86.ラミア神殿、ユーシス無双!
リヴニの街 某ホテルのスイートルーム ベッドにて
「アリサ、そろそろ起きて」
「ん・・」
「おはよう」
微睡の中、ユーシスに寄り添っていた私は、彼のおはようコールで目を覚ます。
「おはよう・・」
おはようの挨拶を返したものの、私は彼の脚に自分の脚を絡めて起きる事に抵抗する。
「ダメだって、ほら起きて!」
「ん~、もう少しだけ・・」
久々の充実感に身体が欲しがるままユーシスをギュウっと抱きしめる。
そんな私をユーシスは無常にも剥ぎ取り上体を起こした。
「あん・・・ユーシスのイジワル・・」
「もっと君と寄り添っていたいけどさ、もう7時30分だよ?」
「・・・・うん・・?・・・7時30分!?」
7時30分と聞いて一気に目が覚めた!
「7時30分!?うそ、なんでもっと早く起こしてくれなかったの?」
明らかに私より早くから目覚めていた感じのユーシスを責めた。
「すまん、君の寝顔を見てたらついつい時間が経っちまった」
「--------------!」
火を噴きそうなくらい顔が真っ赤なり、溜まらずユーシスの胸に顔を埋めてポカポカ叩く。
「わかった、悪かったって、とにかく早く起きて!」
私は起きて直ぐ聖なる強力洗浄を掛けたのち、急いで身支度を整えホテルを後にした。
ちなみにユーシス成分の補充は万全だ!
ギルドへの路を今日はファイスとネロに跨り全力で駆ける。
おかげで待ち合わせ時間の10分前には到着したが、クローディアさんはすでに待っていた。
「おはようございます。遅くなりましてすみません」
「おはよう、二人とも」
「えっと文化庁の人は?」
「一足先に向かっているわ、向こうは馬車だから時間がかかるのよ」
言葉もそこそこに3人とも馬に騎乗してラミア神殿に向かう。
地図を見ながら1時間も走ったところで小沙漠地帯が見えて来た。
調査隊がキャンプをしているようでそこかしこに天幕が設営されている。
近くまで行くと天幕の数の割りには人員が少ないことに気付く。
どうやら変性ヒドラとレッサーラミアの襲撃を恐れ一時的に避難しているようだ。
このラミア神殿は砂漠に埋もれていたが、近年の異常気象による砂の流出により、二か月ほど前に発見されたそうだ。
神殿の規模はそう大きいものではないと思われ、現在は入口付近の砂が取り除かれている。
その入り口付近に文化庁の職員を思われる30歳前後の女性が、現地スタッフと何か相談していた。
こちらに気が付くと向こうから向かって来てくれた。
「おはようございます、2級冒険者パーティー御家の為にの皆さんですね?
文化庁先史文化財保護部のアナスタシアです。アナとお呼びください。
今日は宜しくお願い致します」
御家の為にと呼ばれて“うっ”と思ってしまったけどもう遅い。
他人の口から呼ばれて気づく私達三人のネーミングセンスの無さに悲しくなった。
それでも開き直って挨拶する。
「おはようございます。パーティーリーダーの2級冒険者クローディアです。こちらは同じく2級冒険者のユーシスとアリサです」
「おはようございます。2級冒険者のユーシスです」
「2級冒険者のアリサです。今日は宜しくお願いします」
「皆さん遠路遥々ご苦労様です。お茶を出しますのでその際に色々説明しますね」
アナさんが入れてくれたお茶を啜りながら説明を受ける。
入口は1階と思われるメインゲートのみで、他の出入り口はまだ砂に埋もれている。
メインゲートを進むと地階に降りる階段がある。
地下に降りずそのまま先に進めば1階大ホールに出る。
ここには変性ヒドラが巣くっていて、そこから先の調査は出来ていない。
地下一階は巨大なホールになっており、変性ヒドラが巣くっていて、そこから先の調査は出来ていない。
地下部分は多くの石柱により支えられている大ホールで、中央に何か儀式用のモニュメントがあり、ここを中心にレッサーラミアが確認されている。
なおこれまでレッサーラミアの餌食になった討伐隊は、精を吸いつくされ夜間のうちに外に捨てられている。
生きてはいるが回復の見込みは難しいそうだ。
アナさんの説明を概ね理解し、いよいよ私達はラミア神殿に突入した。
