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第65話 妹と父をざまあ

「そうか、デートは大成功だったんだね。良かったよ」


翌日、出勤したハンニバルは真っ直ぐに勘助の執務室に向かった。阿修羅は風花のボディーガードとして留守番しているので、勘助とハンニバルの2人きりだ。


「いろいろ問題はあったが現在の状況は俺にとって好ましいものだ」

「父と妹の犯罪行為については、本当に申し訳ない。まずはあの後のことについて説明させてくれ」

「ああ、聞かせてくれ」


「まず、あんはストーカー行為の容疑者として黒の塔に拘束しているから安心して欲しい。父は犯罪幇助の容疑者として赤の塔に拘束している。父の命令で犯罪幇助に関わらざるを得なかった者たちは、まとめて青の塔に拘留している」


それぞれの塔は、犯罪の容疑者や、脱獄の恐れのある悪質な組織のメンバーなどを収監するための施設で、厳重に警備されており過去の逃亡実績はゼロだ。


あんと父の監視は、王都治安部隊の中でも王族嫌いで反権力の代表として有名な第1治安部隊に任せている」


王弟の息子である勘助が王族嫌いの部隊の隊長で大丈夫なのか?という意見もあるが軍は実力主義なので問題ない。勘助自身が王族嫌いな者をを差別する事もないのでうまくいっている。


「それは…さぞかし吠えているだろうな」

「うん。ハンニバルの想像通りだよ。侍女を連れて来いだの、不当な拘束だの、罰してやるだの…あの2人には、まったく反省がない」


土曜日の言い分や暴れっぷりを思い出してげんなりするハンニバル。


「だから放置している。もちろん虐待はしてないよ、拘置所のルールに則って他の容疑者たちと同じ待遇だ。

 あの2人からまともな証言は取れないし事情聴取するだけ時間の無駄だから、今は状況証拠を固めてる。…まあ、いずれ聴取やら何やらしなければならないんだけど…虚しいよね。まともな聴取は絶望的なんだから。ザルで水をすくうようなことを絶対にやらなきゃならないなんて。

 そうそう…あの2人のもとで働いていた者たちは全員、捜査に協力的だよ。従業員たちの証言だけで充分、容疑を固められるから安心して。

 陛下にはこちらから面会を申し込んでいないよ。前回も陛下が弟可愛さに王権を行使して甘い処分になったからね。厳しく処分しなければ、さらに被害が大きくなると僕がどれだけ説明しても理解しなかった陛下に僕は怒っているんだよね。陛下から呼び出しがあっても、そう簡単に応じるつもりはない。

 とりあえず、国内の全新聞社と雑誌社と通信社と我が国に支社を置くメディアに、これまで僕が集めた、あの2人の非道な行いの数々をリークしたよ。陛下があの2人を外国に放流してほとぼりを覚ます手段を許さないためにね。ここまで明らかになったら外国も受け入れたくないだろうね」


勘助が今日の朝売りの新聞を8紙並べる。

「ほら、どれも一面や社会面で大きく取り上げている。あの2人の社会的な信用はゼロどころかマイナスだね。

 どの新聞も前回の処分の時に陛下が王権を行使して、ぬるい対応をさせたことが再犯に繋がったという論調だよ。今度こそ、きっちり落とし前をつけさせるよ」


「お、おう…」

勘助が怖かった。


勘助が一通り説明したところで執務室の扉がノックされた。


「どうぞ」

「失礼します。先ほど王宮から使者が来られて、隊長に至急参内するようにとのことでした」

勘助から冷気が迸る。


「隊長の指示通り隊長は不在、極秘任務のためいつ戻るか、どこにいるかは守秘義務があると黙秘し、少々強引にお帰りいただきました」

「ありがとう、上出来だね」


「それから、もう一つのご指示に従って、国王陛下と王弟殿下とあん容疑者が王宮や殿下の屋敷や領地で働く者達を理不尽な叱責や不当な扱いで虐待した情報をリークしました。それらが原因で退職した、過去13年間分の匿名のリストと起こったことを余さず伝えています」


「うん、第2弾のリークも効果がありそうだね。まだまだネタはあるよ。

近衛の隊長は被害者のハンニバルだし、軍のトップを動かそうにもトップはハンニバルの父のハミルカルだから陛下も拘置所に手が出ないはずだよ。このまま油断せずに罪を裁くよ」


結論から言うと勘助はブレずにやり遂げた。身内を容赦なく断罪する姿勢に市民から軍への信頼が増した。


── しかしハンニバルやハミルカルをはじめとする軍人たちは勘助には絶対に逆らってはいけないと震えていた。

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