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62.証拠とタイミング

リヴニの街 冒険者ギルド



「あんたユーシスの女なんだろ?ちょっと顔貸してくれない?」


 突然背後からドスの聞いた女性の声がして、振り向くと3人の女性冒険者が立っていた。

 見た目から判断するに、剣士・魔術師・神官と言ったところだろうか?


「えっと、どちら様?」


「いいから黙ってついてきな」


 威圧的な態度で命令され私は断った。

 しかし相手は当然折れない。


「そう言うのなら少々暴れる事になるけどいいのかい?」

「そうなりゃ一蓮托生当分ギルドは出禁だね。この雨の中放り出されるけどいいの?」

「アタイ達は地元だから平気だけど、アンタは違うんだろ?どうする?」


 はぁ、面倒くさい。これもユーシス絡みなんだろうなぁ・・

 この手の輩はこれで3組目だ。


「わかりました、行きます。裏の倉庫ですか?」


「お、おう。よくわかったな」


「そりゃ三回目だし」


「「「 ? 」」」


 私と三人の女性冒険者はギルドを出て裏の倉庫に移動する。


 倉庫に着くや否や魔術師ぽい女に背中を小突かれた。


「きゃっ、乱暴にしないで下さい」


「“きゃっ“だってさ、かわい子ぶりってんじゃないよ」


「まあまあ、私は剣士のキャラ、そっちの神官はリディ、あと魔術師のバイカだ、全員3級冒険者だよ」


「はぁ・・・」


「早速だけど、あんたに決定事項を伝えたいんだけど」


「決定事項?」


 相談やお願いでなく決定事項?


「ユーシスをうちらのパーティーに入れるから、アンタはユーシスと別れる事。これ決定事項だから」


 は?・・・・


 一瞬思考が停止した。

 いやいやいや、何が決定事項なのよ?


「じゃ、そういう事で、アンタはさっさとギルドから消えな、見かけたらタダじゃおかないよ」


「そんなこと言われて“はい、わかりました”と言うとでも?」


「ぷっ・・」

「くくく・・」

「ははは!」


「何がおかしいの?」


「だってアンタ見た所15.16歳の駆け出し冒険者だろ?3級冒険者三人相手に勝負になると思ってんの?」


「年齢や級は関係ないでしょ?とにかく、そんな話は受け入れらません」


「あーそ、せっかく穏便に済ましてやろうってのにね」

「お嬢ちゃん、相手みて話した方がいいよ?もう遅いけどね」

「痛めつけてから娼館に売り飛ばしてやるから、客に抱かれながら後悔しな」


 ニヤニヤしながら剣を抜くキャラ、リディとバイカは手に魔力を溜める。


「オラ、泣き叫べ!」


 キャラが一歩足を踏み込み、剣を振り回し威嚇する。


 私はベタな展開にウンザリしながら応戦する。


鋳薔薇の牢(プリズンローズ)


 一瞬にして彼女達を鋳薔薇の檻で囲う。


「「「 な!? 」」」


中級雷撃魔法(ギガボルト)


 追い打ちで彼女達に雷が落ちる。


「うっぎゃああああああ!」

「るっきゃああああああ!」

「ぎっぼぉおおおおおお!」


 “ぶしゅううううう“


 三人は鋳薔薇の檻の中で感電して気を失った。


「もう二度とちょっかい掛けないでね?」


 そう言いギルドに戻ろうとすると


 “パチパチパチ”


 誰かが拍手した。


「誰?」


「いやぁ、お見事。実に見事な手際ね」


 拍手した方を見るとそこには銀髪長身の美しい女性がいた。






 王都 第二王女執務室



 (わたくし)アクサナ第二王女が国王・第一王子・宰相(三バカ)の様子を探り戻るころ、ステンラが第一報を報告に来た。


「殿下、とりあえず現在まで判明している事を纏めておきました。あと使えそうな召喚勇者ですが、すでにほとんどが国王達の支配下にあります。ただ洗脳下にない小西道夫達はその限りではありませんが、彼らはヨシュア達と通じている節があり、迂闊な接触は危険かもしれません。では引き続き調査に行ってきます」