クローディアさん、ユーシス、私、そしてアナさんの順でズンズン進む。
「アナさん、危ないと思ったらすぐ逃げて下さいね」
「ありがとう、でも私も3級ハンターの資格を持ってますので、多少のことは大丈夫です」
アナさんはそう言ってライトバトラーフ剣(剣の中央を持ち両先端に刃がある特殊湾曲剣バトラーフの軽量版)を手にした。
ゲート入口から少し離れた所に奥に続く大きなドアと地下に降りるスロープがある。
奥は全くの真の闇。
「アリサちゃん、お願い」
クローディアさんの要請にコクリと頷く。
「聖光球体!」
白色光の明るい球体が空に現れ周囲を照らす。
「アリサ、高い位置に複数出せるか?」
ユーシスの言われた通り、複数の聖光球体を奥の大ホールに配置する。
眩い明るさに目が慣れていき、ホールの様子が浮き彫りにされた。
「凄い・・」
アナさんが思わず声を漏らした。
周囲の壁ほとんどが文字や図形、絵柄で埋め尽くされていた。
私にはどれほどの学術的価値があるのかはわからないけれど、アナさんの様子を見る限り凄いことは間違いなさそうだ。
しかし私達はホールの一点に対して最大限の警戒をしていた。
「ユーシス君、君の出番よ!」
クローディアさんに言われてユーシスがズイと前に出る。
「ユーシス、身体強化を掛けるわ。まずは4倍で行くわよ」
ユーシスの覇気が一瞬ボンと膨らみ、身体パラメーターが通常時の4倍に増加する!
「サンキュー、じゃあちょっとイワしてくるぜ!」
ゴウ!と炎を纏い、ユーシスは突撃して行った。
クギャアアアアアアアア!
迫りくるユーシスを認識し、それが一斉に鎌首を擡げた。
八つの頭を持つ巨大な変性ヒドラがユーシスを迎え撃つ!
そのうちの一つが迂闊にもユーシスを丸飲みしようと襲い掛かる!
「遅い!まず一首!」
ヨシュアから預かった勇者の剣に炎を纏わせ、弾性のある表皮などお構いなしに焼き切る!
ジュシュー!
肉が焼ける匂いがした瞬間ボトリとヒドラの頭が落ちた。
キャシャアアアア! プシャアアアアアア!
別の頭がユーシスに向かって酸を飛ばした!
ユーシスはこれを剣に纏わせた超高温の炎で一瞬に蒸発させる!
「そーれ、二つ目!」
ザシュウぅ!
軽々と二つ目の頭を落とす。
「へー、ユーシス君この前とは大違いじゃない!」
「だから言ったでしょ、ユーシスは本当は凄く強いんだから!」
クローディアさんがユーシスの戦いを感心しているのを見て、私は上機嫌になった。
ユーシスの強さはまだまだこんなモノじゃないんですよ!ふふふふ♪
「おっしゃああ、頭を全部落としたぜ、後は本体潰して終わりだ!」
ユーシスはそのまま本体の上にジャンプして乗った。
「だりゃあああああああああ!」
ズブッ!ジュジュジュジュー!
高温の剣を柄の部分までヒドラの本体に突き刺し、そして・・・
「ファイヤーボール!」
突き刺した剣の先からファイヤーボールを放つ!
ヒドラの本体は“ボシュン!”と内部爆発して肉の焼ける匂いが漂わせた。
「まだまだ!
ファイヤーボール!ファイヤーボール!ファイヤーボール!
ファイヤーボール!ファイヤーボール!ファイヤーボール!
ファイヤーボーーーーール!」
これでもかってくらいファイヤーボールをヒドラの体内に叩きつけ、とうとう変性ヒドラは沈黙した。
「はー、凄いじゃない!私と試合した時とは別人のよう!凄く戦い慣れているし!」
ふふーん♪
凄いでしょ!ユーシスはやれば出来る子なんです。
あ、もっと褒めてもいいんですよ!
ていうか褒めて褒めて、さあ♪さあ♪
ん~ふっふ~ん♪
いやー、ユーシスが活躍してくれて本当に嬉しい!
思い起こせば最近のユーシスはクロウディアさんにいいように遊ばれ、私には手刀一発で意識を刈り取られいい所無しだったなぁ・・
あれ?おかしいな、嬉しくて涙が止まらないよぅ。
「へへへ、楽勝!楽勝!」
意気揚々と戻って来るユーシスに拍手で迎え歓喜する女性陣!
その歓喜に水を差すように、
ぶもおおおおおおおおおーーーー!
どこかで聞いたような雄たけびが響いた。
初めて主人公が圧倒的に無双しました!
褒めて!褒めて!




