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67.断罪イベント パートII (断罪イベ)

 カツン・・ カツン・・


 カツン・・ カツン・・


 カツン・・ カツン・・



 もはや誰も動こうとはしなかった。いや、動けなかった。

 シンと静まった王の間をゆっくりと歩むヨシュアとカーシャの足音が、氷水の雫のように冷たく響く。



 カツン・・ カツン・・


 カツン・・ カツン・・


 カツン・・ カツン・・


 何をどうしているのか、王の間は僅かに身体を動かしたり、声をあげたりするだけで四肢が吹き飛ぶ異常事態に陥っていた。

 それでもヨシュアはカーシャからの最初の指令『絶対に殺すな!』をギリギリ守っていた。

 それ故これ程の惨状ながらも死亡者は未だ無し。

 これは相手に対して致命傷を避け、ひたすら四肢の破壊に徹したせいでもあるが、聖女カーシャが 出血死しない程度にちょくちょく広範囲回復(エリアヒール)を行使したおかげでもある。


 だが国王と王子、そして宰相だけは別だ。


 創造の女神テラリュームに弓を引きし愚か者よ!

 肉体はもちろん魂も霊子レベルで破壊し、完全に消滅する絶対の死を与えよう!

 ヨシュアは冷酷に役目を果たそうとする。


 カツン・・ カツン・・


 カツン・・ カツン・・


 カツン・・ カツン・・


・・・


「アドリアン、レイモンド、ガバナス、お前達を女神に弓引く逆賊として処刑する。最後に言い残す事があれば言うがいい」


 ヨシュアが抑揚のない声で冷たく言い放つ。


「た、たす・・むぐ!?」

 そう言いかけたアドリアン王の口をレイモンド王子が手で塞ぐ。

 何事かとレイモンドの視線の先を追えば、アクサナ王女が口元に指をやり首を左右に振っている。

 どうやら何も喋るなとの意味のようだ。


 そんな中でガバナス宰相が喋り出した。


「はて、何故に私まで逆賊呼ばわりされなければならないのでしょう?

私はテラリューム様の忠実なる僕でございます。

全てはアドリアン王とレイモンド王子に命令され渋々従っていただけでございます。

私に罪はございません。調べればすぐ分かることです」


「「 な!? 」」


 あまりに鮮やかなガバナス宰相の手のひら返しに絶句するアドリアン王とレイモンド王子。

 またしても池の鯉のように口をパクパクする



「そんなことより、何故逆賊の実行犯である召喚者共を生かしておくのです?早く処分した方が良いのでは?」


「「「「 な!? 」」」」


 今度は瀕死の召喚者達が絶句した。


「さあ、早く召喚者共を断罪(打ち首)するのです!テラリューム様の使徒の役目を果たしなさい!」


 なぜかヨシュアに命令するガバナス宰相!

 しかしその耳障りな命令口調に割って入る者がいた。



「いいえ、断罪されるのはあなた一人です、ガバナス宰相!」



 アクサナ王女の凛とした声が響いた。


 王の間全ての者がアクサナ王女を注目する。

 アクサナ王女はステンラ筆頭諜報員を引きつれてヨシュア・カーシャと玉座の間に割って入り、まずはヨシュアとカーシャに向く。


 スカートの裾を持ち一礼し話始める。


「ヨシュア様、カーシャ様、此度の不細工な振る舞いお詫び申し上げます。此度の事は王国内に巣くう“悪”を炙りだすために、どうしてもこのような事をせざる負えませんでした。どうかご理解頂けますよう宜しくお願いします」


