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63.それぞれの思惑

 王宮 王の間(謁見の間) 午前9時50分


「カーシャさん、先ほどのアクサナ王女の話どう思われます?」

「どうと言われてもな、道夫君の方は皆には話したのか?」


「ええ、うちは話して置かないといざという時動けないでしょうから」

「そうか、こっちは誰にも話せなかったよ」


「ヨシュアさんにもですか?」

「ヨシュアだからこそだ。今回はあいつがブチ切れて聖竜達を呼ぶらしいからな」


「後で絶対なんか言われそうですね」

「ああ、言ってくるだろうなぁ・・あいつ拗ねるとご機嫌取るの大変なんだ」



 午前10時


 司会を兼ねるガバナス宰相が会議のアナウンスをかける。


「皆様ご苦労様です。定刻の時間となりましたので会議の方を始めたいと思います。まずはアドリアン国王陛下並びにレイモンド第一王子殿下とアクサナ第二王女の御入場です」


 扉が開きアドリアン国王とレイモンド第一王子、アクサナ第二王女が入場し、各自姿勢を正し三人を見守った。


 アドリアン王が壇上の玉座に座り、レイモンド王子は国王の右隣りに立つ。

 国王の左隣はガバナス宰相が立ち、アクサナ王女は壇下の少し離れた場所に立ち、アビゲイルとベティと共に王の間全体を監視するように見渡す。


「まず始めに国王陛下による開会のお言葉です」


「皆の者、早くから集まって頂き感謝する。国王のアドリアンである!・・」


 国王の挨拶も終わり、続いて各召喚勇者パーティーの紹介に移る。



「ステンラはまだかしら・・・」


 アクサナは胃をキリキリさせながらステンラの報告を待つ。

 その一方で最低限国を失わないために腹案も考える。

(最低でも国体を護持できる程度に召喚勇者を残存させねば)

 アクサナは予言された未来以外の可能性を探る。


 たしかに未来は変わりつつあった。

 ただしそれは4つの未来視のうち2つの未来視は消え、聖竜が現れる2つの未来のみが残っていた。

 消滅か存続かの二者択一、選べるのはアクサナただ一人。




 その頃ステンラは・・


「宰相の執務室と私室には何もありません!」

「王宮周りの植え込み等潰さに探しましたが何も見つかりません!」

「ガバナス宰相邸に踏み込みましたが何もありませんでした。ですが、ガバナス宰相邸は全くの無人でありました!」

「!? 奥様と長男、それに侍女や執事もいないのか?」

「はい、誰一人としておりません」


(まずいな、王都外・・ヴォルカ川河川敷や東の森だと時間内での発見は困難だ・・しかし御家族まで一緒となると王都の外に出るのはリスクが高いはず・・)


 ステンラは必死で頭をフル回転させる。


(公園か墓地・・か・・?)


「隊を2つに分ける、おまえ達はガバナス邸近くの西の公園内を探せ!残りの者は私と一緒に墓地へ向かう!」


「了解!」




 その頃カーシャと道夫は・・


「カーシャさん気づきましたか?」

「ああ、召喚者共はさっきからずっと我々の隊を注視しているな、どうやらアクサナ王女の言った事は本当のようだ」


「今の所、王女の周りに動きがありませんね・・」

「それならそれで死なない程度に叩きのめすだけだ」




 その頃の召喚勇者達


「ミルーシャ、援護よろしく頼むぜ!」

「はい、カオス様♡」


「しかし本当にあの者達が重罪人なのか?」

「菫さん、国王の命令ですので真偽なんてどーでもいいことですよ」


「あの時の四肢をぶった切られた恨み、払わさせてやるぜ」

「今度こそ女聖騎士は肉奴隷にしてくれる!」

「今朝はよくもやってくれたな・・たっぷり虐めてやる!」




 その頃のユーコとフランソワーズ


「なんか背筋がゾクゾクする??」

「私もよ?もしかして私達って注目されてない?」

「「いやぁ、なんか照れるなぁ」」




 その頃のヨシュア


「なんとしてもミルーシャを・・・」




 その頃の国王と第一王子


「たかだか騎士隊の癖に毎度毎度難癖つけおって・・」

「父上、それも今日までのことです。明日からは・・」

「「むふふふ・・」」




 その頃のユーシス

 リヴニの街 冒険者ギルドで客の似顔絵中


「お姉さん、動かないでください」

「ごめんね~、で、今どの辺りを描いてるの?」

「左の頬から耳まわりですよ」

「そっかぁ、頬から耳かぁ・・(ブルル)」




 その頃の祐樹と朱里

 シドの街近くの河川敷


「パンの耳をこんなにたくさん安く買えたよ!」

「やったな!これで3日は食い繋げれる!」




 その頃の???と???

 某神社境内


「はぁー!必殺尖神突(せんしんとつ)!」

「なんの!多重結界!」


 ガキン!キュイイン!






 再び、その頃のステンラ達は・・

 墓地に向かったステンラは共用墓穴を重点的に調査した。

 この世界では、都市部では王族や貴族以外の者は自墓など持てるはずもなく、死者の埋葬は大きな縦穴を掘り、そこに死者を弔い、上から土を被せ、その上にまた違うものを弔い段重ねしていた。

 そして穴が一杯になれば上に慰霊碑を建て共用墓地とした。

 もちろん土地に困らない田舎では、庶民でも墓を持つことは出来たのだが、王都では叶わなかった。


「ステンラ様、見つけました!」

「出たか!」

「はい、間違いありません。ガバナス宰相です」


 死臭漂う共用墓穴で見つけたものは、変わり果てた姿のガバナス宰相とその家族・従者の亡骸だった。


「至急憲兵隊の死体検視官を呼べ!、私は王宮に戻る!」


 ステンラはガバナス宰相の遺体の服に付いていた宰相の襟章を取ると、王宮に急ぎ向かった。


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