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38.デボードの街・冒険者登録



オリヨールを出てから2日目。


 ユーシスとアリサはとある湖の畔で休憩していた。


 兄貴達に組んでくれた新婚旅行マップ……じゃなくて逃亡計画路は細かいところまで完璧に組んであり、この湖での休憩も計画通りだ。


 湖と言えば……ほんの数日前、オリヨールの湖での出来事が鮮明に思い浮かぶ。


 頭の中には絶対忘れない領域という場所があって、そこに記憶された出来事はいつまでも鮮明に覚えているらしい。


 星と月、それに湖を背にして一糸纏わぬ姿のアリサ……


 あれはもう絵画の世界と言っていいほど幻想的で美しかった。(ついでにカーシャの裸体もエロかった)


 そんなアリサは俺の隣で必死になって分厚い超国宝級とやらの防具の取扱説明書を必死になって読んでいる。



 ―“スクっ”



 アリサがいきなり立ち上がり胸当に手をやり「ストレージ(収納)」と呟いた。

 その瞬間アリサを覆っていた防具はブーツ部分を残して掻き消えた。



「え、いまのどうやったの?」


「この鎧、時空魔術の付与で亜空間への収納の機能があるみたい、展開する時は「デフォイメント!(展開)」。



 そうアリサが呟くと消えていた白銀の鎧が再びアリサの身体を纏う。



「すげー!さすが超国宝級!」


「慣れると口に出さなくても出来るようになるみたい、あと学習機能も付いてる」


「至れり尽くせりだな」



 素直に関心していると――



「あ!」



 ――アリサが突然大きな声で叫ぶ。



「時間停止空間への収納機能って……馬一頭まるまる収納できるって書いてある!」


「は?それ勇者が国から預かったりするアイテムボックスってやつ?」



“アイテムボックス、それはファンタジー世界では御馴染みの御都合主義の筆頭格のアイテム、それがこの世界にもあった。


 勿論それは庶民に手の届くはずのないアイテムであり、時空魔術師や一部の特級冒険者、特に国に大きく貢献した勇者など極限られた者しか持つことの許されない品だ。


 そんなものが防具に付与されているだと!?



「ちょっと試してみようよ」


「ん、じゃあ……」



 説明書を片手にしながらもう片方の手を馬に触れる。そして……



「ストール!(馬房)」



 瞬時に愛馬が消えた!?



「どうなった?」


「今ので時間停止空間に収納されたみたい」



 大丈夫なのか?まさか今ので死んだりしないだろうな?


 とりあえずもう一度馬を出すように促す。



「ストール!(馬房)」



 消えた愛馬が瞬時に現れた。よかった、ちゃんと生きてる!


 でもこれ、アイテムボックスとは違うような……



「これって、馬以外のものは収納できないの?」



 アリサは荷物に触れながらストールと呟くも反応は無かった。



「無理みたい」



 いろいろ試していくうちに、馬に荷物を載せた状態なら一緒に収納できることが判明した。


 だんだん分かってきた。


 この防具は勇者と聖女の為と言うよりも聖騎士専用の品なんだ。


 騎士や聖騎士と言えば本来は馬や天馬に乗って戦ったり移動したりするものだから、世界の国々は聖騎士のために必要な機能を盛り込んで作ったんだな。



「他にはどんな機能が?」


「ん~、まだちょっと分からない。こんなに太いのに字が凄く小さくて・・しかも専門用語がいっぱい書いてあるから難しくて」



 どれどれ、とアリサから取扱説明書を渡してもらい適当に開く。


 3秒ほど固まってから、そっと閉じた。


 なるほど、わからん。



 馬達を十分休ませた後、再び俺達は東へ向いて走り出す。


 昨日に続いて晴天で、素肌に当たる風が心地良い。


 ふと横を見れば並走するアリサと愛馬。


 風になびく彼女の髪が陽光を浴びてキラキラと光る。


 視線に気づいたのか俺の方を向いてニコリと笑顔を送る。



 ― ドクン!



 最近は彼女の仕草一つ一つに俺の心臓がやたら大きく高鳴る。


 ちょっとこれ心臓ヤバイ……次の街までにショック死したらどうしよう。


 実際、今日の道中で30回くらいはアリサに殺されそうになったよ……




 などと要らぬ心配していたら最初の目的地、「デボードの街」に到着した。


 まずこの街でやるべきことは合同ギルドの建物を探すこと。


 そして中の冒険者ギルドのギルドマスターに兄貴から預かった手紙を渡し、それから冒険者本登録することだ。



 合同ギルドの建物は事前に兄貴に教えられていたのであっさり見つかった。


 四階建ての大きな建物で、正面入り口から入って右側がハンターギルド、左側が冒険者ギルドに区分けされている。


 また椅子と丸テーブルが幾つも設置されており、多くの人達が食事やクエストのミーティングをしている。中には酔っ払いみたいな連中もいる。


 すぐ気が付いたのはハンターギルドと冒険者ギルドでは客層が随分違うことだ。

 冒険者ギルドの中には、ならず者のような風体の人がチョクチョク混じっているのに対して、ハンターギルドの方は普通に紳士っぽい人が多かった。



「(やっぱりハンターの方がよかったな・・)」

 


