第34話 ご飯はインベントリに収納して!
――― ダンジョン、遠いのか……。
尻尾を垂らしてトボトボと歩く阿修羅。
お店もあるのに一緒に行けるわけがないと取りつくしまもない両親に涙目の阿修羅。
可愛く鳴いてジタバタしてみたが、ワガママは通じなかった。
さっと阿修羅を持ち上げて風花に渡しながら『ペットの躾は大事だぞ!』とか言われてしまった。
――― 俺、神さまなのにな。
……ま、いっか。大人扱いになったら、もうキャラ弁を作ってもらえなくなるしな。
「勘助、入るぞ」
阿修羅の代わりにハンニバルがノックして勘助の執務室に入る。
「……と、いう訳でな」
「それで阿修羅殿の尻尾は元気がないんだね」
「俺、晩ごはんは家で食べたい!」
「風花ちゃん一家の料理は評判だよね」
阿修羅とハンニバルのお弁当や、一家に入り浸るハミルカルを通じて風花一家が料理上手なことが評判になっていた。
『パンなら負けないが、料理は普通。』が風花一家の口癖だが、毎日のパン作りで料理スキルがカンストしたとしか思えない美味さだ。
幼い頃からお手伝いしてきた風花も、料理スキルを含め家事スキルは全面的に高い。
「なあ、勘助。“ダンジョンもお家ご飯も”って方法ない?」
「あるよ」
「あるのか!?」
「インベントリに入れておけば良いじゃない」
「……そっか! 頭いいな!」
インベントリに入れておけば時間経過もないので家に帰れなくても問題ない。いつでも出来立てを食べることが出来る。
「……なあ、勘助?」
「何だい?」
「風花をインベントリに入れていけないかな?」
「インベントリに生き物は収納出来ないだろう」
「………。」
「無理に試して風花ちゃんに嫌われても知らないよ」
「な、何で俺の考えが分かったんだ!?」
動揺した阿修羅が毛を逆立てる。
「1日でも離れていると、何か起きるのかい?」
「…何も起きない」
「何日でも離れていても問題ないのかい?」
「問題ない」
「距離は? どんなに遠くても大丈夫?」
「大丈夫」
「では、どうして風花さんと一緒に行くことにこだわるんだい?」
「夜! 風花と一緒に眠るから」
ぴくり。
ずっと黙っていたハンニバルの眉が動揺した。
――― おや?
「一緒に眠らないと何かあるの?」
「俺が休まらない! 風花のベッドで一緒に眠りたい」
ぴくぴくり。
ハンニバルの眉が再び動いた。
――― おやおや?
「遠征中は俺と一緒に眠ればいい」
ハンニバルの提案に阿修羅の顔が嫌そうに歪み、ハンニバルはちょこっと傷ついた。




