59.豊穣の聖女ミルーシャ救出プラン
王都西地区高級住宅街、小西道夫邸
「ヨシュアさん、ちょっといいですか?」
女忍者の巽麗子がヨシュアに伺う。
「今の王国の召喚勇者は私達以前の組が6人、私達の年代が8人、計14人ですけど、真正勇者はヨシュア様を含めて何人いるのですか?」
「王国内には俺一人だけだな、非公式な分も合わせれば二人だが」
「少ないのですね、非公式とは?」
「君たちを信用するから言うが、アリサの想い人のユーシスだが、あいつは覚醒前の勇者であることが出奔直前に判明した」
「「「「え!?」」」」
「あのユーシス君がなぁ・・」
「やっぱりヨシュアさん並に強いんですか?」
「いや、今のアイツはソコソコ強い程度かな」
「今なら道夫君の方が数段強いと思うよ」
“ほほーう“
女性陣の視線がミッチーに集中する。
「実際君達と手合わせしたウチのユーコとフランが言っていたから間違いないよ、あと君達のことも褒めていたから」
“ほほーう“
女性陣が顎に手をやりコクコクと頷く。
「あ・・・」
道夫が小さく声をあげた。
「ああ・・」
道夫の視線を追った真美も呻いた。
「どうかしたか?」
「今、ミルーシャさんが窓から見えたのでつい・・」
「ミルーシャ?聖女ミルーシャのことか?」
「なんでこんな所にミルーシャが・・?」
意外そうな顔をするヨシュアとカーシャ。
その様子に道夫達が怪訝な顔をする。
「「「「 え? 」」」」
「「 うん? 」」
「まさか、ご存じないのですか!?」
「何のことだ?」
「豊穣の聖女ミルーシャは召喚勇者田中炎皇斗の手に堕ちました。もう4か月以上前になります」
「なんだと!?」
「君達、なぜそれを早く教えてくれなかったんだ!?」
「え?だって王宮に出入りするものは皆知っているものとばかり・・実際皆知っていましたし」
「あんたら、それを知っていながら何もしなかったのかい!?」
カーシャが憤怒の目で道夫達を睨みつける!
「待って下さい、ミッチーは田中炎皇斗にちゃんと掛け合いました!その上でフルボッコにされたんです・・」
「私達、実はミルーシャさんとは聖女になる前から知り合いなんです。だから何とかしたかったのですが、力が及びませんでした」
「私達と再び会った時には勇者の魅了を重ね掛けされていて、すでにあの男の情婦になっていました・・しかも悪いことにミルーシャさんの想い人はすでにこの世にいません」
真美、真奈美、麗子が必死に訴えかける。
「ヨシュアさん、カーシャさん、僕達が再会した時すでにミルーシャさんは勇者の魅了を掛けられてかなりの時間が経っていた。仮に勇者の魅了を強制解除すればどうなるか、あなた達なら分るはずです」
「ぐぐ・・」
「聖堂騎士どもめ、大見得きっておきながら結果はこれか・・」
ミルーシャが聖女として神託を受けた時、すぐに神殿から聖堂騎士団が派遣され、秘密裡に移動させられ軟禁した。
しかしわずか一週間後に田中炎皇斗らによって強奪され魅了下に置かれていた。
「大声出してすまなかったな」
「私もすまん、感情的になりすぎた」
二人はやり場のない怒りを抑え込みながら道夫達に謝罪した。
「だが知ってしまった以上は何とかしないとな」
ヨシュアは頭を切り替え冷静にミルーシャ救出を考え始める。
「田中炎皇斗、そして王宮の奴ら……いや、アドリアン王め、私達にだけ隠し通すとはいい度胸だ。その喧嘩、買ってやろうじゃないか」
一方カーシャは完全にブチ切れモードに入っている。
「勇者の魅了を容認する輩はこの私が全て殲滅する!」
カーシャの怒りがそのまま雷力に変換され、部屋の空気や調度品が強い静電気が帯び始め“ジジジジジ”と不気味な音を奏でる。
“ピシ!パシ!”部屋のあちこちで放電による閃光が走る。
「「「ひいいいいいい!」」」
「ちょ、カーシャさん!?」
道夫パーティー全員が狼狽し怯える。
「落ち着けカーシャ、道夫君達に迷惑が掛かるだろ」
ヨシュアがカーシャの腕を掴み静止させる。
「あ?・・ああ、済まない、また感情が高ぶってしまった、はは・・」
「「「「(この人こわい)」」」」
「でも実際どうやって救出するの?単に奪還するだけって訳には行かないよね?」
「うん、救出した上で勇者の魅了を解き、その上で発狂させないように手を打つ・・・」
「無理ゲーにも程がある、せめて想い人さんが生きていれば・・」
真美・真奈美・麗子は考えるがお手上げ状態だ。
「そう言えばミルーシャの想い人の死因はなんだ?田中炎皇斗に殺されたのか?」
「ヨシュアさん、間接的には田中炎皇斗が殺したことになります。しかし直接殺したのは魅了下に置かれたミルーシャさん本人です」
「なんてことだ・・」
「私と同じとか・・なんでこう・・クソ!」
あまりにも自分達と被る内容にヨシュアとカーシャは愕然とする。
もうこれは救出不可能ではないのか・・そんな思考が二人の頭を支配しつつあった時、
「今思いついたのですが、救出後に彼女を発狂させずに保護するだけなら可能かもしれません」
完全に積んだと思われた案件、それに対する策が道夫にはあるらしい。
「本当か?」
「はい、ただしこちらも代償を払わねばなりませんが・・」
道夫は説明を始める。
「「「「「 そんな方法が!? 」」」」」
皆驚きその後、ヨシュアと道夫に女性陣の注目が集まる。
「無理!無理!無理!無理!無理!無理!ミッチーには絶対無理だって!」
真美が激しく狼狽して道夫に止めるよう懇願する。
「だけど、他に方法が思いつかないよ、それにミルーシャさんを助けたいんだ」
「なんでこんな時だけヘタらないのよ、バカミッチー!」
「ヨシュア、その、私は構わない・・その方法しかないのならミルーシャを救ってやってくれないか?」
「少し考えさせてくれ、それに道夫君とも相談しないと・・・」
「ちょっと待って!そんなの絶対間違ってる!根本的な解決にはならない上に、下手したらミッチーもヨシュアさんも、それにカーシャさんも私も、いつか心が壊れちゃう!分かってんの!?」
真美が気も狂わんばかりに反対する。
彼女は道夫にそんな業を背負わせたくは無かった。
「真美、そんなに言うなら代案は何かあるの?」
「無いわよ、でもそんな方法で推し進める前に、もっと他の方法を皆で考えてみてよ!」
「真美君の言う通りだ、他の方法も検討しよう」
そう言ってヨシュアが場を諫めた。
しかし道夫案以上のプランは誰も思いつかず、明日王国内全ての勇者パーティーが集まる王宮会議で道夫案を決行することになった。




