第24話 カデンと風花のお試し期間
阿修羅は、明日の出勤からハンニバルに同行することになった。
なのでこちらも時間を無駄にすることなくお試し期間の準備を進める。
「じゃあ明日はホットドッグとソフトクリームでいい?」
「うん、お願い」
「じゃあ召喚するね!」
“業務用ホット・ショーケースが召喚されました”
バフン!
“業務用ソフトクリーム・マシンが召喚されました”
バフン!
“ワッフル・ボウル・メーカーが召喚されました”
バフン!
「ソフトクリームの仕込みは明日の朝ね!」
「間に合うの?」
「うん! じゃあ続きは明日ね、おやすみ風花ちゃん」
家電製品を召喚して設置しただけで、あっさりと隣の家に帰るカデン。
――― 呆気なくない!? いやでも毎日のことなら楽な方が良いかな。
ホットドッグ用のドッグパンは両親が用意してくれる予定だし、ソフトクリームを盛るワッフルは明日の営業が始まってから焼くって言ってたし。ソフトクリームの仕込みと同進行で出来るらしい。
ホットドッグは珍しくもなんとも無いが、風花一家のレシピは美味いからとハンニバルが押し切った。本当に売れるのか疑問だがハンニバルが有料でも並んででも食べたいと主張する風花一家のホットドッグだ。
ソフトクリームは一般的ではない…というか、見たこと無かったし食べたこともなかった。カデンとハンニバルが振舞ってくれた時は、美味しくて震えた。
氷魔法があれば似たものは作れそうだけど氷魔法をお菓子作りに利用する者はいないだろう。
しかし、いくら美味しくて珍しくても冬は売れなくなるだろうし、そもそもパンのように毎日食べるようなものではない。単価の安いものがたまにしか売れないではダメなのだ。
「あの時もカデンちゃんは可哀想なくらい落ち込んだっけ…。ソフトクリームは美味しくて珍しいけど逆に知られていなさすぎて、明日は注文されないだろうな。ホットドッグだってお肉屋さんで買って食べる方が美味しいし。」
またカデンちゃんの悲しむ姿を見るのは辛いだろうな…。
ううん! ダメならどんどん新しいメニューを試す約束だし!
…………全部試してダメだったら…。
幼女なカデンちゃんがポロポロと涙をこぼしながら泣く姿が目に浮かぶ。
いやいやいや!
もう考えても無駄! 無駄! 無駄ァ!
とっくに情はうつっているけどシビアにジャッジしなきゃ。後悔しないよう少しでも売れるように頑張ろう!
翌朝、今日からだね! とカデンがはしゃいでいる。
全然売れなかったら…と想像して胃の痛い風花と対照的だ。
阿修羅がハンニバルと一緒に通勤したので戦神の圧力から解放されたフェルムとベイクが伸び伸びしている。
「風花ちゃん、これどうかな?」
カデンがAの字型の黒板を取り出した。
これに新しいメニューを書いてお店の外に置いて宣伝するらしい。
カデンに任せたら可愛いイラストまで一気に描き上げた。色使いも鮮やかで目を引く。
「上手だね! カデンちゃんにこんな才能があったなんて知らなかったよ」
「えへへ。これは周辺機器だから簡単に扱えるんだ」
周辺機器というのは、家電製品のオプションらしい。
「これも周辺機器ね!」
楽しそうにケチャップやマスタードの容器、ホットドッグを入れる紙の袋や厚紙トレーなどを並べるカデン。ホットドッグの袋は耐油らしい。
ゆったりだったパン屋のカウンターの奥にソフトクリーム・マシン、お客様側にホットショーケースが並ぶ。
「まずはソフトクリームの準備しよう!」
「どうしたらいいのかな?」
「ここに原料を入れて! 今回は出来合いのミックス、これね!」
カデンに渡された原料を入れる。
「こうやって蓋をして10〜15分くらい待ってね!」
「15分後に何をするの?」
「出来上がっているよ?」
「…!?」
「その間にワッフル・ボウルを焼こうよ!」
待つだけか…。父さんのパンだって発酵の精霊のフェルムが手伝ってくれるけど捏ねたりするのは人間の手で頑張っているのに。
「スイッチ入れて! 生地を流して…焼けたら出来上がり!」
20個ほど作ったら生地が無くなった。
使用後の手入れはカデンの魔法で手間いらずだった。
「ワッフルにソフトクリームを盛ってみようよ! 最初は難しいかも。まずは私がやってみせるね!」
カデンは綺麗に渦巻きを作った。
簡単そうだと真似をした。
「……。」
「練習すれば上手くなるし! この世界で初めてだから失敗とかお客様には分からないから大丈夫!」
失敗だって……。楽しそうに言われちゃった。
「食べてみよう! 味は美味しいよ!」
うん、これこれ。美味しいわあ。
「今日は出来合いのミックスを使ったけど、この世界の新鮮なミルクとかフルーツでオリジナルのソフトクリームも作れるから、今度試してみようよ!」
「そうなの? 作れるの!? これで充分美味しいのに…もっと美味しくなるなんて…」
「ミックスも何種類かあるんだよ! サッパリからコッテリまで。今日は暑くもなく寒くもないから真ん中!」
そっか。暑い日はサッパリが美味しいもんね。やるなカデンちゃん。