 各階案内を見ると、2階は商業ギルド受付と、その他のギルドのエリアらしい。


 3階は各ギルド執務室、4階は多目的な広間になっている。


 俺とアリサは冒険者ギルドの受付に向かった。


 一斉に周囲の連中が注目してきた。もちろんアリサに対してだろう。


 今の俺達は例の鎧は展開しておらず腰に剣だけの風体だ。


 彼女の容姿に周囲の目が釘付けになるのは仕方がない。



「一応離れないで」



 そうアリサに注意すると嬉しそうに腕に縋った。


 これがまずかったのか、周囲の視線はアリサから俺に移り、怨嗟の視線をぶつけて来た。


 チクチクと突き刺さる視線を無視し、無駄な精神力を浪費しながら受付に辿り着いた。


「すみません、冒険者の本登録お願いしたいのですが、勇者ヨシュアと聖女カーシャからの紹介状を預かっています。直接ギルドマスターのスナミさんにお渡しするよう言われてますので宜しくお願いします」



 そう言って紹介状を除いた必要書類一式を受付のお姉さんに渡した。


 赤い髪の目鼻立ちの整った中々の美人さんだ。


 一瞬お姉さんの顔が曇りまたすぐ笑顔で応対する。



「一応お伺いしますが、勇者や聖女の名を勝手に使うのは重罪ですが、ご存じですよね?」



 ああ、めっちゃ疑われている。


 そりゃ当然か、俺達みたいな若造が勇者と聖女の関係者と言った所で普通は信用しないだろう。



「いいえ、それは存じませんが関係ありません。この紹介状は確かに二人から預かったものです。宜しくお願いします」



 傍にいたアリサが凛とした声でお願いした。



「そうですか、少々お待ちください」



 そう言って書類一式持って奥の部屋に行くこと2分くらい。


 俺達は奥の応接室に通された。


 俺達はスナミさんと思われる人に挨拶して預かった書状を渡した。



「あいつらの後輩か、まあ座ってくれ。おーい、極上のお茶を出してくれ!」



 そう言って俺達は促されソファーに腰を下ろした。


 スナミさんは渡した書状を読んでいたが途中で驚いた様子で俺達を見つめた。


 ああ、これは正体がバレたかな?そう思いつつお茶を飲む、極上と言うだけあって美味しいような気がする。



「おい、受付のミーメと交代してきてくれ。今すぐだ!」



 スナミさんがお茶を立ててくれた女性に言いつけ、部屋を出てすぐにさっきの赤髪の受付のお姉さん……ミーメさんが入ってきた。



「すぐ防音結界頼む」



 言われてミーメさんは防音結界を張り、部屋の鍵を掛けた。



「さてと、ようこそ冒険者ギルドへ。当ギルドマスターのスナミだ。聖女様と勇者の卵君を心から歓迎するよ」



 そう言ってスナミさんは握手を求めてきた。


 もちろん俺達は握手する。


 スナミさんの話を聞けば彼はオリヨールの出身で、兄貴やカーシャの両親とは幼馴染だそうだ。


 ミーメさんはスナミさんの娘で兄貴達とは顔見知りらしい。



「聖女様に勇者の卵ですか?」



 ミーメさんは目を見開き驚いている。



「なんだ?信じられないのか?」


「そんなことは……でも何か証拠になるようなモノでも見せて頂ければ……」


「だ、そうだ。聖女様、とりあえずこの水差し一杯に聖水を満たしてくれないか?」



 言われた通りアリサは水差しに聖水を満たす。


 キラキラとした金色の粒子が水差しの周りを乱舞する。



「金色の粒子が舞うのは聖女魔法の特徴なんだ。聖水の方を確かめてくれ」



 スナミさんはミーメさんに水差しに入った聖水を渡した。



「確かに聖水です。本物の聖女様のようですね」



 ミーメさんは改めてアリサの方をマジマジと見つめた。



「聖女様なのですよね?失礼ながら雷帝カーシャとの関係は?」



「あの、出来れば聖女と呼ばず名前で呼んで頂くと有難いのですが……敬称なんて無くていいので・・カーシャさんは大切な仲間であり剣や魔法の師匠です。」


「じゃあアリサさんで。雷帝の弟子とは面白い。期待してますよ」



「さて次はユーシス君の方だが、君はまだ覚醒してないから証明できないか」


「じゃあ、これでどうです?兄貴・・ヨシュアから貰った勇者の剣です」



 そう言って兄貴から貰った勇者の剣をテーブルの上に置いた。



「確かにヨシュアの剣のようだが、これが何だ?」


「この剣、勇者や聖女のように、女神様に認められた者以外は、マトモに使えないどころか持つことすら難しいですよ、でも俺は自由に振り回せます」


「いいですか?」



 ミーメさんは剣を持とうとしたがビクともしない。



「ふん!」



 折角の美人が台無しになるような顔して気合でなんとか持つも、すぐ落としてしまった。



「取り合えず認めましょう」


「それにしても二人とも魔法騎士か……なんかコレジャナイ感が凄いんだけど、本当にこれで登録していいのか?」


「俺も凄い違和感があるんで変更できるならそれでも……なあアリサ?」



 しかしアリサは異なる意見を言った。



「ヨシュアさんとカーシャさんが、ワザワザ魔法騎士を選んだのには何か別の意味があるかもしれない。だから信じてみない?」



 俺がアリサの意見に反対する訳ないだろ!



「すみません、俺もアリサの意見と同じなので魔法騎士で願いします」


「あ、そう……」



 清々しい手の平返しに、スナミさんもミーメさんもジト目で俺を見てくるが無視した。


 その後しばらく雑談したのち



「じゃあ今日の15時から実技試験があるから君たちも受けてくれ、まだ時間があるからそれまでは自由にしてくれていい。あとこれ持って行ってくれ」



 スナミさんから喫茶チケットを貰って俺達は部屋を出た。


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