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第45話 もっとカデンを甘やかすハンニバル

――― さらりと、とんでもない提案だった。


「えっと……」

風花と両親が言葉を失っている。

「お隣のハンニバルさんのお住いの1階を店舗に利用するということですか?」

誠一がなんとか返事を返す。


「はい。今後またいろいろと新しい商品を試していくとカデンから聞きました。これまではご厚意に甘えてお店の一部を使用させていただいて参りましたが、もっとスペースが必要なはずです」

確かにスペースは足りていなかった。


「こちらはカデンと二人暮らしで家具や荷物も少なく、3階建の建物の半分以上を持て余しております。1階を倉庫や商品の準備、接客に使えるようになれば、今後の可能性も広がるかと。それにもともと店舗だった物件ですし改装というほどでもありません」

ハンニバルが好条件でお隣の建物を買い取ったテルマさんはご主人と雑貨屋を営んでおり、テルマさんとご主人と子供3人の5人暮らしで、もともと風花一家のパン屋よりも広い物件だ。


「テルマさん、お店を閉めた後も綺麗になさっていたものね」

レミがテルマさんを思い出す。


「ご提案のキモはここからです。改装して使ってもらうにしても2軒に分かれたままでは不便でしょう」

風花が肯く。


「もしも許可を頂けたら、1階同士を店舗部分だけ繋げて広く1つの店舗として利用出来るように改装させていただきたいのです。もちろん改装にかかる、すべての費用はこちらで負担します。

 それに加護の交換自体が立ち消えになった場合やその他の事情で原状回復の必要が発生した時には、こちらが費用を全額持って戻します」


すべてを契約書にまとめて差し出してきた。


「……どうかな?」

不安顔のカデンが風花と両親を順番に見る。


「……僕らは反対しないよ」

「加護の交換に応じるにしろ断るにしろ、出来ることは全部試した方が良いと思うわ。」

両親は改装に賛成のようだ。フェルムとベイクもうなずいている。

決定権を風花に渡してきた。


「1つだけ確認な!加護を交換すると俺のちから、100分の1くらいしか出せなくなるぜ!ハンニバルだけじゃなくて、他の誰が相手でもな。契約者は俺と風花のままでハンニバルとは今後もずっと仮契約のままってことになるぜ」

「俺は充分だ」

「私と風花ちゃんも仮契約で充分よ。仮でも加護を目一杯使ってもらえるもの」

ハンニバルもカデンも良いらしい。


「えっと、これからも仮契約を続けるかどうかのジャッジをするために改装してもらう。でも仮契約は解消する可能性もあるってことでいいの?」

「ああ、仮契約を解消する時には費用を全額こちらで負担して、現在の店舗に戻すと約束する。進めていいか?」

「……うん」

契約書の該当部分を指し示しながら話すハンニバルは爽やかなイケメンだった。


「まあまあ!潔いイケメンねえ!!」

はしゃぐレミが誠一に同意を求めるが、誠一は『むむう…』と声にならない声で答えている。


「良かったな!カデン。」

ハンニバルがカデンを抱き上げて喜んでる姿もまたイケメンだった。


「気前が良いお金持ちで強くてイケメンでイケボで子供に優しいって!天は二物も三物も与え過ぎじゃないか!?」

キレる誠一の隣で、風花がぼうっとハンニバルに見惚れていることにレミは気づいていた。


――― こんなに良いところを見せられちゃったら仕方ないわねえ。

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