69.モデルのお願い
「え、クローディアさん、家を買ったんですか!?」
私達はお茶を飲みながらまだギルド内で雑談していた。
クローディアさんは東スラヴ帝国出身の元軍属らしく、あまりの待遇の悪さに軍を抜け、祖国に見切りをつけてスラヴ王国のこの街に流れてきたそうだ。
そして冒険者としてバリバリ活躍し、お金をガッポリ稼いで中古物件ながら2階建て住宅を購入したとか。
「まあね、私もいい加減に腰を落ち着けたいから。安宿暮らしは長く続けるのはちょっとね・・。」
ああ、それは分かる。
私もどこかに腰を落ち着けてまったりと過ごしたい。
そしていつかは身ごもって子育てとかしたいし・・
何より泊まる宿によっては隣の部屋の声や音が丸聞こえだし。
たまに女の人の嬌声とか聞こえたりするし・・・
もしかしたら自分の声もとなりに丸聞こえかもしれないし・・・
「そう言えばクローディアさんの付けているブレストアーマーとかデザイン変わってますね。それも東スラヴ帝国のモノなんですか?」
「ああ、これ?元々軍の保管庫にあったモノなんだけど、新品のまま何年も放置してあったからかっぱらってやったの」
「「 え” 」」
「なんでも時空魔法が付与されててね、いろいろ便利なのよ、こんな風にね・・ストレージ!」
ストレージと呟いた瞬間、クローディアさんのブレストアーマーを始め、身に着けていた防具が異空間に消えた。
代わってブレストアーマーに隠されていた強暴で巨大な双丘がブルンと現れる。
「ふぃー、たまには風を通さないと谷間と下乳がかぶれるわ」
そう言って両手で胸をユッサユッサして空気を送るクローディアさん。
”ふわっ”と甘い香りがした。
周囲の男性冒険者の目が一斉にクローディアさんの凶器に釘付けにされる。
中には両手を合わせて拝む人すらいた。
私は異空間収納される防具に驚いてユーシスに声を掛けた
「ユーシス、これって・・て、ユーシス?」
私達の防具と同じ・・と言いかけて反応の無いユーシスに気が付いた。
彼は顔を真っ赤にして俯き両足を閉じて固まっていた。
まあ、ガン見するよりマシだけど、その純情な反応はなんなのよ?
「あの、それってもしかして国宝級の品なのでは?」
「うふふ・・内緒♪」
そう笑いながら相変わらずユッサユッサと下乳に空気を送る。
「あのー、うちのユーシスが固まってますのでそろそろ防具を・・」
“え?“と言いながら固まったユーシスの様子を見てニンマリ笑うクローディアさん。
「ユーシスさん、案外スケベだね」
「いや、俺は見てないじゃないですか!あと“さん”じゃなくて“くん”でお願いします。」
「オッケー、ユーシス君。小心者のドスケベは、見たくても見ずに必死で耐えようとするんだよ?」
「う・・・」
ダメだ、ユーシスが思春期に入ったばかりの童貞みたいになってる・・
私は追い詰められるユーシスに助け船を出す。
「すみません、うちのユーシスをあまりイジメないでください。もうそろそろ泣きそうなんで・・」
「はいはい、じゃあデフォイメント!」
再び防具がクローディアさんを覆い、巨大な双丘も隠れた。
やはり私達と同じシリーズの防具のようだ。
クローディアさんの胸をガン見してた男たちが“チッ”と言って視線を外す。
「あのクローディアさん、良ければ一枚絵を描かせて貰ってもいいですか?モデルになって下さい!」
はぁ?
ユーシス、今なんと!?
「ユーシス、あなた何言っているの?クローディアさんに迷惑でしょ!」
しかしユーシスは折れない!
「でも、こんな絶世の美女なんて、きっともう出会えないよ。どうしても描きたいんだ!」
ユーシスに女性絡みでこんなに抵抗されたのは初めてだ。
なんだか嫌な予感がする。
「ダメ、絶対ダメ!無自覚のうちの何人の女性を餌食にしたと思ってるのよ!」
「餌食?いったい何を言ってるんだ?俺は破廉恥なことはしたことないぞ!」
「これだから無自覚は・・」
クローディアさんはポンと手を叩いた。
「ああー、女性がユーシス君の絵のモデルになると堕ちちゃう訳か、
プロの画家とモデルが禁断の恋に陥りやすいというナントカ症候群ってやつ・・」
「そ、そうなんです!それで私、このギルドの女性冒険者達から目の敵にされて・・だから!」
「いいよ」
「「え?」」
「だからいいよ。モデルになってあげる。なんならヌードでもいいわよ?」
ヌード!
何言ってんのこの人!?
「にゅにゅにゅ、にゅーどですとぉ!?」
「そんなのダメー!クローディアさん、今の流れでなんでOKするんですか!」
ほんと信じられない!しかもヌードとか!
は!もしかしてユーシスを誘惑する気なんじゃ・・
「大丈夫大丈夫、私は魅了耐性高いから、絵のモデルなったぐらいで堕ちはしないから」
「そうなんですか?・・でも」
水の女神アクアリウス様でさえ堕ちたんですが・・
「本当に大丈夫だって。私、召喚勇者の勇者の魅了ですら効かないくらい耐性あるから」
勇者の魅了!
まさかここであの忌まわしい名を聞くとは・・
「あの・・・東スラヴ帝国でも召喚勇者って無茶苦茶しているのですか?」
「こっちと比べて向こうの召喚勇者は数は少ないけど酷いものよ、気に入った異性はすぐ寝取るしね。しかも聖女とカップルを好んで狙うという・・」
ああ、召喚勇者はどこでも同じなんだ。
今まで何人の女性が犠牲になったのか・・
「まあモデルになるのは了承したわ。その代わりこちらもお願いがあるの」
「なんでしょう?」
「絵のモデルになる前に二人と試合がしてみたいわ。最低でも3級クラスの実力なんでしょ?」
クローディアさんは目を輝かせてクスクスと笑った。




