第42話 ただいま!
「ただいま!」
「おかえり、阿修羅」
阿修羅がぴょこんとジャンプして風花に抱きつく。
その様子を見たハンニバルの眉毛が動揺した。飼い主が子犬を抱いている図が、ハンニバルの妄想フィルターを通すと、神殿に納められた全裸イケメン神の像が風花を抱きしめているように見えるらしい。
――― 阿修羅のやつ…馴れ馴れしいぞ!
(契約者同士なので普通です。)
「おかえり、バル!」
カデンがハンニバルに抱きつく様子は父と娘のようだ。
「ただいまカデン、良い子にしていたか?」
ハンニバルが嬉しそうにカデンの頭を撫でる。
「私はいつも良い子だよ」
「そうだな。でもいつもより元気がないんじゃないか?」
「そうかな」
ホットドッグの売れ行きが落ちていることが原因でカデンは元気がない。ハンニバルたちの帰宅でテンションが上がっているにも関わらず、カデンに元気がないとハンニバルが気づいた。
「カデンが嫌でなければ、後で聞かせてくれ」
「うん、ありがとう」
カデンの加護を使わなかったが、ハンニバルなりにカデンを大切にしてきた。些細な変化でもハンニバルはカデンの変化を見逃さなかった。
「父ちゃん! 母ちゃん! ご飯サンキュー、美味かった!」
「お帰りなさい阿修羅ちゃん。怪我が無さそうで良かったわ」
「おかえり阿修羅。……おやつは口に合わなかったか?」
誠一が阿修羅の首に巻いてやった唐草模様の風呂敷を触り、少し残念そうだ。
「逆! 口に合いすぎ! 食べ終わりたくなくて、最後に少しだけ残してる」
誠一の顔がフニャリと崩れた。
「また作るから全部食べていいんだぞ!」
阿修羅を抱き上げて腹毛に頬ずりする誠一。
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「うんまーい! 父ちゃんと母ちゃんの餃子大好き!」
「たくさん食べるんだぞ」
阿修羅とハンニバルの帰宅で張り切った両親が餃子を大量に包んだ。阿修羅とハンニバルとハミルカルが本気を出しても余る量だ。
「うん! この酸辣湯スープも美味いのな、出汁が濃くて具沢山で最高!」
「阿修羅ちゃんはお野菜も嫌がらずに食べてくれるから作るのが楽しいわ。ハミルカルさんとハンニバルさん、お代わりはいかがですか?」
「すみません、お願いします!」
今日もハミルカルは風花一家と晩御飯で、スープのお代わりは2回目だ。子猫に化けたオロチが食べる量は普通の子猫並みで、今もハミルカルの横で美味しそうに食べている。
「それにしても阿修羅くんには驚かされますな、ハンニバルと勘助のレベルを上げてしまうとは…」
「………阿修羅のサポートは絶妙だった」
風花の前で阿修羅を褒めるハンニバルが苦しそうだ。
「阿修羅、偉ーい!」
「もっと褒めても良いんだぜ!」
「はーい、なでなで」
風花に頭を撫でられて恍惚の阿修羅。
眉間にしわを寄せ、さらに苦しそうなハンニバル。
ハンニバルの妄想フィルターを通すと、子犬を撫でているだけなのに、イケメン神の像と風花がイチャイチャしているように見えるのだ。




