第25話 阿修羅とバルのお試し期間
「ここがハンニバルの職場か! 死臭とか全然しないのな!」
「あ、阿修羅!?」
無口なハンニバルがギョッとして返事をしてしまう異常事態に周囲がざわついた。
「ハハハ! 平和な時代だからな」
「よお!」
横から現れたハミルカル将軍にも気安い阿修羅に再び周囲がざわつく。
「軍隊が本来の仕事をできないのは良いことなんだよ」
「俺も徳を積めるってものだな!」
満更でもない阿修羅の尻尾がご機嫌に揺れている。
「それで俺は何をすればいいんだ?」
「阿修羅は俺と一緒に行動してくれ。特に任務のない時は訓練や装備のメンテナンスなどが主な業務になる。国内・国際情勢の情報収集や分析もあるな」
「…………。」
阿修羅の眉間にシワがよる。
「阿修羅?」
「……それ…俺がいる必要あるの?」
「徳を積むんだろう?」
「……」
「ワシら、出番が無い方がいいんだよ」
ハミルカルが穏やかに言って聞かせた。
――― 同じ頃、店でウキウキと楽しそうなカデンと比べて口数も少なく、全く楽しそうではない阿修羅だった。
「隊長! その子が噂の阿修羅くんですか?」
「可愛いなー!」
「俺たちハンニバル隊長の隊の所属なんだ、よろしくね」
阿修羅とハンニバルのやり取りを側で聞いていたハンニバルの部下の3人組が阿修羅に声をかけた。
「俺の名前はシベリアで、こっちの金髪で美形な男がリカルドで、ワイルドな魅力の黒髪がロボ。よろしくね」
代表して自己紹介したシベリアは栗色の髪で優しい顔立ちだ。この3人はタイプの違うイケメンでパリピでモテモテで有名だった。
イケメンなので女性にも動物にも優しい。
ちなみにハンニバルはイケメンだが気が利かないのでモテない。会話も下手くそなので絶望的にモテない。
「隊長! 阿修羅くんにデスクワークを付き合わせるのはかわいそうですよ」
「僕らで中を案内しますよ!」
「ついでに少し運動もしましょう!」
女性を前にした時のようにいきいきとするパリピ3人組。
「お前たちも仕事があるだろう」
「そんなの後で辻褄合わせるから大丈夫ですって!」
このパリピ3人組はモテる上に要領が良い。
真面目で要領の悪いタイプのハンニバルと正反対だ。
「ダメだ! お前たちの軽薄な素行が阿修羅に感染する!」
ハンニバルの心の中のモヤモヤにより、阿修羅はハンニバルのデスクワークに付き合われることになった。この余裕の無さがモテない理由の1つだ。




