↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/471

84.アクサナ王女の憂鬱 再び


 スラヴ王国 王宮 アクサナ第二王女執務室 (アクサナ王女視点)



「彼奴はこの世界のいかなる人種・魔族も纏う事のないモノを纏っておりました」


「まさか・・・放射能ですか?」


「その通りです、殿下。彼奴は、大魔術師バミアと同じくエスカトロジー世界の突然変異体(ミュータント)と推測されます」



 エスカトロジー世界、

 それはアース世界から分派した核戦争後の世界と推測される(いわゆる【キューバ危機(1962年)】を乗り越えられなかった世界)。


「まさかバミア復活の予兆なのでは・・・」


「それはまだ分かりません。バミアの残党かもしれないし、どこかの国が新たにエスカトロジー世界より召喚した者なのかもしれません。今はまだ推測の域ですので」


 私は心の中で何かが引っかかった。

 何か、何かが引っかかる。

 何かモヤモヤする。




「殿下、それと別件でもう一つ報告することがあります」


「お伺いします」


「聖女アリサの追跡についてなのですが、実は西ではなく東へ逃亡したことが確認されました。現在デボートの街までの報告が届いております。その中で興味深い話がありまして」


 ああ、聖女アリサね、何度か話題に上がったけど彼女自身のことはすっかり忘れていたわ。

 たしか幼馴染と出奔したのよね、せいぜい捕まらない事を祈るわ。捕まれば二人とも火あぶりの刑だから。

 あ、でも確かヨシュアとカーシャのお気に入りだっけ。そうなると迂闊に刑の執行は出来ないわね。


「殿下?」


「失礼、聖女アリサの事を思い浮かべていました。続けて下さい」


「はい、その聖女アリサならびに罪人ユーシスなのですが、彼らは驚くことに流れ召喚勇者のハヤトなる者を撃破しました。その際罪人ユーシスは四肢を切断したとのことですが、聖女の奇跡により復活しております」


 流石聖女だけのことはあるわね。四肢切断の致命傷も治すだなんて・・・

 でも・・・なんだろう、何かが引っかかる。


「殿下、おかしいと思いませんか?」


「え?ええ、おかしいわね、たしかにおかしいわ、でも何がおかしいのかしら・・」


「なぜアリサは未だ聖女の力が使えるのでしょう?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・あ!」


「聖女は勇者以外と性交すればその力を失うはずです。しかし彼女は未だ聖女の力を有している・・・」


「そうよ、それだわ、私がひっかかっていたのは!どういうこと?私はてっきり聖女の力は失われ後は火あぶりを待つだけだと思っていたのに!?」


「可能性があるとすれば3つ」


「一つは罪人ユーシスが未だ聖女アリサと性交していない可能性」


 あの二人は深く愛し合っていると聞いてるわ。

 そんな二人が肌を合わさないなどと言うことがあるかしら・・・


「無いわね」


「私もそう思います。もう一つは罪人ユーシスが実は女性であった可能性」


「無いわ、流石にない」



「そして最後の可能性は・・・・」


 私も一つの結論に達してしまった。


「「罪人ユーシスは真正勇者だった(!?)」」


 そうよ、それだわ、それしか考えられない!

 なぜその可能性を思いつかなかったのだろう!


「私はほぼ間違いなく罪人ユーシスは勇者であると思います。カルナ局長のご意見はいかがでしょう?」


「私も罪人ユーシスは真正勇者で間違いないと思います。恐らくはまだ完全に勇者として覚醒していないのでしょうな」


「それでも二人で力を合わせば召喚勇者を倒すほどの力はあるのですね。これは・・」


「殿下、あの二人はユシュア殿やカーシャ殿と同じタイプなのではないでしょうか?聖女アリサは剣の腕前は達人レベルとの報告が上がってきております」


 あの二人と同じタイプの勇者と聖女・・・つまり戦に身を置く勇者と聖女?


