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第35話 この国のダンジョン事情

――― 遠征中の食事は風花一家に軍から仕事として発注されることになった。阿修羅の分に加えて、ハンニバルと勘助の分もだ。もともとお弁当を用意するつもりだった風花一家のちょっとした臨時収入になるだろう。



この国は地球に例えるとインドやアラビア半島のように東西と南は海に接している。

北は険しい山脈に囲まれており、この山脈を超えようとするのは、捕まるくらいなら死んだ方がましとヤケになった犯罪者くらい…という厳しい環境だ。

王都は南東の港に近い場所に位置している。


北部の山脈地帯は一年を通して寒冷で、南部は温暖。山脈から流れる2つの大河によって内陸は肥沃で農業向き。つまり豊かな国だ。他国からの移民やダンジョン攻略目当ての冒険者も多い。


しかし安全面では他国に劣る。

この国は世界中のどこよりもダンジョンが多いのだ。

つまり危険が多いということで、魔物による被害を受けた家族が、安全を求めてて他国に移住する事例も多い。


北の国境でもある山脈に近づくほど、ダンジョンの難易度は高くなり、ドロップ品もレア度が増す。

しかし攻略者は少なく、魔物の氾濫が定期的に発生する。氾濫が起きる前に討伐するのが王国軍の主な役割だ。他国との戦争は、ここ200〜300年起きていない。



平和なんだか危険なんだか分からないこの国ではロイヤルから平民まで、国民全員に1年間の兵役義務がある。

とはいえ一般市民が兵役で命がけの討伐や紛争に駆り出されることはない。

この国はどこに住んでいても魔物被害にあう可能性があるので、自衛手段を身につけることが兵役の目的で、12歳から13歳の間の義務教育のようなのものだ。


しかしそれは庶民の話で、身分が高くなればなるほど、資産を持つほど、社会的貢献が義務づけられる。義務というだけでなく貴族や王族、資産階級は国家と国民へ貢献度を競う。庶民への貢献が社会的ステータスなのだ。

反対にこの国では脱税と社会貢献の放棄は最も蔑まれる犯罪で、罰則も厳しい。


「風花ちゃんも兵役についたの?」

「もちろんよ。」

カデンの質問に笑顔で答える風花。


「風花に何もなくて良かったんだぜ…。俺のいないとこで危険なことはダメだぜ!」

小さな阿修羅が風花に言い聞かせる様子が微笑ましいが、ハンニバルの眉毛が僅かに動いた。


「皆さんが魔物と戦うような事にならないよう我々がいるのです。阿修羅、力を合わせてダンジョンの平和を守っていこう。」

「おう! 任せとけ。」

阿修羅の尻尾がブンブン回る。


「阿修羅もバルさんも無理はしないでね。」

「俺は神なんだぜ!」

無理するなと言う風花に、神は凄いんだぜ!風花は分かってない! とチョイおこな阿修羅の背後でハンニバルが切なそうに胸を押さえていた。

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