71.ユーシスvsクローディア
リヴニの街 冒険者ギルド 2階広間
私とユーシス、クローディアさん、あとギルドマスターと野次馬達が冒険者ギルド2階広間に集まった。
「ギルド長さん、悪いわね、広間お借りして」
「いやいや、ちゃんと使用料払って貰ってるから構わんよ。俺達にもいい余興になるしな」
クローディアさんとギルド長は結構仲が良さそうで、広間のレンタルも二つ返事で許可してくれた。
できれば許可もらえずに試合せず、モデルの件も無しになって欲しかったのだけど仕方がない。
「さてと、どちらから先に相手して頂けるのかしら?」
「え?ユーシスだけじゃないんですか?」
「私、二人って言ったよね?」
てっきりユーシスだけが相手をするものと思っていた私は面食らってしまった。
その様子を見て、クローディアさんはニコニコしながら「そんな訳ないでしょう」と舌なめずりする。
まずい、この人けっこうな戦闘狂かもしれない。
「じゃあ俺からお願いします」
ユーシスが準備運動しながら名乗り出た。
「ではこれより、魔法剣士クローディア対魔法騎士ユーシスの試合を行う。それでは始め!」
「おい、クローディアに10000ルブル賭けるぜ!」
「俺もクローディアに5000ルブルだ!」
「大穴狙いでユーシスに10000ルブル!」
野次馬達が勝手に賭けを始めている。
ギルド長さん、いいんですか?
「俺もクローディアに30000ルブルだ!」
「あ、じゃあ私も私に30000ルブルでお願い」
そう言って賭けに参加するギルド長とクローディアさん。
うん、いらぬ心配だったようだ。
「デフォイメント!」
ユーシスが異空間に収納されていた防具を纏う。
“おお!?”と周囲がどよめく。
「クローディアさん、1級冒険者を相手にするつもりで掛からないと怪我しますよ」
「あなた、その鎧!へえ、言うじゃない。そっちも私を2級冒険者と侮っていたら痛い目みるわよ?」
「おいなんだアイツ!」
「クローディアみたいに鎧が突然!?」
「1級冒険者だと!?」
「おい、ユーシスに20000ルブルだ!」
「私もユーシスに30000ルブル!」
「さあ、賭けも出そろったみたいだし、そろそろ行きますよ!身体強化1.75倍!」
ユーシスの身体能力が向上していく!
しかも今までよりさらに微妙にアップした倍数!
「縮地!」
まるで瞬間移動したかのように、ユーシスがクローディアさんの真横から斬撃!
ユーシスが余裕で勝ったと思った瞬間、
「縮地♡」
そう呟いたかと思うと彼女の姿が消え、ユーシスの剣は何もない空を切り、剣速による衝撃波が空しく防御結界の張られた壁に“バーン”とぶつかり消滅する。
「な!?」
何が起こったのか解らず、とりあえずバックステップで下がるユーシス。
「ユーシスくーん、女だからって舐めてかかっちゃダメだよ♪」
突然ユーシスの耳元でクローディアさんが囁くように注意する。
「うわっ!」
「そーれ、魔法剣 ウインドセイバー!」
ビュウ!ヒュゴー!
剣から発生した鋭い風がユーシスを襲う!
「ぬ、ぐう!」
「ユーシス君、ほら本気で行こう! 魔法剣サンダーブレイク!」
ガラガラガラ!ドシャーン!
魔法剣に乗せた雷が放たれる!
「ぎゃ!ぐぐぐ!」
ユーシスはクローディアさんに放浪されるばかりでマトモに打ち返せない。
明らかに狼狽し冷静さを欠いている。
あれくらいなら何とか対応できるはずなのに。
ユーシスって相手が女性だと、あんなにダメダメになるんだ。
「ユーシス!何やってるの!躱せないほどの技じゃないでしょう!?」
ユーシスの不甲斐なさに思わず激を飛ばしてしまう。
“おや?“という表情でクローディアさんがチラリと見た。
(ふーん、やはりユーシス君の実力は全然出てないんだ、それなら)
「ユーシス君、ちょっとガッカリかな。弱すぎて君の絵のモデルなんてする気になれないよ」
「え、そんな・・」
「悪いけどモデルの話は無かったことにしてね」
「ま、待って!本気でするから!」
見てられない・・・
まるで女にフられて追いすがる惨めな男みたいだ。
でもモデルの話が流れるのならオッケーかな。
「ユーシス、もう諦めよ?これ以上迷惑かけちゃダメ・・・」
「そう言う事なら今度こそガンガン来て頂戴♡」
何故かこっち向いてニヤリと微笑を浮かべるクローディアさん。
このヒト、わざと話被せてきた!?
さっき激を飛ばしたのは失敗だったか。
「アリサ、クローディアさんに何かあった時の回復頼むぞ!」
ユーシスが腹を括った。
「むん!」
掛け声と共に“ゴウ!”と炎が身体からあふれ出す。
野次馬達が“おおお!?”とまたドヨメキが沸き上がる。
「あらら、これは期待できそう」
クローディアさんが嬉しそうにほくそ笑む。
全然ビビりもしない。
「炎獄斬!」
剣に炎を乗せ斬撃と獄炎がクローディアさんを襲う!
「ほい」
その獄炎をいともアッサリ剣の一振りで掻き消し、続く斬撃もスラリと躱す。
それも想定のうちとばかりに、そのまま息をつく間の無い連撃を繰り出す。
だけど本気のユーシスの攻撃がまるで通らない。
それでもギャラリーにはユーシスが圧倒的に押してるように見えているらしく、歓声がワッと起こる。
「凄い凄い!期待以上よ、ユーシス君!」
「そりゃどうも、でも全然嬉しくないんですけどね」
ゴウッ、ボウッ、カキン!ガキッ!
炎の轟音と剣と剣が部屋中に凄い音で響く。
「だけど、まだ本気の全てを見せてないよね?見せてくれたら本当にアレも描いていいよ」
「アレ?」
ガキッ!ギリリリリリ・・
ユーシスとクローディアさんの剣が交わり鍔迫り合いのまま膠着!
「そりゃもちろん・・」
「 ! 」
クローディアさんが小声で何か話したとたん、ユーシスが突然バックステップでクローディアとの間合いを取った。
身体を纏う炎が“ゴオオ”と勢いを増し明らかに雰囲気が変わった。
「ふふふ、ユーシス君やっぱりスケベだね♪」
「炎獄流星斬!(旧名・魔王彗星斬)」
ユーシス最大の技、炎獄流星斬!
炎を乗せた斬撃がソニックブームを発生させ、莫大な熱エネルギーと共にクローディアを襲う!
「ちょっとユーシス!こんな所でその技を使うなんて!!」
私の脳裏に防護結界を打ち壊し、破壊され尽くされた広間の様子が浮かぶ。
「チェンジ氷の魔剣、ブリザードスラッシュ!」
クローディアさんの剣が氷属性に変わり、猛吹雪の冷撃が炎獄流星斬の放ったソニックブームと莫大な熱エネルギーを相殺した!
「ふぅ、今のはちょっと凄かったかな。身体強化をもっと掛けていたらマジになってたかも」
「参りました、降参です」
ここでユーシスがギブアップ。
そりゃそうね、もう打つ手が無いもの。
「勝者クローディア!」
結局ユーシスの技は何一つクローディアさんには通らなかった。
帝国上がりの魔法剣士、恐るべし・・・




