第49話 ライバルから仲間へ
「阿修羅、お腹出してゴロン」
ゴロン。
言いなりに腹を晒す阿修羅を優しくブラッシングする。
「風花はブラッシンッグが上手だなあー」
手元で阿修羅が溶けていた。
「はいはい。前足伸ばしてー」
ピーン!
小さなブラシに持ち替えて胸の毛を梳く。
「わふう………」
すやあ。
ブラッシングされながら気持ちよさそうに眠ってしまった。
「阿修羅ちゃん、可愛いね!」
「うんうん、聞き分けも良くて良い子だよねえ」
「……。」
カデンと誠一がメロメロだがハンニバルは無言だ。
「あらあら、阿修羅ちゃんたらお眠?」
お茶と蜜柑を持ったレミが部屋に入ってきた。
「そうなの! ブラッシングが気持ち良かったみたい、可愛いよね!」
「ブラッシングじゃなくて、この炬燵が気持ち良いんじゃない?」
「いやいやホットカーペットが気持ち良いんじゃないか?」
カデンの返事に風花と誠一が異議を唱える。
「そ、そうかな。えへへ」
カデンが嬉しそうだ。
風花一家の家で過ごすことの多いカデンが、ホットカーペットと炬燵を出すと、食後は皆んなで炬燵を囲むようになった。
ハンニバルなりにカデンを大切にしてきたが、このような家族の団欒には縁がなかったカデンがとても幸せそうでハンニバルの胸がチクリと痛んだ。
風花一家と初めて炬燵を囲んだ時、カデンが自分の隣をバシバシ叩いて『バル! バルはここ! ここに座って!』と、はしゃいでいた。隣に座ると密着して寄りかかってきたので、どうしたのかとカデンを見ると幸せそうにハンニバルを見上げていた。
あんなに些細な事であれほど喜ぶのなら、何度でも使えばよかった。戦いに関係ない加護だからと、詳しく知ろうとしなかった自分をいくら責めても、どれだけ後悔しても過ぎた過去を取り戻すことは出来ない。
「この蜜柑美味しいね!」
「うん、これは当たりだな!」
カデンと誠一とフェルムとベイクがモリモリと蜜柑を食べている。
「大介さんが箱ごとくれたの。まだまだたくさんあるから悪くなる前に食べましょうね」
「大介さん?」
シチューパンを買ってくれて宣伝までしてくれたカデンのライバルだ。
「ホットドックでお店の立て直しが出来そうだって喜んでいたわ。これはそのお礼ですって」
「そういえば大介さんの実家は蜜柑農家だったか。お店が上手くいかないって悩んでいたけど、これからも一緒にやっていけそうで良かったよ」
「カデンちゃんのおかげね」
誠一とレミが優しくカデンを眺める。
独占販売にこだわったカデンは少し居心地が悪そうだ。
「…シチューパン、宣伝してくれたね」
「本人達は宣伝のつもり無かったみたいだけど結果オーライだって笑ってたわねえ。」
「商店街の仲間同士、助け合っていかないとな!」
「…うん」
この日を境にライバルたちにギリギリとしていたカデンの意識が変わった。




