第48話 お試し販売 2
――― 無事に、そして呆気なくリフォームは終わった。
リフォームを機に、商店街のお店からユニフォームやタオルの洗濯と乾燥を引き受けることになった。引き受けるのは洗濯と乾燥のみで自動で落ちない汚れには対応しない。ユニフォーム類とタオル類は別々に洗うので別契約。お試し洗いを経て合意し、縮みなどに関して同意書を作成した店舗のみだ。
両親のパン屋も近隣のレストランへの卸が利益の半分を占める。風花も自立へ大きく踏み出したと言えるだろう。
「洗濯機と乾燥機のスペース、結構広く取ったのね」
「うん、必要になりそうだったから!もっと増やせるよ」
専用のスペースに洗濯機と乾燥機が6セットぎっしり置かれている。1日5回転出来れば30件分、引き受けることができるが、あくまで副業なので引き受けるのは平日のみで1日20件までだ。勿論、1件あたり引き受ける量は上限ありだ。
「ありがとう、でも洗濯はもう充分かな」
「シチューパン売れるかなあ」
「売れるといいねえ」
カデン発案のシチューパンも今日から発売だ。シチューを入れるパンは両親が焼いてくれたし、シチューはカデンの鍋でほったらかし調理済だ。
ランチタイムの需要を見込んでいるので、そろそろ売れてほしいが、まだ誰にも知られていない。どうやって売っていったらいいか悩ましい。
チリンコロン。
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませー!」
「やあ!」
「来ちゃったよ、風花ちゃん。カデンちゃん」
「ビルさん! 大介さん!」
ビルさんと大介さんはホットドックブームに乗っかって大きく利益を伸ばしているカデンのライバルだ。
ホットドックのパンを卸しているのは両親なので風花にしてみればライバルでも何でも無いのだがカデンにとってはライバルらしい。
「今日からだろう?」
「僕たち、最初のお客さんになりたくてね」
「ありがとうございます、今日はビーフシチューになります。お1つずつでよろしいですか?」
「うん、2人とも大きいほうね!」
シチューパンは女性や子供向けのハーフサイズも用意したが、2人は大きなサイズを注文した。
風花がホットショーケースから暖かいパンを2つ取り出し、肉塊専用の鍋からトングで大きな肉をゴロリと入れ、シチュー鍋からシチューを注ぐ。カデンがくり抜かれたパンの中身と蓋をバーナーで炙り、木製スプーンや紙ナプキンを用意する。
「すごいな! これだけでお腹いっぱいになるよ」
「肉が大きいね。でも見た感じすごく柔らかそう!」
「ふふふ、柔らかいですよ。このスプーンで食べられますから」
「中のパンもカリカリにしたから美味しいよ!」
「ありがとうカデンちゃん」
ビルさんと大介さんが容器を片手に帰ってゆく。
「気に入ってくれるといいね」
「また真似されちゃうかもね!」
「そしたらまたパンは父さんと母さんに注文してくれるから我が家は嬉しいよ。」
「そうなんだけど〜」
釈然としないカデンだった。
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「そうか、忙しかったのか」
「うん! 2人が商店街のベンチで食べてたら質問責めだったんだって!」
夕食の席でカデンが大興奮だ。ハンニバルの質問に大喜びで答えている。
熱いうちに食べたいビルさんと大介さんは商店街のベンチで食べることにした。
「期待以上じゃないか?」
「ああ、ずっしり重いから食べ応えあるぜ」
「む! なんだ! この肉は? デカすぎるぞ!」
「おい!」
「……ああ、こんな木のスプーンで、このでっかい肉が食えるのかと半信半疑だったが…」
「ホロホロだぜ…」
「塊肉だけじゃないぞ、シチューにも肉が入ってる」
「シチューに肉と野菜が溶け込んでいて複雑な味になってるな、うん! 美味い」
「……?」
「なんだ?」
精霊にも食べさせていると、いつのまにか囲まれていた。
誠一とレミのパン屋で娘の風花が販売しているシチューパンだと教えたら真っ直ぐにパン屋に向かって行った。
「うちの部隊の者たちも、そのうち買いに来るぞ。今日の昼に阿修羅が食べているのを見て何やら相談していたからな」
「ありがとう、阿修羅ちゃん! バル!」
「美味かったんだぜ!」
「阿修羅、いい子〜」
風花が阿修羅を撫でまくる。
その様子を見たハンニバルの眉毛が動揺した。ハンニバルの妄想フィルターを通すと、神殿に納められたイケメン神の像と風花がイチャコラしているように見えるらしい。
――― 阿修羅のやつ…馴れ馴れしいぞ!
(契約者同士なので普通です。)




