れて見失ったから……」

「そうか、ならしゃーないな!」


 俺たちは話しながら時間まで待機する。

 時間になるとスーツ姿の協会の人が声を張り上げる。


「はーい、皆さん集まったようですねー! 何人か来られていないみたいですが、時間が来ましたので始めます!」


 女性の声が響き渡る。

 筆記試験合格者たちが俺たちも含めて声の主の方を向いて、静かにする。


「これから皆さんにはこちらの初級《ダンジョン》に入っていただきます! そこで、《スキル》を習得すると思いますので、そのまま《ダンジョン》から出てください! 取得した《スキル》を鑑定して、教会から免許が発行されます!」


 実技試験はないのか? と疑問に思ったが、そう言えば以前ネットで調べた時も、筆記試験さえ受かればいいという情報があったことを思い出していた。

 実際、ほとんどの参加者は《スキル》目的であり、実際に《ダンジョン》攻略を職にする人はこの中でも1割いればいい方だろう。

 免許所有者は【ダンジョン災害】の時……《ダンジョン》から強力な魔物が現実世界(こっち側)に出てきた際に対処する予備役扱いだけれども、ほとんどは自衛隊が戦ってくれるはずなので、俺たちにはそこまで関係ないと考えてもいいだろう。


「鑑定は教会所属の《鑑定士》スキル持ちがいますので、こちらで鑑定させていただきます! では、番号を呼びますので呼ばれた番号の方は順番にこちらに並んでください!」


 それから、受付で配られた番号が呼ばれる。

 呼ばれた人たちは協会の【探索者】の人たちに護衛されながら、《ダンジョン》に侵入してからすぐに出てくる。

 《ダンジョン》から出てきた人たちは何か、とても晴れやかな顔をしていたり、悔しそうな顔をしていたりと色々な表情をしていたのがわかる。

 まあ、欲しい《スキル》だったのかどうかは顔を見ればわかるよなぁ。


「BA3427番さん、BA3427番さん! こちらへどうぞー」


 俺の番号が呼ばれた。


「お、呼ばれた」

「いてらー。どんなスキルだったか後で教えてよな」

了解(りょうかーい)


 俺が呼ばれた場所に行くと、女性のスタッフさんが確認してくる。


「BA3427番、如月孝明さんですね。こちらへどうぞ」

「あ、はい」


 俺は他の合格者と一緒に並ぶ。

 その中に、高校生ぐらいの女の子が居て少し不思議に思った。

 亜麻色の髪は染めているのだろうか? 染めているならばかなり綺麗に染まっている。

 髪色と同じ色の瞳に、整った容姿をしている。はっきり言えばアイドルにてもおかしくないくらいの美少女だった。

 ともあれ、気になっただけで女子高生が不思議ではないだろう。

 なぜならば、資格は満18歳以上であれば免許を取得できるのだ。

 これは近年の法改正で取得年齢が引き下げられた事による。理由は年齢が低いほど取得する《スキル》が良いものになりやすいと言う統計が海外のダンジョン研究者が統計学上でそうであると発表したためである。

 日本では子供に危険なことをさせたくないと言うことで満18歳になるまでは受験資格がないんだけれどね。

 実際、よく見たら高校生の姿も私服であるがよく見たら居るのがわかる。


「高校生ね……」


 あの難しい試験を70点以上取れると言うことはそれなりに頭のいい学生なんだろう。

 それだったら大学生になれば良いのにななんて思ったりするが、【ダンジョン探索者】は需要があるので、仕方のないことだろう。


「では、《ダンジョン》に入りますよ。行きましょう」


 鎧を着込んだ協会の人に案内されて、俺たち10人のグループは《ダンジョン》に侵入した。

 《ダンジョン》の内部は、それなりに広い空間になっていた。コンクリートと木材を混ぜたような壁に、光がないにもかかわらず不思議と内部がはっきりと見える感じである。まるで夜目が効いているような感じだ。