 そう言いながらアクサナ王女はチラリとヨシュアの顔色を覗う。


 憮然とした顔のヨシュア。

 『そんな言い訳が理解できる訳ないだろ!』いう表情が読み取れる。

 しかし何か言おうとしたヨシュアの肩をカーシャが手を置き引き留めた。

 この瞬間、ヨシュアは自分を抜きに何かが進行中であることを理解した。

 当然ヨシュアは機嫌を損ねたが、追及はしなかった。

 カーシャはアクサナ王女に対し“コクリ”と一度だけ頷く。


 それを受けてホッと安心するアクサナ王女。

 続いて踵を返し玉座の前までツカツカと歩む。


「陛下、ならびに王子、ご苦労様でした。いつも通り威厳ある振る舞いにお戻り下さい。確証を得られましたので芝居はもうされなくても大丈夫です」


「か、確証?芝居?」


 一瞬何のことやら理解が追い付けず目をシパシパする二人。


「芝居はもうされなくても大丈夫です、いつも通り威厳ある振る舞いにお戻り下さい」


 ギロリと物凄い目力でアドリアン王とレイモンド王子にもう一度告げる。


 アクサナ王女の迫力に一瞬たじろぐも、自分が何をすべきか理解するアドリアン王。


「あ、うむ、ご苦労であった!報告せよ!」


 そんな茶番をヨシュアは白けた目で眺める。



「ガバナス宰相、今朝方からのあなたの発言・証言は全て嘘であることが確認されました。

5年前、ヨシュア様が召喚勇者達を瞬殺した件、あなたは誇張したモノだと王に言ったようですが、それらは事実であることが確認されました」


「・・・・」


「また3か月前に発生した女性聖騎士が召喚勇者の四肢を一瞬でバラバラにした件ですが、あなたはそんな報告は上がって来ていないと申されました。

そんな訳はないのです。なぜならあの報告書は私が作成して、私が直接あなたに上げたのですから」


「・・・・」


「さらに会議中に加藤弾と聖女アリサの件、あなたはカーシャ様が舌先三寸の嘘を付いたと申しましたが、事実であることを私は知っています。あの報告書は私も見ましたから」


「・・・・」


「さらには王の勅命による命令書の真贋の件、あなたは私が未熟なせいで見抜けなかったと申しましたが、そんな舌先三寸の嘘が通用するとでも?」


「お言葉ですがアクサナ殿下、それらは・・」


「黙りなさい、話はまだ途中です!」


 よく通る声でアクサナ王女はガバナス宰相の反論を封じる。

 そう、これらはガバナス宰相を断罪するにはまだ弱い。

 調査に行かせた部下のミスだの自分の勘違いだったのと言えば逃れられてしまう。



「ガバナス宰相、あなた襟章はどうしたのです?王宮内を出入りする者は絶対に付けなければいけない規則ですよね?」


「それは・・そう、今朝家を出る時に着けるのを忘れまして・・でもそれが何だと・・」


「では何故私の手元にあなたの襟章があるのでしょう?」


 そう言ってアクサナ王女は襟章を手につまみ、皆によく見えるよう高く上げた。


「!?」


「ステンラ、説明をお願い」


「はい殿下、この襟章は共同墓穴に遺棄されていた遺体が身に着けていたものです。

遺体は約2週間前に殺されたものと見られます。

またこの遺体の他にガバナス宰相婦人・ご子息・従者の御遺体が確認されました。

そしてこの襟章を付けていた遺体ですが・・・

・・・ガバナス宰相であることが確認されました!」


 ざわざわ・・

       ざわざわ・・


 王宮内にざわめきが沸き上がる。


 流暢なステンラ筆頭諜報員の説明が終わり、アクサナ王女はガバナス宰相を問い詰める。


「と、言う訳です。ガバナス宰相・・いえ、なんとお呼びすれば宜しいのかしら?

我が王国を混乱に陥れようとしたテロリスト?

それとも創造の女神テラリューム様の僕を騙る逆賊?

はたまた敵国の工作員?

いずれにせよあなたはもうお終いよ!」


 ビシ!っとガバナス宰相に指を刺すアクサナ王女。


「くっくっくっ・・キレ者の女王の不在時を狙って来てみれば、こいつはとんだ伏兵がいたものだ。アクサナ王女、まずアンタを真っ先に殺しておくべきだったよ。だが詰めが甘いな・・クローキン・・」



 遮蔽魔法(クローキング)で姿を隠そうとする謎の敵!

 だがその前に、


ロイヤルプロミネンス(王家の豪炎)!」


 アクサナ王女の「ロイヤルプロミネンス(王家の豪炎)」が先に火を噴いた。


 幾重もの超高音の豪炎が謎の男を襲う!


「ぎゃあああああああ!」


 全身に火傷を負いながらも位相をずらし姿を隠す謎の男。


「しまった!」


 アクサナ王女を始め周囲の者達がキョロキョロと探すが見つからない。


 そんな中、ヨシュアがツカツカと出てくる。


「この辺だろ」


 そう言って何もない空間をぶん殴った。


「ぶべぇ!」


 突然不細工な悲鳴と共に、黒焦げの謎の男がはっ倒された。


「どうしてわかったんです?」

「焼いた肉の臭いがした」

「・・・・」


 アクサナ王女の質問にヨシュアが素っ気なく答える。


「拘束して死なない程度に治療しなさい」

「了解」


 ステンラ筆頭諜報員が部下と共に謎の男を拘束し連行していった。


「詰めが甘いとか言って相手を過小評価するから痛い目に合うのよ」


 謎の男が王の間から連行されていくのを確認したのち、アクサナ王女は再びヨシュア・カーシャ、そして小西道夫に向き合う。


「ヨシュア様、カーシャ様、此度の件ですが、恥ずかしいことに先程の男に唆されて父上と兄上が乗せられてしまった言うのが本当の所です。

どうか逆賊のあの男を捕らえたことと、今後女神テラリューム様に対して絶対に弓を引かないということで、落とし所として頂けないでしょうか?」


 そう懇願するアクサナ王女に対して


「いや、普通に納得のいく話ではないんだが・・しかしまあ、先にカーシャには話を通していたんだろう?だったらいいよ、こちらも嫁さんの顔を立てないといけないし。納得のいく話ではないけどね」


「ありがとうございます。ご理解頂けたこと深く感謝致します。道夫様もありがとうございました」


「あ、いえ・・はい」


 少しキョドる道夫に対してヨシュアが不審に感じる。


「なに、もしかして道夫君も最初から知ってたとか?」


「すみません、知っていました」


「・・・・」


(もしかしてオレってハブられてない?)


 ヨシュアはこの日帰ってからメチャメチャ拗ねた。


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