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48.冒険者講習と召喚無能者の行方

 午後1時。

 冒険者ギルド小会議室で講習が始まった。


 内容はまあ、冒険者の心得・規約・仕組み・一般常識などなど。


 特筆することは特にないが、


 【1年間冒険者の活動をしないとライセンスが消失】

 【2名以上でパーティー登録可能】

 【どこの支部のクエストでも等級に見合うなら受けることが可能】

 【ライセンスカードは無利子だがお金を預けることが出来る通帳機能付き】


 この4つくらいが重要なポイントだろう。



「最後に何かご質問はございませんか?」


 講師のミーメさんが意見を求める。


「装備品のアップデートは報告の義務はありますか?」


 ヤンマはオスカーから譲り受けたテクタイトのグラス剣とミスリルの防具に装備が変わっている。やはり気になるらしくミーメさんに尋ねる。


「特にしなくても大丈夫です。ただ昇級時には必要になる場合があります」


「5級から4級の昇級の場合は、試験だけでも可能ですか?実績はやはり必要ですか?」


「試験自体は受けれますが、現実的には実践を積まぬ者が受けても、実力的にまず通りません」


「例えば武器と防具をアップデートして強さを手に入れた場合でも、試験だけで昇級するのは現実的ではありませんか?」


「ケースバイケースとしか言いようがありません。自信がお有りでしたらどうぞ」


 ヤンマは少し考えたが、


「ありがとうございました。実践を積んでから臨みたいと思います」


 そう返事して質問を終わらせた。


 オスカーから貰った剣と防具で欲が出たのだろうが、やはり実績を積んだ方が賢明と判断したようだ。


「他に意見はございませんか?無ければ講習は終わりです。皆さんのこれからの御活躍を期待しております」


 ミーメさんは閉めの挨拶をして講習を終わらせた。




「ミーメさん、ちょっといいですか?」


「はい、ユーシスさん、どうされました?」


「ちょっと見て貰いたいものがあるのですが」


 俺は小西道夫から預かった似顔絵の写しをミーメさんに見せた。




 西城祐樹さいじょうひろき

 17歳。

 5ヶ月前に王都を出奔。

 黒髪 ヒモト刀を所持


 松本朱里まつもとあかり

 17歳。

 5ヶ月前に王都を出奔。

 黒髪 ヒモト刀を所持



「知人から頼まれていまして、この人達の行方を調べているのですがご存じでしょうか?」


「冒険者ギルドと致しましては個人情報漏洩の観点から一切お答えできません」


 ん?

 この言いまわし方だと、知っているけど情報は教えられませんって意味だよな?

 知らなければそのまま知らないと言うだろうし。


「どうぞお察し下さい」


 ミーメさんは知ってる。この街に来たのか?



「あれ?ヒロとアカリじゃん」


 いつのまにかマランパさんが似顔絵を指さして声をあげた。


「会ったことあるの?」


「ああ、ヒモト人の二人組だろ?ペルミの街で会ったぞ。2週間くらい前だ。」


 意外なところからの情報。

 ミーメさんが「はぁ・・」と溜息をついた。


「この二人ならつい最近までこの街にいました。無級で冒険者に登録されて依頼を受けてましたよ。その後、旅立ちましたからペルミへはその時に寄ったのでしょう」


 どうやら、隠す意味が無くなったと判断したようだ。


「どうやって知り合ったんだ?」


「どうやったって・・土方仲間だよ」


「土方・・アカリさんも?」


「アカリは労働者達の調理を担当してたよ。ペルミはアタイ達の故郷なんだけど、最近住宅地が開発されてさ、人足が足りないんだよ。だからお給金が結構良くてね、あの子ら路銀稼ぐのに丁度よかったみたいだ」


「じゃあ、お二人ともすぐペルミに戻るんですか?」


「いや、ここで依頼を受けて4級に昇格してからペルミに帰るよ」


「そっか、一緒に行けるかと思ったが残念だ」



「ところでミーメさん、この二人ですが・・無級なんですか?」


「ええ、無級です。このお二人は冒険者としての装備が全く無く、体力も消耗しきっていましたので実技試験を受けることが出来ませんでした」


「装備が全く無い?」

「その・・二人は生活に困窮していたのでしょうか?」


「ユーシスさん、アリサさん、これ以上情報が欲しければ、そちらも隠さずに全てを話してもらわないと何も話せませんよ?」


 受付嬢モードのミーメさんは手ごわい。

 結局全て話すことにした。


 得られた情報は、

 ヒロキとアカリがこの街に来たのは3ヶ月近く前

 疲労困憊で栄養状態も悪く浮浪者同然の身なり

 路銀を使い果たし、身バレ覚悟で冒険者登録し無級ライセンスを獲得

 清掃や害虫駆除など非戦闘系の低賃金の仕事をしながら生活を立て直す

 宿代を惜しんで牧草小屋に仮住まい、それまでは河原で野宿

 召喚勇者パーティーが街を訪れる噂を聞きつけ1ヶ月半くらい前に出奔


「そしてペルミに流れ着いたのか」


「マランパさん、さっき二人はペルミで路銀を稼ぐと言ってましたよね?二人には目的地でもあったのでしょうか?」


「いやー、行く先までは聞かなかったし。なんか聞いちゃ悪いかなって」


 彼らが向かうとすれば目的地はダバスかラミア神殿だろう。

 おそらくダバスだろうな。


「ミーメさん、この総合ギルド内に飛脚(郵便屋)はありますか?手紙を送りたいのですが」


「それなら明後日に冒険者ギルドの王都定期便がありますから、それに頼めますよ」


「助かります」


 俺とアリサはその場で兄貴達と小西道夫宛の手紙を書いてミーメさんに預けた。

 内容は召喚勇者オスカー・ブラウンとヒロキとアカリの件についてだ。



「さて、これからどうするか・・」

「ヤンマさん達はどうされるんですか?」


「俺達は軽くクエストに行ってくる。 冒険者パーティー【ヤンマランパ】の初クエストだぜ!」

「スライム退治だけど、明日からの宿代稼がないとね」


「じゃ、俺達は資材調達がてらにデートに行くか」

「私達はクエストに行かなくていいの?」


 アリサは路銀のことを心配しているようだ。

 経済的にはおそらくダバスに到着してなお余るくらいお金には余裕がある。

 ここで無理する必要は無いし、それより今は少しでも王都から離れたい。

 それに旅行プラン・・じゃなくて逃亡プランも少し変更したい。


「俺達明日の8時にはこの街を出る予定だしな。その準備とかあるからクエストはまた今度な」


 その後、俺達はお世話になったスナミさんとミーメさんにご挨拶してから総合ギルドを後にした。



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