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第58話 ハンニバルの妄想とカデンの裏切り

── 風花…結婚相手は軍人が良いと言っていたな…これはもう付き合ったも同然ではないだろうか…。


正しくは“軍人が良い”ではなく、“軍人でもオッケー”だ。


── 俺の稼ぎは悪くないから風花には専業主婦になってもらっても経済的に問題はない。しかしそれは風花が望まないだろう。それに俺は風花の仕事にも理解があるからな。

…もしも俺から専業主婦を匂わせたらカデンが怒るな…風花はカデンのただ1人のビジネス・パートナーだからな。


付き合うどころか思いを伝えてもいないのに結婚後の妄想を膨らませるハンニバル。

自分の世界に浸っている間に家に着いた。


「おかえりなさい、阿修羅、バルさん」

「ただいま!」

阿修羅が元気良く風花に抱きつく。

「今日もポイントはマイナスにならなかった?」

「大丈夫!」

「良かったねー」

風花が阿修羅を撫でくりまわす。


── 子供は女の子が希望だが息子も悪くないな…。


風花と阿修羅を見て、さらに妄想を発展させるハンニバルが痛々しい。



「今日のパスタはカデンちゃんのお道具で僕が作りました。電動パスタマシンだっけ?」

「そう! てんパパの生パスタ! もちもちに出来たよ。パスタマシンはパスタ以外にうどんやらーめん、お蕎麦とか餃子の皮も作れるよ!」


今日は贅沢にポロネーゼとタラコうにイカの2種盛りだ。


「美味しいな!」

「モチモチね!」」

風花の両親にも好評だ。


「パスタも美味いけど肉も美味いよパパ」

「それはよかった、あっくんはお野菜も食べるんだよ」

「うん!」

阿修羅がダンジョンから持ち帰った肉を炭火で焼いたものが阿修羅とハンニバルには嬉しいようだが、ここに具沢山の味噌汁と切り干し大根の煮物、ほうれん草とニンジンとシメジの白和えを副菜に持ってくるセンスが日本の主婦っぽい。


「カデンは今日はどうだった?」

「今日は晴れてたからお客さんがたくさん来てくれたよ!」

「そうか、良かったな」

「うん! 雨の日はお客さんが少なくて遠慮なく風花ちゃんと長く話せるからお昼を外してくる男の子が多いんだけど晴れの日は普通! みんな弁えてて偉いね!」

「や、やだなあカデンちゃん!」

満更でもない風花。


── な…んだと!?

…後でじっくりカデンに聞かねば。軍隊で培った尋問のテクニックを駆使する時がきたな!


「通ってるのはソーセージ職人のフリッツと、土魔法使いの銀平ギンペイと、鍛冶屋見習いの雁鉄ガンテツだったか?」

父の誠一が口を挟む。

「うん!」

「みんな子供の頃から知ってるが真面目な子たちだな…しかし焦って決めちゃダメだぞ! その3人以外にも相性の良い相手がいるかも知れないし…いや……どこの誰とも知れない奴らよりは……しかし…」

理解ある父親ぶりたいが、徐々に雲行きが怪しくなってきた。


「やだなあ! つ、付き合ってみても良いかなって思う相手は今のところいないけど…出来るだけ多くの人と出会ってみないと分からないし! それに私は成人したばかりだし、急いでいないよ!」

頬を赤く染めた風花が恥ずかしそうに話す。まだ有力な彼氏候補はいないようだ。


「風花ちゃんは出会いが欲しいの?」

「カデンちゃん?」


── カデン!?何を言い出す?

青ざめて聞いていたハンニバルがギョッとしてカデンを見る。


「うふふ。私の知識を頼ってよー! そういう時はね! ご⭐︎う⭐︎コ⭐︎ン! 合コンだよ!」

「ごうコン?」


「合コンていうのはね!男女3対3とか5対5くらいの人数で行う飲み会のことね。自己紹介から始まって、手拍子やコールで盛り上げての一気飲みとか、ポッキーゲームでイチャイチャとか第一印象ゲームとか王様ゲームで男女の距離を近づけるの! 合コンがきっかけで出会った2人が結婚することになった時、人前では合コンで出会いましたって言いにくいから意見交換会とか食事会とか言い換える人もいるけどバレバレなの!」


── カデンの突然の裏切りに声もないハンニバル。


「合コンでモテる男の子は盛り上げ上手な子だよ!」


── 俺の苦手な分野だぞ!!


「じゃ、じゃあモテる女の子は? どんな女の子?」

気になって仕方がない様子の風花。


── やめてくれカデン!風花に、そんなテクニックを身につけて欲しくないぞ!


「モテる女の子は、あざとい子やズルイ子だけど、ちゃんとした相手を見つけたいなら、そういう子の真似しちゃダメ! いつも通りの風花ちゃんが良いよ!」

「そ、そう。うん、そうだね」


── カデンのやつ…なんて思わせぶりな!


一気にやつれ、老け込んだハンニバルだった。

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