40.試験開始2 アリサvsミーメ
アリサ視点――
アリサ視点――
6番手・魔法騎士 アリサ (15歳・女性)
試験官・2級剣士
いよいよ私の番。
「ユーシス……」
思わず不安になってユーシスの方を見てしまう……
「大丈夫、これは実力テストだから勝敗は関係ないよ」
そう言ってユーシスが背中をポンと叩いて送り出してくれる。
ところが……
「待った、彼女の相手は私がします」
そう言ってミーメさんは2級剣士試験官と交代した。
「(さて、カーシャの弟子の聖女様はどんな感じなのかしらね)」
ミーメさんは唇をペロリと舐める。
―“ゾクリ“
背中に冷たいものが走る。
この人たぶん凄く強い!
6番手・魔法騎士 アリサ (15歳・女性)
試験官・ミーメ 冒険者ギルド受付嬢 魔法剣士
試験官がミーメさんと聞いてドヨメキが沸き起こる。
「ミーメさんが相手をするの!?」
「相手の娘、何者だ?」
「あの人、現役の1級上位冒険者だろ?なんで!?」
「それでは始め!」
「宜しくお願いします!」
「かかってきなさい!」
私は抜剣して相手を見据える。隙が全く無い。
強敵と相対するときは、まず呼吸を合わせること――
カーシャさんの教えを忠実に守る。そうすれば……
だけど呼吸を合わせても隙なんか見つからない、けど攻める箇所は見えた!
「縮地!」
超加速で一気にミーメさんの左肩を貫きに行く!
― ガキン!
当然のように払われる。
そして、そこからミーメさんの上段斬りが来る!
私はそこから姿勢を落し、縮地で彼女の脇をすり抜け背後から連撃に入る!
― シュバババババ!
「(ふむ、確かに強いことは強い。2級の下位くらいの力はありそうだけど……)」
― キン!ガキ!シュバババババ!
「こんなもの?カーシャの弟子にしては物足りないね……ん?」
「ちょっと待った!」
「え?」
連撃途中でストップを掛けられ思わずつんのめってしまった。
「お連れさんが何か言ってるみたいよ?」
言われてユーシスの方を向くと
「アリサ、防具出すの忘れてる!そのままじゃ失格になるぞ!」
「あ……」
言われて思い出した。
亜空間に収納した防具一式展開するの忘れてた。
恐る恐るミーメさんを見る。
「出し忘れた防具があるならさっさと出しなさい。あと……」
「はい?」
「あなた確かに強いことは強いけど、こんなモノなの?正直拍子抜けしてシラけちゃったんだけど」
「やっぱりか」
今の「やっぱりか」はユーシスの声。
そう、私は手加減して戦っている。理由がある。
「もしかして本気じゃないの?だとしたら怒るけど?」
ギロリと信じられない眼力で睨まれ思わずたじろぐ。
「あの、結界の方は本当に大丈夫なのでしょうか?正直耐えられるとは思えなくて……」
「なに?」
「それに雷撃系の魔法とか放てば、他の皆さんに被害が及ぶような気がしてつい……」
「(この結界が破られるとか、そんなのカーシャの上級雷撃魔法か必殺技くらいの威力が無いと無理でしょうに
…………
まてまて……この娘はカーシャの弟子、つまり……
まさか、この娘も使えるの!?)」
「言いたいことは分かりました。じゃあ自分で納得のいく結界をギャラリーの前に張りなさい。出来るでしょ?」
そう言われて私はギャラリーの前に絶対障壁を張った。
どんな物理攻撃・魔法攻撃も跳ねのける最強の障壁だ。
「とりあえず皆さんの前には結界を張りました。後は壁や天井を……」
「ああ、そんなのはいいから早く再開しましょう、次の試験者もいるんですよ?」
ミーメさんに促され試験を再開する。今度は本気だ。
「防具展開」
瞬時に私の身体を白銀の防具が纏い、ギャラリーから“おおおおお!”と驚きの声が上がる。
「身体強化3倍……」
私は自分の身体能力を3倍まで引き上げる。
部屋の空気が過剰に電荷を帯び、ガラスや金属類がジジジ……と不気味に鳴り、所々で“パリっ“と雷光が飛び交う。
「では行きます……彗星斬!」
カーシャさんから頂いた剣に電撃魔法ギガボルトを乗せ真一文字に切り裂く。
音速を超える剣速!
― バシュッ!
ソニックブームと雷撃が乗せた斬撃がミーメさんを襲う!
「ぬん!」
その一撃をミーメさんは斬撃で粉砕する!
余波が部屋の中を荒れ狂い、結界を突き抜け部屋の壁にヒビが入った。
でもこの彗星斬は囮、縮地で一気にミーメさんの背後に回り袈裟斬りにする!
― ガキン!
剣と剣がぶつかり合い止められた。
やはり読まれていた。
でも……
それから連撃に入る。
「な、なんだよあれ……」
「二人とも残像しか見えない!」
必死の形相で私の連撃に耐えるミーメさん、これならいける!
「(くぅ、重い!一撃一撃がやたら重い!さっきと全然違う!)」
―“ピシっ“
聖剣の連撃に耐えられず、ミーメさんの剣にヒビが入り始めた!
「(ヤバイ、剣がもう持たない!)」
「たりゃあああああああああああああ!」
私は連撃の手を休ませず押し切ろうとする!……が――
「舐めるな、小娘ぇええええええええ!」
― ガキン! “ピシ”
逆に押し返されてしまった。その刹那!
ミーメさんは剣を捨て、ガラ空きになった腹に向かって、まさかの拳を叩きつけてくる。
― ズン
重い一撃が腹に染みわたる。
「ぐふぅ!?」
たまらずバックステップで後ろに下がり追撃に備える。
戦いは剣から拳に移行した。
残像が残る拳の応酬、しかしどちらも決定打が当たらない。
「(この小娘、徒手空拳までこなすのか!)」
「ミーメ、あと1分だ!」
スナミさんに言われてすぐ自分の剣を拾い、再び剣術勝負に誘うミーメさん。
それを見て私も同じ土俵に上がるべく剣を手にする。
残り時間を1分切った!
私は最後の勝負に出る。呼吸を整え相手を見据える。
広間の中はあちこちで稲光が発生し、部屋中のあらゆる物が放電によって不気味な音を立てる。
「(次の攻撃は分かっている、もうアレしかない。問題は上か下か真ん中か……)」
私は大きく重心を下げ、最上級雷撃魔法テラボルトを剣に乗せ、溜めた力を真横一文字にぶった切った!
「雷帝彗星斬!」
音速の何倍もある剣撃!途轍もないソニックブームが発生し、それに最上級の雷撃が加わりミーメさんを襲う!
「(下だ!)」
― ゴッパアアアアン!
轟音と目を眩ます雷光!
建物の南面の壁が全て吹き飛び、ありとあらゆるものを吹き飛ばし、残っているのは女性二人の姿のみ。
「ま、まいりました」
「時間だ、終了!」
私は剣を振り抜いた姿勢で固まり、ミーメさんの剣は私の喉元手前で止まっていた。
ミーメさんは私が雷帝彗星斬を振り抜く寸前に、床ギリギリの低さで急接近し、雷帝彗星斬の下を潜り、私の喉元に剣を突き立てた。
完敗だ。
試験試合なのに悔しくて涙が零れた。
「威力は聖女カーシャの雷帝彗星剣に近いけど、いかんせんモーションが読まれやすい上に、放った後が隙だらけ。もう少し精進しなさい」
ミーメさんはそう言って、後ろ姿のまま手を振り部屋を去った。