 そして、魔物が出ても対処できるようにすでに内部には協会の【探索者】たちが先に入って警備をしていた。

 実際、魔物を退治している人たちもいる。

 振り返ると《ダンジョン》の入り口は非常に不自然な階段になっており、降りると同時に脳内に何かが閃いたような感覚を感じた。


「うっ……」


 一緒に入った誰かが呻く。

 俺も一瞬くらっと来たが、そこまで強烈なものは感じなかった。

 だが、一瞬なにか別の、知ってるけれども知らない光景が目に映った気がした。

 まるでデジャビュでも見ているような、そんな気分を感じていた。

 そして、俺は自分の《スキル》を理解した。


「……」


 全員が似たような感覚を感じたのか、喜んだりがっかりしたりしている。

 例の女子高生は、唖然としたような表情をしていた。


「うぉぉ! やったぜええ!!」

「ま、まじかよ……」


 そして俺は、どんな感情をして良いのかわからなかった。

 だって、俺が与えられた《スキル》は果たして使って良いものかわからないような《スキル》だったからだ。


「……ねぇ、お兄さん」

「……ん?」


 唖然としていると、例の女子高生がなぜか俺に話しかけてきた。


「お兄さんはなんか唖然としているけれど、どんな感じのスキルだったの?」

「え、いや、なんて言ったら良いかな……?」

「私はなんかやばそうなスキルでした。未来のことがわかる……みたいな?」


 その子がなにを言いたいのかわかりかねるが、おそらく俺の《スキル》はその子の《スキル》よりもやばそうな気がするものであった。

 聞いた感じだと未来予知系だと思うのだが、それよりやばそうな《スキル》って一体……。


「そ、そうなんだ。俺はどう言葉にしたら良いかわからないスキルだったよ」

「そうなんだ。……なんか、お兄さんも普通とは違う感じのスキルなんだね。ちょっと安心したかな」


 普通の《スキル》と言うのは、いわゆる職業系と呼ばれる《スキル》の事だろう。

 他にもあるらしいとは聞いたことがあるが、報道されないものは俺は知らないため、あるらしいと言うことしか知らない。

 と、ここで全員が《スキル》を獲得したらしく、それを見た鎧姿の協会の人が声を張って呼びかける。


「皆さん《スキル》が習得出来たみたいですね。それでは《ダンジョン》から出ますのでついて来てください」


 俺たちは今降りてきた階段を戻る。

 そんな状況でも女子高生が俺に話しかけてきた。


「あ、自己紹介がまだでしたね。私は白鷺 愛佳(しらさぎ あいか)っていいます。白鷺はそのままで、『あい』は愛情の愛で、『か』は佳境の佳です。この姿の通りみんな大好き女子高生です。お兄さんは?」

「俺? 俺は如月 孝明だ。東京工業大学理学院の大学3年生だよ」

「たかあきさん、ですね。漢字はどう書くんですか?」

「……如月はそのまま如実の如に月曜日の月、孝明は親孝行の孝に明日の明だよ」

「なるほど、孝明さん、ですね」


 グイグイくるな……。

 まあ、白鷺さんは結構可愛いので、若干照れてしまうが。


「孝明さんはどうして【ダンジョン探索者免許証】を取得しにきたんですか?」

「どうしてって、そりゃ就活のためだよ。来年から就活だしね」

「そうなんですね。私は早く独り立ちしたいので取りに来ました」

「そ、そうなんだ」

「はい」


 独り立ちしたい、なんてどう言うことだろうか? 

 ただ、他人の事情に深く入り込むには俺と白鷺さんは他人すぎるので深くは聞かないことにした。

 と、白鷺さんと雑談をしていると、《ダンジョン》から出るための階段を上り切り、現実世界に戻ってきていた。


「それでは鑑定を行いますので、番号を呼ばれた方はこちらに来てください。鑑定が終了次第免許証の発行を行います」


 案内を聞きながら、俺たちは次の集団が《ダンジョン》に入るのを見る。その中には佐々木くんもいて、手を振ってくれたので手を振り返す。

 で、すぐに俺たちの集団の番号が呼ばれ始めたので、鑑定というのはものすごく短時間で終わるような作業なのだろう。


「次、BA3427番さん、BA3427番さん、如月さん、3番にどうぞ」


 俺は呼ばれたので、3番に向かうことにする。


「あ、先なんですね。孝明さんがどんな《スキル》になるか楽しみにしていますね」

「俺としては職業系が良いんだけれどね……。まあ、お先に」


 俺は妙に親しげな白鷺さんに別れを告げて、3番ブースに入った。


「如月さんですね。では鑑定しますので楽にしてください」


 3番ブースは男性の鑑定士だった。

 じっと俺を見つめてくる男性の鑑定士さんは、マジマジと俺を見た後、ブワッと汗が吹き出していた。


「?!」

「こ……これは……!」

「……ど、どうしたんです?」

「……良いですか、落ち着いて聞いてください。あなたの《スキル》は非常に珍しい《スキル》になります」

「は、はあ……?」


 どうしたと言うのだろうか? 

 なにか変な《スキル》だったとか? 

 就活に役に立たなそうな《スキル》だったらやだなぁ。そんなことを考えていた。

 いやまあ、自分の《スキル》がどんなものかは分かっているけれども、就活で役立つような名前だったら良いなぁなんて言う淡い希望なんだけどさ。


「あなたの《スキル》は神仏系スキル、《時空操作》です!」

「は、はあ……。神仏系? それってどう言う……?」

「とにかく! ちょっと上に報告するので少々お待ち下さい!」


 鑑定士はそう言うと、奥に引っ込んで行った。

 一体どうしたと言うのだろうか? 正直、聞いたことない系統だったので困惑する。

 疑問に思いつつも俺は言われた通り、椅子に座ったまま鑑定士さんが戻るのを待つのだった。

初投稿です!(嘘松)


閲覧ありがとうございます!

まだまだ勢いがない感じですがもう少ししたら出てくるのでもう少々お待ちください!

もし面白いかも、期待できるかもと思ったら、★1でも良いので評価とブックマークお願いします!

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