第82話 カデン、ますます風花一家に溶け込む
「エステ?」
「うん。レミママが気にしてたから、どうかなって。営業には出来ないけどお家の中だけなら使えるよ。家族以外には絶対に内緒ね!」
カデンが勧めたのは美容家電だ。
顔のくすみに効くアイテムや、表情の癖や顔の凝りの原因となる筋肉の癒着をほぐすアイテムなど種類豊富にあるらしい。
いま実演しているのは筋膜をほぐしてリフトアップ、上向きフェイスになるアイテムらしい。
「このジャンルは種類が豊富だし、どんどん新しい物が出てくるんだ。人気の上位は脱毛と美顔とボディの揉み出し!」
「カデンちゃん! 詳しくお願い!」
レミの目の色が変わった。
*******
「カデン? どこにいった?」
「ごめんねバルさん、母さんがカデンちゃんを独占してるの」
「いや、居場所が分かっているならいいんだ。何かあったのか?」
「うん。少し前に母さんがパンの焼成の時に腕を火傷したでしょう? もう治ったけど他にも気になってる箇所があるって話したらカデンちゃんが美容アイテムを出してくれたの。続けないとダメらしいから毎日1時間くらいお願いしているの」
「そうか」
「うん」
「……風花?」
「なあに?」
「その…俺がカデンを甘やかし過ぎだと思うか?」
「うん」
即答だった。
「…そ、そうか……」
「悪い意味じゃないよ。いつもキリッとしてるバルさんが、カデンちゃんにだけは甘々で優しいのってキュンてする」
「そうか!」
「うん」
*******
「…という会話があった」
さっそく翌日パリピ3人組を呼び出した。
「やるじゃないですか!」
「恋人をキュンとさせたら、こっちのものですよ!」
「それで?」
「…それで? とは?」
パリピ3人組が特大のため息をついた。
「そこでデートに誘わなかったんですか?」
「抱きしめてチューは?」
「風花ちゃんを甘々に蕩けさせないと!」
ハンニバルが固まった。
「隊長には難しかったか…」
「無理言ってすみません」
「思春期ど真ん中の中学生だと思って接しないといけないって忘れてました」
*******
「それで僕たちを呼び出したの?」
パリピ3人組が呼び出したのは天とカデンだ。ハンニバルもいるが空気のまま終わるだろう。
「もう隊長は風花ちゃんにプロポーズした方がいいと思うんです」
「でも風花ちゃんはどうなのかなって」
「勝算がないと動くべきではないなって」
風花にフラれたら2度と恋なんて出来ないだろうと心配なパリピ3人組。
「風花ちゃんは、満更でもないと思うんだけど…」
「だけど?」
「風花ちゃんはまだ16歳だから」
「うん」
「この世界の女性が結婚する年齢って24歳くらいでしょう?」
「うん、1番多い年齢かな」
「いまプロポーズしたら断られそう…」
ガタン!
ハンニバルが膝をついた。
「でも何かしら約束は欲しいと思うの」
「プロポーズ(仮)ってこと?」
「うん。23歳くらいまでに気持ちが変わらなかったら結婚してって。それまでに気持ちが変わったら婚約(仮)は無条件で解消しますって」
「いいんじゃない?」
「うん」
「隊長はあと8年でも80年でも恋心に変わりなさそうだし」
ハンニバルが力強くうなずく。
「僕もその作戦に賛成。風花ちゃんを早くから縛るのは絶対に反対。結婚前に長く付き合うのはいいと思うよ」
天も賛成なら悪くない提案ということだろう。
「バル、レミママも私たちを応援してくれると思うよ! 私の加護を気に入ってくれてるから」
「うん、節度あるハンニバルの付き合い方は誠一さんも認めているからね。デートに必ずカデンちゃんを同伴してるし」
「あとは隊長次第じゃないですか!」
「良かったですね!」
「プロポーズ(仮)頑張ってくださいね!」
パリピ3人組の励ましで胃が痛い…。




