57. 東スラヴ帝国の胎動
スラヴ王国の隣国、東スラヴ帝国の軍事会議室。
現在、仮想敵国『スラヴ王国』に対する戦力差を議題に会議が進められていた。
「・・・というわけで、我が東スラヴ帝国とスラヴ王国の戦力差は開く一方でありまして、召喚者の増数をお願いしたく思います」
「現在、帝国の召喚勇者は7人に対して王国は14人と大きく差が開いており由々しき事態となっています」
「さらに王国には第三独立小隊、通称特命勇者チームというチート兵力が存在しており、その内訳は真正勇者×1 真正聖女×1 真正聖騎士×6となっており、このチームだけで一国を滅ぼすことも可能と見られます。幸いにして目下のところ第三独立小隊は戦争への参加は拒んでおるようですが・・」
「わが帝国の真正勇者と真正聖女はどうなっておる?」
「真正勇者エリッツと真正聖女クラリーナがおりますが、王国同様戦争への参加は拒んでおります」
「クラリーナだけか?他の真正聖女はどうした?」
「全て召喚勇者の手により壊されました」
「何と言う事だ・・」
「それでも召喚者を増やして対処するより方法は無いのでは・・」
「しかし知っての通り召喚者の多くは素行が悪く、特に勇者クラスは女を攫っては魅了しハーレムを作ろうとする習性がある。これ以上増やすのは国民に対して悪影響を及ぼすのは必至。今でさえ7人の召喚勇者達に四苦八苦しておるのだ」
「召喚者の質を高めてはどうか?アース世界ではなくリアース世界からの召喚者なら・・・」
「たしかにリアース世界からの召喚者の場合、能力は桁違いに高くなるが、歴史上ただの一度も懐柔できたことはない。飼い慣らせないのなら意味が無い上に、下手すれば帝国にとって脅威となるぞ」
「飼い慣らさなくても帝国領内に留まらせておけば王国に対して抑止力になろう。一度試してみても良いのではないか?」
「帝国魔術師団召喚部のブリジット・ライカーです。よろしいでしょうか?」
「かまわぬ、申せ」
「現在リアース世界からの召喚は、何かの干渉により成功率が著しく落ちております。召喚成功率は恐らく3%もありません。対してアース世界からの召喚成功率は20%を超えております。
たしかにリアース世界の者を召喚し懐柔できれば、世界は我が帝国に堕ちたも同然ではありますが、1回に使う魔石の消費量のことを考えますと、手堅くアース世界から拉致召喚すべきかと」
「3%か、33回に一度の成功率・・・下手すれば国庫が干上がってしまうな」
「それでもするべきでは?成功すればアース世界の下劣な者どもと決別できます」
「エリザヴェータ皇女殿下は簡単におっしゃいますが、下手をすれば帝国が経済破綻しますぞ!」
「それでもアース世界の者に頼るよりは……」
「リンギス大帝陛下、いかがされますか?」
「一度だけリアース世界で試してみよう。それ以降は今まで通りアース世界の者を召喚することとする。ブリジットよ、いつ頃から始められるか?」
「成功率を高めるためハイクラスの時空召喚士・時空魔術師を選び直さなければなりません。1、2ヶ月ほどお時間を頂戴したく願います」
「よかろう、手順はそちに任せる。エリザヴェータよ、後は頼むぞ」
「御意」「かしこまりました」
「それでは次の議題に移ります。隣接する無政府地帯の魔物の件ですが・・」
(愚か者ども、1回召喚できれば十分よ)
ブリジット・ライカーは密かにほくそ笑んだ。