 私の中の引っかかりがどんどん無くなって行く。


「エスカトロジー世界の者の事と言い、勇者ユーシスと聖女アリサの件といい、やはりバミア級の大異変の前触れなのでは・・状況がどんどん固められていく気がしてならないわ」


「私も同じ気持ちです。まさかとは思いますが・・・」


 もし罪人ユーシスが勇者なら今すぐ指名手配を取り下げねば。

 でもその為には勇者であることを証明しないと・・・


「局長、今の彼らを王都に戻しても大丈夫かしら?」


「勇者として証明できる確たる証拠や女神様の神託があれば大丈夫でしょうが、無ければ難しいでしょうな。今から法の整備をするにしても時間がかかりすぎます」


「こんな時こそお父様の力で・・・いえダメね、この前大失態を犯したというのに、法を無視したゴリ押しすれば、侯爵派が間違いなく突いてくるわ・・・」


「とりあえず異議申し立ての上、指名手配の一時停止処分を下してはどうでしょうか?今の所はそれが精一杯です」


 それで時間を稼ぐしかないわね。

 その間に彼らを迎え入れる準備を整えておきましょう。

 あと、今以上に人員を増やして彼らを監視するようにしないと・・



「殿下、最後になりますが悪い報告が二つあります」


「・・・伺います」


「今朝届いた情報ですが、テラリューム教団の聖堂騎士団が、勇者ユーシスと聖女アリサの抹殺のため出兵したとのことです。今後はほとんど全てのテラリューム教団が彼らの敵となることでしょう」


 くらっ・・


 最近卒倒しそうになることが多いような・・

 それにしてもまた聖堂騎士団!?

 あの紛い物の聖堂騎士はどれだけ私に嫌がらせをすれば気が済むのか!?

 いっそ、うちの騎士団に討伐命令を・・・

 いや、落ち着いて、まずはあの二人を保護することを考えねば・・・


「それともう一つの悪い報告ですが、先日召喚者のうち数名が聖女アリサ強奪のため追跡を開始したそうです」


「なんですって!?」


 自業自得・因果応報、そんな熟語が私の頭の中をグルグルまわる。

 聖堂騎士は兎に角として、召喚者達は並の者では太刀打ちできない。

 誰か腕の立つ者を送って保護しないと・・


「アビィ、今日と明日の第三独立小隊の活動はどうなっているかしら?」


「カーシャ隊長以下隊員達はヨシュア副隊長を除いて現在オリヨールから帰還中のはずです。帰還は明日の夕方頃ですね」


「ヨシュア殿は?」


「現在聖女ミルーシャ様の心のケアで屋敷におります。外出は無理でしょうね」


「じゃあカーシャ隊長には、明後日の小西道夫との会談の時に同席して頂きましょう。手続き頼める?」


「御意」


「殿下、私は秘密裡に特別組織を作り、わが国に潜入した工作員や偽ガバナス宰相の問題に当たりたいと思います。何か分かりましたら逐次報告致します」


「わかりました、宜しくお願いします。私は勇者ユーシスと聖女アリサの保護の方を考えておきます。今日はわざわざ御出で頂きありがとうございました」


「それでは」


 カルナ局長は挨拶したのち退室した。




 緊張が解け、私は椅子の背もたれに体重を預け、天井を仰いだ。


「アビィ、紅茶入れて~、砂糖をイッパイ入れた甘いのをジョッキで、もう私、頭がウニになりそう・・」


「はいはい殿下、丁度いい時間だし、皆さんでお茶にしましょうか」


アビゲイルは秘書や侍女には任せず直々に紅茶を入れて回った。


「ねえアビィ、最近たかだか王女の私が、ここまで馬車馬の如く頑張る事に疑問を感じているのだけど・・・」


「今更それは言いっこ無しですよ。馬車馬の如く頑張ってこその殿下じゃないですか」


「ベティ、私の髪、薄くなってない?最近苦労続きのせいか毛が少なくなったような・・」


「ご安心して下さい。植え付け本数は変わっていませんよ。未来視でも当分は剥げません。その先は知りませんが」


「ステンラぁ、時々仕事を全部うっちゃらかして、たまには恋にうつつを抜かしたくなる時があるの・・」


「面白いジョークですね、殿下」



「あんたらみんな嫌い・・・はぁ、女王陛下(お母さま)早く帰ってこないかな・・」



 私はベティが入れてくれたジョッキいっぱいの紅茶を一気飲みして公務に戻った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【追放した側のファンタジー~英雄ケンツの復活譚】☆イケメンポーターを追放したら、なぜかド底辺に大転落したんだが!?
ティラム逃亡記第七章と同一世界・同一時間軸の裏面的姉妹作品。
第一章ではサブヒロインにアリサが登場・活躍します!
ティラム逃亡記の休稿日はこちらをお楽しみください!

【追放した側のファンタジー・英雄ケンツの復活譚】
イケメンポーターを追放したら、なぜかド底辺に大転落したんだが!?
https://ncode.syosetu.com/n5138hd/



小説家になろう 勝手にランキング
♡♡♡♡♡♡♡♡
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。