「ああ、ちょっと待ちなさい。あの宰相のことですが私の見た所では・・のようです」


「さすが殿下、お気づきになられましたか!」


「ああ、そちらでも掴んだのね。それなら・・・・・は、何処かに隠してある可能性が高いわね」


「見つけることが出来ればこれ以上ない証拠ですね」


「ステンラ、いくら人を使っても構わないから絶対に見つけて下さい!」


「御意」



 私はステンラの持ってきた情報に目を通した。


 宰相はこの1週間で非公式でのアドレア連邦へのやり取りの痕跡が3件もあった。

 だが、これを持って宰相がアドレア連邦のスパイかと決めつけるには早計だ。

 敵はアドレア連邦と思わせ、戦力を南方へ集めたところで東スラヴ帝国から奇襲させるための欺瞞である可能性もある。

 なぜなら少し調べただけでポロポロ出てくるのはあからさますぎる。

 ガバナス宰相自身、身バレ覚悟の捨て駒なのかもしれない。


「状況的に考えると東スラヴ帝国一択ね」


 アドレア連邦が王国に対し本格的に侵攻するには時期尚早だ。

 彼らが動けばその南方のチャイ帝国が戦力の手薄になった連邦を見逃すわけがない。

 それに比べ、東スラヴ帝国は戦力を十分に投入できるはず。

 帝国の仮想敵国は王国だけなのだから。



挿絵(By みてみん)



「でも今欲しいのは不確かな想像ではなく確実な証拠、そして証拠を切るタイミングね」


 “ふぅ・・”


 おそらく確実な証拠を持って適切なタイミングで宰相を断罪すれば3つの最悪の未来を回避できるはず。

 でもどのタイミングなのか。

 ヨシュアとカーシャに今の内に企みを教えて保険とするべきか。でもそれで正しい未来へ繋がるのだろうか。


 ベティはたしかこう言った。


『最後の未来はヨシュア殿が激怒し聖竜が飛来するものの、ほとんど損害を与えずに引き上げます。翌日から王国はなんら変わらず平常運転です』


「ユシュアが激怒?・・聖竜?・・」


 あの聖竜は女神テラリュームの敵と認識されない限り現れないはず。

 ヨシュア達・・いえ、ヨシュアは何か琴線に触れることがあって激怒し、私達を女神の敵と認識した可能性が高い、それで聖竜が来た。

 そして本格的に蹂躙が始まる前に私が何か行動を起こし問題解決したんだわ・・

 早くてもダメ、遅くてもダメ、その僅かなタイミングしか考えられない。


「なんてアクロバティックなことやらせるのよ、もう!」




「殿下、宜しいですか?」

「なに?ベティ」


「その、最良の未来を勝ち取るためのタイミングが見えましたのでご報告を。必ずヨシュア殿が聖竜を呼んだ後に動いて下さい。早くても遅くてもダメでございますので御慎重に・・」


 もう少し早く言ってよー!

 無駄に頭を疲れさせちゃったじゃないの!


「ベティ、悪いけど砂糖タップリ入れた紅茶をお願い、糖分の補給が必要だわ。あとカーシャ隊長と小西道夫を誰かに言って呼んで来て頂戴」


「はい? はぁ、わかりました」



「ねえアビィ?」


「なんでございましょう?」


「あなたの方は何か見えないの?予言を実行する導き手なんでしょう?」


「殿下、私はベティの破滅の予言を成就させるための[破滅の導き手]ですよ?王国を確実に破滅させる手順は分かりますが、救う手順は全く視えません」


「つ、つかえない・・・」


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[一言] 「つ、つかえない・・・」 いやいや、確実にやっちゃいけない道が 一本見えるだけでもありがたいと思わないと。
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