第60話 女の子は狩人
「合コンするの?」
「勘助が人を集めるって。みんな喜んでた」
カデンと阿修羅が仲良くお話ししている。
幼女と子犬が寄り添っている様子は可愛らしい。
そんな微笑ましい光景を虚無な表情で見つめているのがハンニバルだ。
── 合コン…。一度くらいは参加してもいいかと思っていたが…一度くらいは…。
「部隊長ともなると、そういったことまで面倒見るんだねえ」
天が感心したようにつぶやく。
「軍隊って特別な組織って印象だったが、職人の親方と弟子みたいなものなんだな」
父の誠一が天のつぶやきに答える。
「ねえねえ、相手の女性ってどんな風に集めるの?」
「それは気になるわね、ハンニバルさん、どうなの?」
風花の疑問に母が乗っかる。
「それは…」
「勘助が1人で企んでいそうだった!」
いきいきと楽しそうな風花の質問だったが、自分ではない誰かとの未来を夢見る風花に喉が詰まって答えられないハンニバル。
そんなハンニバルに変わって阿修羅が答える。
「この商店街で働くお嬢さんたちも興味あるかもしれないわ」
「そうなの? 俺、勘助に聞いてみる!」
── 阿修羅のやつ! 余計なことを!
風花が参加して部下の誰かとカップルが成立する可能性を想像して涙目のハンニバルだった。
「……って母ちゃんが言ってた!」
さっそく翌日、勘助に聞きにいった阿修羅。背後のハンニバルは仏頂面だ。
「我々には守秘義務があるから恋人や家族にも仕事内容は話せないからね、それを理解してくれるのは絶対条件かな。
あと急な任務で約束を反故にする場合もあるから、それを根に持つタイプはダメ。
ああ、もちろん本人がルーズで任務以外の理由で約束を守らないのはギタギタにしてオッケーね。
恋人や家族の弱みを握って秘密を探らせようとする悪い奴もいるから、つけ込まれそうな弱い人はダメ。うちの部隊は身分の高い人たちの警護が主な役割だから特に厳しく選別するよ。本人に問題がなくても三親等以内に犯罪者や犯罪まで行かなくても世間に非難されるような身内がいたらダメ。身辺調査はしっかりやるよ」
「けっこう厳しいんだな!」
「まあね、残念だけど恋人や配偶者が原因で守秘義務を守れなくて辞職する部下が一定数いるんだ。こちらが用意した合コンが原因でそんな悲劇は起こって欲しくない。だから初めから身元や気持ちの確かな人を選ぶよ」
「普通は隊員の結婚相手の身元って調べないの?」
「そりゃそうだよ。本人同士が好きあって結婚するのに、そんなこと言って反対したら人権侵害だよ」
「そっかー!」
「出会いを求めるお嬢さんは大歓迎だよ、でも身辺調査はする。それで良ければ応募してほしいな」
「……って勘助が言ってた!」
「厳しいのねえ」
「ハンニバルさんたちには普通に接して貰っているけど、そりゃあ近衛部隊だもの。厳しいよなあ」
阿修羅の報告にしゅんとなる風花の両親にカデンが答える。
「そんなの普通だよ! 女の子たちだって、参加した合コンで、年収とか顔とか社会的地位とかで判断して狙いを定めてターゲットを落としにいくんだもん! 人柄なんてお互いに見ていないもん。男の人だけじゃないよ、女の子だってシビアな狩人なんだよ! 合コン会場は戦場なんだから! 同性にこそ油断しちゃダメだよ」
「殺伐としてるのね」
「うん! それにメイクも盛り盛りだよ! スッピン風厚化粧とか整形メイクってジャンルもあるから、見る目がないと素顔が別人の場合もあるよ! 見破る自信がないけどメイク詐欺にあいたくないならメイク禁止のプールやサウナで合コンするといいよ!」
もう少し夢を見させてくれと願うハンニバルだった。




