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43.マランパ奪還作戦 1

 ユーシス視点→途中三人称神視点?――





 俺達はとりあえずハヤトが根城にしているホテルに行ってみた。



 ホテルの受付で戻ってきているかアリサに確認してもらう。



「すみません、勇者ハヤト様に呼ばれたのですがお取次ぎ願いできますか?」


「失礼ですがお名前は?」


「アリサと申します。ラウアップという方から、ここへ行くよう言われてきたのですが」


「お伺いしております。ハヤト様でしたら他の皆様と食事に出かけられております。地図をお渡ししますので少々お待ちください」



 どうやらラウアップとはレストランで待ち合わせする予定だったようだ。


 地図を受け取りレストランに向かう。



「でもどうやって奪還するの?」


「問題はそこだな、まともに戦っても恐らく勝機ゼロだ」



 かつて戦った加藤弾と力が同等だとしたら、カーシャの支援の無い状態では、俺とアリサの二人がかりでも勝てそうにない。



「まてよ。お前らでも勇者には歯が立たないのか!?」



 ヤンマも表情が変わる。


 ヤンマは今日の試験試合で俺達二人の常軌を逸脱した戦闘力を目の当たりにしている。


 その俺達が勝機ゼロと言い切った事に驚きを隠せないようだ。



「ああ、俺とアリサの二人がかりでも厳しいだろう」


「マジか……」



「そう言えばヤンマさんは、どんな能力があるんです?」


「俺は“剣術一般”と“神速“あと”身体強化”だけだな」


「今日の試験は何倍だったんだ?最大何倍まで引き延ばせる?」


祝福ギフトで得た身体強化だから一応は無制限。現実的には3倍までは実践範囲。無理して5倍まではやったことある。もっとも5倍の時は全身から血を吹き出して1分ほどですぐぶっ倒れたけどな。今日の試験には身体強化は使ってない。使えば持久力が無くなって10分も連撃なんて出来ねーよ」



 5級剣士ヤンマの5倍じゃ到底太刀打ちできないな。



「まともに戦って勝てない相手なら、まともじゃない戦い方をすればいい」



 そう皆に提案してみる。



「何か良い方法あるの?」


「ない」


「おい!」



 正直なにやっても勝てるイメージが全くわかない。



「単純に考えれば、〈奇襲〉か〈無力化〉なんだが……」


「無力化は難しいかも、召喚勇者の能力って自動治癒回復(ランニングヒール)と武具生成が出来ない以外は真正勇者同じはず。そもそも、無力化する術が無いし……」



「奇襲にしても背後からの闇討ちとか難しそうだが」


「ベタな方法だが相手の視覚を奪うくらいしか思いつかん」


「どうやって奪うの?」


「「うーん……」」



 でもベタな手でも相手の意識が完全に“意中外”な時にすれば……


 結局かなりベタな作戦を練り、ハヤトの元に向かう。




 地図に書いてあるレストランを見つけ、こっそり中の様子を伺うとハヤトと女達がテーブルを囲んでいる様子が見えた。


 ハヤトは新しく手に入れた女、マランパをかかえ上機嫌のようだ。


 そしてそんなハヤトをうっとりとした目で見上げるマランパ……



「ちくしょう……」


「落ち着け、打ち合わせ通りにやるぞ」


「わかってる……」



 ヤンマは一人レストランの中に入って行った。


 俺とアリサは決めてあった倉庫群前に移動する。






「ハヤトさまぁ、もうアリサなんてほっといて早くホテル行こー!アタイもう我慢できないよー」



 勇者の魅了(チャームアイ)に侵されたマランパが胸のボタンを外しハヤトにすり寄る。



「もう少し待ってね、ラウアップがすぐアリサちゃんを連れて来るから」



「ラウアップなら待っても来ないぜ」



 込み上げてくる怒りと吐き気に耐えながら、ヤンマがハヤトとマリンパの間に割って入った。





「あんた、なんで……」



 マランパが嫌悪の眼差しでヤンマを睨む。


 ヤンマは一瞬マリンパを見たがすぐ無視した。



「ほう、脚はどうしたんだ?それよりラウアップがどうしたって?」


「ラウアップはアリサの元カレのユーシスに怒りを買ってぶった切られたよ」


「へー、そうかい。で、僕のアリサちゃんはどうなったんだい?」


「ユーシスが押さえているよ。あんたに話があるそうだ」


「ふーん、で君は?マランパを取り返しにきたのかい?」


「あんた勇者なんだってな?あんたにゃどうやっても敵わねーよ。マランパはくれてやるから好きにしろ、それより……」


「それより?」


「ユーシスのところに連れて行ってやる。付いて来てくれねーか?」


「何を考えてる?」


「何も。ただアリサが奪われてユーシスが絶望する様を見たいだけだ。見届けたら俺は田舎に帰る」


「そうか。しかしお前ってヘタレだな。勇者相手だからって惚れた女差し出すなんて最低だな、ははは、どう思うマランパ」


「心底どーでもいいです。アタイ負け犬に興味ないから。クスクスクス」




 こバカにした笑いが店内に響いた。



 ブチっ!



 ヤンマの中で何かが切れた。しかし……




『いいかヤンマ、勇者の魅了(チャームアイ)にやられた女は例外なく想い人を嫌悪するようになる。

それも愛情が深ければ深いほど惚れた男を激しく嫌悪するんだ。

だからマランパが何を言っても気にするな。

むしろ好きの裏返しと理解しろ』




「(事前にユーシスから説明受けてなけりゃこの場で暴れてたぜ……)」



「好きに言ってくれ。それより行かないのか?行かないなら俺はこれで失礼するぜ」



 ヤンマは踵を返しレストランを出ようとした。



「待てって。お嬢ちゃん達、すぐ戻るからデザートでも頼んで待っててね。マランパだけ来てくれ」


「行きますけど、アタイコイツの顔なんて見たくなーい」


「(そう言うなって、アリサと合流したら三人でホテルに行こう)」


「(それなら喜んで行くー!)」



 ハヤトとマランパがヒソヒソ話したのち、



「それじゃ案内してくれ」



 ヤンマ・ハヤト・マランパはレストランを出て、ユーシスとアリサとの合流場所に向かった。


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