第46話 店舗をリフォーム
――― さっそく翌日からハンニバル宅のリフォーム計画が始まった。
元々店舗だったので大掛かりな改装は必要が無い。今後の予定に合わせて仕切りや収納を増やして、業務用家電製品を配置しやすくするのだ。それが終わったらパン屋に雰囲気を合わせるように調整して、1つの店舗として統一感を出し、最後に壁をぶち抜く。
リフォームも壁をぶち抜くのも専門の土木精霊に任せればあっという間に出来る。
「ここに洗濯機と乾燥機ね!乾燥したものを置ける場所も欲しいな!」
1番時間がかるのは配置を決めることだった。実際に使いたい業務用家電製品をカデンが置いて、高さや幅などをハンニバルが図面に書き込んでいるようだ。
配置が決まったら土木精霊を呼んで一気に完成させるらしい。
「今はやっていないけど揚げ物をたくさんしても大丈夫なように換気扇も付けたいな!」
洗濯機だの換気扇だの、何が何やら訳の分からないハンニバルはカデンにお任せだ。
カデンが改装計画に夢中になっている間、パン屋は風花一家で切り盛りしている。
チリンコロン。
「いらっしゃいませー!」
「こんにちは、あら?今日はカデンちゃんはいないの?」
1番最初にソフトクリームを買ってくれたパン屋の常連のプリヤンカさんだった。
「実は…」
「まあまあまあ、それはカデンちゃんが大喜びね!」
「そうなんです、とても嬉しそうで」
「どんな商品を売り出すのかしら?」
「それが私も分からないんです。場所を確保出来たら出来ることが増えるって聞いてはいるんですが…」
「あら、1つや2つじゃないということね?」
「そうみたいです。」
プリヤンカさんは、いつものバケットとクロワッサンを買って『楽しみにしているわ』と言って帰っていった。
リフォームの配置決めが終わり、その日の夕食はカデンの加護を利用して風花が用意することになった。
「電気圧力鍋?」
「そう! ここに材料を入れてね」
角切りにした牛肉、カットした玉ねぎ、みじん切りのセロリ、乱切りのにんじん、綺麗にしたマッシュルームを豪快にぶち込んでオイルを少々。
「このボタンで炒め調理!6分ね」
「はいはい」
「6分後まで何もすることないよ!」
「そうなの? じゃあサラダの準備でもしようか」
野菜を洗ってカットしていると6分経った。
「風花ちゃん! 次!」
「はいはい」
「赤ワインとトマト缶を入れてね! 蓋を閉めて!このボタンで加圧、15〜20分くらい」
ポチポチ、ピッ。
「加圧が終わっても、すぐに蓋を開けちゃダメだよ! このピンが下がるまで待ってね」
「それまではすることないの?」
「無いよ!」
サラダを作り終わっても時間が余った。
「……。」
「放っておいて大丈夫だから洗濯物を畳もうよ!」
調理中…しかも煮込み中に目を離して別の部屋に行ってしまうなんて!
これは風化には衝撃だった。
洗濯物を畳んで戻っても、まだ時間が余ったのでカプレーゼを作って、さらにキノコのバルサミコ炒めも作った。
「風花ちゃんそろそろ良いみたい!デミグラスソースを入れて塩・こしょうで味付けして煮込みボタンね! 10分から15分くらい」
ポチポチ、ピッ。
「これで完成するよ! 煮込みボタンの時はピンが下がるの気にしないで大丈夫!」
出来上がったビーフシチューは放置して短時間で作ったとは思えない出来だった。器によそって刻みパセリとクリームを散らせばレストランのような出来栄えだ。
「うんまーい! 肉がホロホロ」
阿修羅が大喜びだ。フェルムとベイクもがっついている。
「うん、美味しいね。風花もやるなあ」
「いやあ、私なんにもしていないんだよねえ」
「カデンちゃんが作ったの?」
「カデンちゃんというか…カデンちゃんの加護が自動で調理?」
誠一とレミが目を丸くしている。
「材料を入れてボタンを押したら、あとは別の部屋で別なことしてても大丈夫なの!」
カデンが胸をそらす。
「調理中に目を離してはダメじゃ無いか!」
「火を使わないから大丈夫!」
「火を使わずに煮込めるのかい?」
「うん!」
一瞬慌てた誠一とレミが再び目を丸くしている。
「風花、これはすごいことだよ」
「うん私も驚いた」
翌日、調理している様子を見たいという両親のリクエストで、2人の前でクラムチャウダーを作って見せた。
「本当に火を使っていないんだな…」
「焦げ付きや火加減を気にしないで放置しておけば出来上がるだなんて…」
誠一とレミが呆然と鍋を見つめる。
「ねえ、これを使えば煮込み料理を作るの負担じゃない?」
「勿論だよ!」
「毎日でも?」
「うん」
「こんな商品、どうかなあ?」
カデンが頭の上に鍋付属のレシピ本を掲げてみせる。
カデンが広げたページには、丸いカンパーニュのようなパンをくり抜いてビーフシチューやクラムチャウダーを詰めたシチューパンの写真が掲載されていた。




