第66話 勘助の暗躍
その後も勘助は治安部隊の本拠地に籠もり暗躍した。
陛下と父と妹の記事が掲載される新聞には、記事の直ぐ下に“ふるさと納税”の広告が載るよう働きかけた。国王と父の領地のショボい産物とその他地域の豪華な返礼品を並べた、特定の意図を感じる広告だ。
その広告を見たのだろう。毎日、国王からの使者がやってくるが王都に不在と言って追い返した。
父と妹の聴取がはじまる前に、国王と父と妹が幼いころから積み重ねた黒歴史…。書き捨てた出来損ないの恥ずかしいポエムなどの直筆コピーや、過去のヤラカシを客観的に記した従業員の手記などを次々と公開した。もちろん、その横には“ふるさと納税”の広告だ。
予め用意した恥ずかしい情報を全部出し切ったところで、各メディアに掲載されたものを本人達に見せた。国内だけでなく外国のメディアで公開されたものも、すべて見せて大人しくなったところで聴取を始めた。逃亡を考えていた父と妹は恥ずかしくて表に出られないと思ったのか拘置所で大人しくしている。監視が楽になった。
“ふるさと納税”の広告を止めさせようと国王が圧力をかけたが、それが新たなスキャンダルとなり大々的に報道され、さらに“ふるさと納税”が利用された。自ら燃料を投下するとは…自分が思っていた以上に国王が愚かだったことに勘助はがっかりした。
父と妹の聴取が終わり、次の段階に進むタイミングで勘助は王宮に参内した。
「勘助! 待っていたぞ! 任務で遠くにいたようだが、この騒ぎは知っているな?」
「もちろんですよ。本日、検察が裁判所に起訴状を提出したので今後もサクサク進むでしょう。父や安の罪は明らかですから。
父たちに命じられてハンニバルの転居先を調査した従業員たちは在宅起訴で情状酌量されるでしょうね。父や安と違って」
「…なんとかならぬか?」
「なんとか? とは?」
勘助から冷気が漂い、国王の前髪が凍った。
「……」
国王が黙る。
「前回の判決に逆らう形での犯行ですから、父も安も今回は実刑を免れないでしょう。当然ですよね?」
「勘助…」
「陛下は人の心配をしている場合ではないのでは? 前回の処分で王権を行使したことや、今回の騒動を揉み消そうとしたことで訴えられていますよ? 起訴状を読まれていないのですか?」
国王が青ざめて黙り込む。
「…父と安については、懲役に変わって出家を提案するつもりです。治安部隊が管理する逃亡不可能な山奥の寺が受け入れてくれるそうです。そこで規則正しい生活をさせながら精神面の治療も受けさせます。ちゃんと治療出来れば、そのうちシャバに戻ることも可能ですよ」
勘助の提案通り、父と安は規則正しく厳しい環境での生活を余儀なくされた。
勘助の願いは通じず、2人の精神面の治療は進まなかった。




