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85.ラミア神殿攻略ミーティング

 リヴニの街より北方の牧場



 ぶもおおおおおおおおおーーーー!


「アリサ、あれ何に見える?」

「どう見てもベヒーモス・・」

「だよね・・」


 牧場主に案内され討伐対象である魔獣化した牛とやらを確認してみたところ・・・

 全長4mくらいありそうな、どう見てもベヒーモスのような魔獣だった。


 どうやら牧場主が討伐料をケチってベヒーモスを〈魔獣化した牛〉で依頼をしたらしい。

 当然一悶着あったが、スイートルーム代のこともあって結局30万ルブルと、サービスのバターと干し肉を貰う事で討伐を受けた。


 それにしてもどうしてこんな所にベヒーモスが?


 ベヒーモスと改めて対峙し、

 先手必勝!とばかりに私とユーシスは合体技の体勢に入った!


「雷帝彗星斬!」

「炎獄流星斬!」


 バリバリバリ!ゴゴゴゴゴ! ドゴーーーーン! ギュリリリリリ、ギューン!


 二人の必殺技が混ざり合い、巨雷と豪炎を含んだ竜巻がベヒーモスを襲う!


 ぶごおおおおおおおおおーーーー!


 一撃の元にベヒーモスは葬り、私達は実にあっさりと無事クエストを完了した。


 今回は牧場内の出来事ということで、魔獣の討伐証明になる部位は持ち帰らなくてよく、牧場主のサインだけでOKだ。


 この件で私達は、高額な討伐依頼は内容を鵜呑みにしてはいけない事を学んだ。



 ----リヴニの街


 ギルドに戻り討伐完了のサインを貰った書類を渡し、今回は討伐料を全額キャッシュで貰った。

 それと今回の件の内容を報告したところ、ギルド長にメチャメチャ怒られた。

 4メートルクラスのベヒーモスなら最低でも200万ルブルは貰わないと割りに合わないとのことで、価格破壊をするような真似は慎むようにと厳しく注意されてしまった。


「なんだか踏んだり蹴ったりって感じだね・・」

「仕方ないよ、俺達2級に昇格はしたけど、まだ駆け出しなんだから。これから覚えていけばいいさ」


 ユーシスはそう言って私の頭を軽くポンポンと叩いた。


「うん・・・」


 討伐前に燥いでいた分、失態の反動が大きい。

 多分一人だったら今日一日はずっと引きずっていたと思う。

 ユーシスと一緒で本当によかった。

 私は知らぬうちに彼の腕に縋っていた。

 何か失敗するとすぐユーシスに縋ったり依存してしまうのは、子供の頃からの私の悪い癖だ。

 でもこの癖はどうにも治る気がしない。



 午後1時30分頃、クローディアさんと合流した。

 その後、私達は近くの図書館に移動、館内の有料ルームを借りてミーティングに入った。


 まず改めて討伐依頼書に目を通す。


 【場所:リヴニの街 東20キロメートル小砂漠内 地下ラミア神殿】


 今回新たに発見されたラミア神殿は砂漠に埋没していたもので建造時期は不明。

 王国や王国以外でもラミア神殿は複数確認されており、かつては空間転移のゲートとしての役割があったとされるが、発見されている既存のものは、その力は消失されている。

 神殿は全く無傷のままでの発見ということで調査に大きな期待がかけられている。


「もしかしてオスカーさんの言ってたラミア神殿ってここの事なのかな」

「どうだろう。彼がラミア神殿のことを知ったのはずっと前のようだし違うんじゃないかな」


「ねえ、オスカーって誰?」


 クローディアさんが不思議そうに訊ねてきた。

 ラミア神殿絡みで私達に知り合いがいるのが気になったようだ。


「えっと、オスカーさんは・・・あ!」


 私は召喚勇者の末路のことを思い出した。


「クローディアさん、これからは絶対魔力を使わないで下さい!」


 そうだった、召喚者達は魔力を使い果たすと死ぬか廃人になるんだった。

 こんな重要なことを失念していたなんて!


