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90.討伐依頼料の分配 / 聖女ミルーシャと新たな魅了

「失礼、二人の様子はどうです?」

「今の所変わりは無いですね、昏々と眠ったままです」

「そうですか、病気とかじゃないですよね?」

「一応キャンプには医者も随行していますので見て貰いましたが、極度の疲労と餓えのせいだろうとのことです」


 疲労のせいなら無理に起こすのも可哀そうだし、そままそっと寝かしておくことにした。

 その間、彼らの傍で食事をしながらアナさんも含めた4人で今日の反省会をすることに。


「それで今回の討伐料は合計幾らになりました?」


 ユーシスも私も興味津々にアナさんに聞いた。


「ちょっと待ってね、討伐完了書を出すから」


 そう言ってアナさんは如何にもお役所的な書類をカバンから出した。



―基本討伐料―A

討伐対象   数量

変性ヒドラ   1   600万    600万

レッサーラミア 4   300万   1200万

――――――――――――――――――――――――

討伐料合計              1800万


―追加討伐料―B

討伐対象   数量

ベヒーモス   3   600万   1800万

レッサーラミア 1   300万    300万

ラミア捕獲   5    50万    250万

――――――――――――――――――――――――

討伐料合計              2350万


AとBの合計

(A)1800万+(B)2350万=4150万


「「「4150万ルブル!?」」」


「記録更新だわ!」

「俺の鍛冶屋時代の年収が300万ルブルくらいなのに、1日で4150万ルブル!?」

「私なんて年収180万ルブルしかなかったわよ、4150万ルブル・・・!?」

「しかも今回は非課税ですので、税金の天引きはありません」


「「「非課税!」」」


 非課税

 ああ、なんて素敵な言葉だろう・・

 それに4150万ルブルあればどんな家だろうと!


「よかったですね、4150万ルブルあれば豪邸が建てれますよ!」

「4150万ルブルの家かぁ、クローディアさんが住めばどこかの令嬢みたいな感じに・・」

「は?いやいや、私が全額貰う訳にいかないでしょう?ここは奇麗に三等分に・・・」


 そこからが大変だった。

 お互いが意地になり金の押し付け合いが始まった。


「普通、こういうトラブルって金の奪い合いになるものですが、押し付け合いになるのは初めて見ましたよ」


 アナさんが呆れ顔で言葉を吐いた。


 結局私達はベヒーモス一頭分の討伐料600万ルブルだけ頂戴して、残り3550万ルブルはクローディアさんが受け取ることになった。


「ところで三人は何者なのですか?ベヒーモスを一撃の元に屠るなんて1級冒険者や1級ハンター以上でないと絶対無理ですよね?」


 アナさんが不思議そうに訊ねてきた。

 いつかは聞かれるかもと思っていたけど、ついに聞かれてしまった。


「まあ、能ある鷹はなんとやらですよ。私達は大きな目的があるわけでもなく、名声などにも興味はありません。2級程度に留まってスローライフを送りたいだけなんですよ」


 クローディアさんはそう説明はしたが、アナさんはそれで納得はしない。


「そういう事ではなくてですね、三人はどうやってその力を手に入れたのかをお伺いしたいのですけど?」


「それは女神様の祝福と、日ごろの訓練の賜物としか言いようがありません」


「女神様ですか?」


「そう、女神様です」


 この手の話は大抵は女神様のおかげと言えば相手も引き下がるしかない。

 慈愛の女神セフィース様は割と頻繁にこの世界に顕現され、大衆に(なぜか)愛されているのだから。


「まあ、そういう事にしておきましょう・・・」


 アナさんはこれ以上追及しても答えは得られないと判断し早々に諦めた。

 文化庁のアナさんにとってはただの好奇心でしかない。

 これが軍属や情報局の者だったらこうはいかなかったろう。


 そうこう話しているうちにスタッフの方が夕食のシチューを持ってきてくれた。

 フワッと美味しそうな匂いが天幕内に広がる。


「う・・・」

「んん・・・」


 シチューの匂いに反応したのか、西城祐樹さんと松本朱里さんが目を覚ましたようだ。


「ここは・・?」


「ここはラミア神殿前の調査キャンプよ、西城裕樹さん」











 スラヴ王国王都、西高級住宅街のヨシュアの屋敷




 ―偽ガバナス事件の翌日の話


 屋敷の一室でベッドに横たわり眠り続ける美しい女性の姿があった。


 彼女を取り囲んでいるのは、ヨシュア、カーシャ、道夫、真美の四人。


 隣室には、第三独立小隊面々と真奈美と麗子が待機している。


「じゃあ、道夫君、俺が駄目だったらすぐ頼む」


「わかりました」


「カーシャ、起こしてくれ」


 カーシャはコクリと頷き首筋に弱い電撃を与える。


 美しい女性の身体が僅かにビクンと跳ね上がり、意識が覚醒していく。


「ここ・・は・・?・・あなたは・・?」


 ゆっくりと彼女の目が開き、グリーンの奇麗な瞳が現れた。


「僕の名はヨシュア、ここは僕の屋敷だよ、ミルーシャ」


「ミルーシャ・・・そう・・私は豊穣の聖女ミルーシャ・・」


 思い出すように豊穣の聖女ミルーシャは自分の名前を口にする。

 そして自分自身を認識した瞬間、“ズキン!”と頭の奥深から痛みが走った。

 その直後、今までの記憶が津波の如く彼女に押し寄せる。


「あ・・あああああ・・・ああ・・」


 彼女は僅か一瞬の間に思いだし理解してしまった。

 自分が豊穣の聖女として女神テラリューム様から神託を受けたこと。

 聖堂騎士が自分を拉致し幽閉同然に軟禁したこと。

 その後、召喚勇者を名乗る者に奪われ凌辱の毎日が始まったこと。

 それを自身が喜び受け入れたこと。

 そして・・・・彼女自身の手で最愛の想い人アキムを刺し殺したことも・・・


「いやあああああああああああああああ!」


 絶叫が屋敷中に響いた。

 ミルーシャはガクガクと震えながら頭を抱えた。


「私は、私がアキムを・・うあああああ!」


 カーシャは「落ち着いて」と声をかけかけたが止めた。

 カーシャ自身もかつて同じ経験をして知っている。


「(無理だ、こんなこと落ち着けれるわけがない)」


 カーシャはミルーシャの肩に手を回しそっと抱きしめた。

 せめて震えだけでも止めてあげたい・・そう思ったからだ。


「ヨシュア、始めてくれ。これ以上苦しませたくない」


「わかった・・・」


 ヨシュアはミルーシャの傍に寄った。


「ミルーシャ、僕を見て」


 ヨシュアの優しい声に反応してミルーシャは震えながら顔を向けた。


 目と目が合い、ヨシュアは真正勇者唯一の外法を行使する。


勇者の魅了(ハートアイ)・・・」


 優しく温かいオーラがミルーシャの瞳を通して入って行く。

 罪悪感・絶望感で埋め尽くされていた彼女の心は、ヨシュアへの想いに上書きされてしまった。


 トゥクン・・・


 彼女のヨシュアを想う気持ちに胸の鼓動が高鳴る。

 もうミルーシャにはヨシュア以外は見えていない。


「大丈夫か?」

「はい、ヨシュア様。もう落ち着きました」


「そうか、これから大事な話をしたい。立てるか?」

「大丈夫です」


 ヨシュア達はミルーシャを連れてテラスに移動した。

 これからの事を話し合うために。


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