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   序



 彼は歩いていた。

 古びた床板のきしむ、渡り廊下を。

 緋色の装飾が目に鮮やかな梁や欄干が、青みがかった玉砂利の中でひときわ目立つ。

 遠くから水のせせらぎと、鹿威しの音が聞こえてくる。風に揺れる草花の音がまた、旋律を奏でて美しい。

 彼はひたすら、渡り廊下を歩く。

 廊下の欄干にはところどころ出口があり、石畳が続き先をゆけば、風流な離れ宿が建っている。

 渡り廊下一区切りにつき、離れ宿ひとつ。見渡せば、遠からず近からずの絶妙な距離をとって、それぞれ同じ形をした離れが並んでいる。

 ここは、宿だ。

 仲居をつとめる人々が、せわしなく廊下を行き来している。その人たちは彼を見て、すこし驚いたように目を見開く。けれど、声をかけてくることはない。黒の作務衣に身を包み、腕に紅の腕章をはめるのが、この宿の仲居たちの正装だった。

 彼はふと、歩みを止めた。

 離れ宿の縁側で、客人が仲居と話している。さほど大きな声で話しているわけではないけれど、その内容は彼にも聞こえてくる。

 葬儀が、滞りなく終わるか心配なのです。客人はそのようなことを言っていた。

 葬儀か、と、彼は思う。

 彼の頭に浮かぶ、葬儀。それはすこし奇妙な記憶だった。




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