「クローディアさん、オスカーさんというのは異世界からの召喚者で・・」


「ああ、魔力を使い切るとポックリ逝くってこと?私は大丈夫だから気にしなくて平気よ」


「「え?」」


 クローディアさんはそう言って自分の剣をテーブルの上に置いた。


「この魔剣には5つの魔石を込めることができるの。これを使う限り魔力は魔石から供給され、私自身の魔力を失うことは無いわ」


 意外な事にクローディアさんは、召喚者の魔力が枯渇すると、死ぬか廃人になることを知っていた。


 彼女によると東スラヴ帝国の異世界人の召喚成功率は王国ほど高くなく、その為に召喚者を長期運用するよう魔石を使い、寿命を延ばす事によって数を補っているらしい。


 またクローディアさんがこのリヴニの街に腰を落ち着けて住もうとしたのは、このリヴニの街が魔石の流通取引・売買が安定しているからだそうだ。


 召喚勇者オスカー・ブラウンの説明をすると自分以外にも出奔した召喚勇者がいたことに驚き、ラミア神殿に元の世界に戻るためのヒントがあるかもしれないことを知ってさらに驚いた。

 しかし彼女は元の世界に戻る事には興味はないようだった。


「クローディアさんは元の世界には戻ろうとは思わないんですか?」


「私は別にいいかなぁ・・・元の世界は私にとってはあまり良くなかったから・・・」


 クローディアさんは何処か遠い目をしながら言った。

 彼女にもいろいろ合ったようだ。




 【討伐対象】

 変性ヒドラ1体 レッサーラミア4体(増殖している可能性有り)


「変性ヒドラってなんでしょう?」


「このヒドラ、見た目からして滑ッとして、雷撃系の技が効きにくいのよ。まあ私とアリサちゃんでも時間かければ倒せると思うけど、ここはユーシス君の出番かしらね」


 このヒドラ、表皮が絶縁体の上、弾性があり女性陣の剣技では手間取りそうだ。

 ジゴブレイクや雷帝彗星斬なら瞬殺できるだろうけど、下手をすれば神殿ごと破壊しかねない。


「やっかいなのはこっちのレッサーラミアの方、ユーシス君には後衛に回ってもらって私とアリサちゃんでやるわ、絶対前に出ちゃだめよ」


「聖女のアリサの方を後衛にした方がいいのでは?」


「そういう訳にはいかないのよ、このレッサーラミアって〈魅了〉使うから。だから討伐条件に3分の2以上が女性を含む事が条件なの。男主体のパーティーじゃすぐ崩壊するからね」


「「魅了!?」」


 また魅了!?

 しかも勇者以外の魅了って本当にあるんだ。


 ラミアは下半身が蛇、上半身が女性の亜人。

 レッサーラミアはその下位種と聞いたことあるけど・・


「クローディアさん、ラミアって一応は亜人ですよね?このレッサーラミアも亜人なんですか?亜人だとすれば殺すと殺人になるのでは・・」


「私もそこは気になったから調べたけれど、レッサーラミアには蛇ほどの知性しかないわ。区分としては魔物扱いよ。見た目は美女だけど気にしなくていいわ」


「魅了されるとどうなるんですか?」


「男性に対してだけど、強制的に発情させられ身が干からびるまで精を搾り取られるわ。時には操られ同士討ちとかもあるみたい」


「後衛で頑張ります・・・」


「注意するのは魅了だけね、それさえ気を付ければ私達の敵じゃないわ」


 またユーシスが奪われたらいやだなぁ・・・

 でも最近の流れ的に嫌な予感しかしない。


「ん?これおかしくないか?」


 そういって討伐依頼書の詳細欄にあるクエスト失敗パーティー一覧を指さす。

 その中に【スラヴ王国騎士団第一独立小隊第二軍】の名があった。


「第一独立小隊に二軍なんてあったっけ?」

「あそこは第三独立小隊と同じで8名だったはず。二軍なんて無いわ」


「ああ、それは多分惨敗したのは二軍ってことにしたいんじゃない?」


 第一独立小隊は魔法騎士(マジックナイト)武闘神官(マーシャルプリースト)から編成された少数精鋭部隊だったはず。

 いくらレッサーラミアが魅了を使うからって易々と負けるわけがない。

 そもそも相手がレッサーラミアと分かっている以上何らかの魅了対策だってしていた訳で・・・


「クローディアさん、もしかして変性ヒドラとレッサーラミアの他にも何かあるのでは・・・それも国の精鋭部隊を負かすほどの何かが」


「可能性は高いと思うよ、高額報酬を設定する以上、何もない訳は無い。ま、2級以上の常識ってやつね」


 なるほど、つまり2級以上のクエストはハイリスク・ハイリターンな訳ですね。

 クローディアさんにとってはこれくらい想定の範囲内らしい。


 その後、私達は明日のための物資を調達し、少し早めの夕食を済ませた後、各々の宿に戻った。


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