最終話 プロポーズしたい!
「デート?」
「ああ、最近は休みといえばカデンや天殿と蛍塚歌劇団の公演ばかりだから、たまには俺と…」
「そうだった! ごめんねバルさん」
「風花が楽しければ良い」
「ありがとう」
「もちろんカデンたちも一緒だが、たまには蛍塚以外もいいだろう?」
「うん」
*******
「無事に誘えた」
翌日パリピ3人組を呼び出した。
「やりましたね!」
「プロポーズ(仮)にカデンちゃん同伴ですか…」
「いや大正解だ。何かあればカデンちゃんがフォローしてくれる」
実際には天と阿修羅も同伴だ。
*******
「晴れて良かったね!」
「これが雪像? すっごく大きいね!」
「こんなに晴れてて溶けないのか!?」
雪まつりに来た。
風花とカデンと阿修羅が大喜びだ。プロポーズ(仮)に向けて滑り出しは上々だ。
── ちょくちょくホットワインの屋台でアルコールを入れよう。
ハンニバルは今日もヘタレだった。
しかしアテにしていた通り、天とカデンがいい仕事をしている。
「風花ちゃん! ここ! 恋人たちの名物スポットだって! 2人で手を繋いで雪の迷路を攻略すると永遠が約束されるって!」
「それはいいね、あっくんとカデンちゃんはぼくと一緒だよ。じゃあお先に。出口で待ってるよ!」
天がハンニバルと風花を残してサッサと行ってしまった。
「…行くか?」
「うん」
きゅ!
風花がハンニバルと手を繋いだ。
ぎゅ。
ハンニバルが握り返した。
甘酸っぱい。客観的に見たら、とても恥ずかしいがハンニバルは大喜びだ。
行き止まりに着く度に係員がお題を用意していて、答えないと後戻りさせてくれない仕組みの巨大迷路だ。
「それでは彼に質問です!」
「彼女に恋心を抱いたのはいつ? どんな時?」
── なんだこれは? 聞いていない知らないなんだこれは
しかし答えるほかない。…なぜなら風花が期待しているから。
「神殿で…」
苦しそうな声が出た。
「どんな時?」
「紹介されて…可愛くて……驚いた。自分からは話しかけることは出来なかった…」
ますます苦しそうだ。
「彼女から話しかけたの?」
「はい。必要なことを聞きました」
「その時の彼の印象は?」
「イケメンだなあって」
「一目惚れだった?」
「いいえ」
── 風花は違うのか…
「恋を自覚したのは?」
「精霊のカデンちゃんのために一生懸命なところを見て、私もこんな風に優しくされたいなって」
「彼は? 彼女にも優しくしたいと思う?」
「当然だ!」
「もっと言葉で伝えたいと思う?」
「努力する…」
「はーい! オッケーです!後戻りして、もう一本の通路をお進みくださーい」
「おめでとうー! 彼氏さんは、もっと頑張ってねー」
そして次の分かれ道も間違った。
「行き止まりでーす!」
「彼に質問です! 彼女のどんなところが好きですか? 3つお答えください」
「可愛くて…一目惚れだった。パン屋に通って、真面目な働き者で、ご近所さんや常連さんに愛されてて…ますます惹かれた。カデンにも優しくて…完落ちした」
「わあ、すごい愛の告白! 彼女は?」
「さっきも言ったけど、カデンちゃんに優しいところ」
「はーいオッケーです! 引き返して、もう一本の通路をお進みくださーい!」
「おめでとうー! これからも仲良くねー」
この調子で出口にたどり着くまでにハンニバルは何度も風花に愛を告げることになった。
ハンニバルの精神は消耗したが風花は夢見心地だ。パリピ3人組のプロポーズ(仮)決行プランは完璧だった。
最後の行き止まりで天たちが待っていた。
「行き止まりでーす!」
「彼に最後の質問です! 彼女との将来をどのようにお考えですか?」
パリピ3人組に散々シミュレーションさせられた質問だった。
「プロポーズしたいと思っている。だが風花は成人したばかりだ。まだ若い風花を縛る事はできない。風花が23歳になったら正式にプロポーズするから、それまでは婚約予定でいて欲しい」
「彼に質問です! それまでは婚約者(仮)の恋人同士ってことかな?」
「そうだ」
「彼女が他に好きな人が出来たら?」
「そうならないように…」
「好きな人が出来たら?」
なんて意地悪な!とハンニバルが涙目だ。
「…話し合いたい」
「それでもダメだったら?」
「………風花の意思を尊重したい…諦める努力…する………」
「彼女は彼のプロポーズ予告をどう思う?」
「…嬉しい」
「風花!」
「先のことはお互いに分からないけど」
「……」
「このまま23歳を迎えられたらいいな」
「おめでとうございまーす!」
「出口へどうぞー!」
何が何やらだが風花が嬉しそうだし、プロポーズ予告を受け入れてもらえたが、ハンニバルはヘトヘトだ。
「風花ちゃん! 嬉しい!」
カデンが風花に抱きつく。
「風花ちゃんと家族になれたらいいなって思ってた」
「私もだよ。ずっと一緒にお店をやろうね」
涙目の阿修羅が尻尾を膨らませてプルプルと震えていた。
「あっくん?」
「…」
「風花ちゃんを取られる訳じゃないよ?」
「……」
「阿修羅!」
風花が阿修羅を抱き上げる。
「バルさんが家族になっても良いと思う?」
「分かんない…」
「そっかー。まだ何年かあるからね。阿修羅と私はずっと一緒だよ」
「…………うん」
じわあ…と目に涙を溢れさせた阿修羅がキュンキュン泣きながら風花に抱きついてハンニバルを睨んだ。
阿修羅に反対されたら風花は結婚を考え直すかもしれない。パリピ3人組が想定したよりもハンニバルのハッピーエンドは遠いかもしれない。
頑張れ! ハンニバル!!
最後までお読みくださり、ありがとうございました。




