325.殲滅女子vsブリジットとマルタ
「やはり現れましたか、魔力特異点!」
「殲滅女子、桜木瑠香と多岐川陽子……」
ブリジットとマルタは、もはやユーシス達など眼中になく、新たに現れた二人の敵を前に、最大限の警戒と緊張をした。
「全く、何やってんのよ、あんた達は!」
「こっちはボートの上で昼寝していたら、湖なのにいきなり津波に襲われて溺死しかけたんだからね!」
瑠香と陽子は、湖に旬の寒鱒を釣りに来たのだが全然釣れず、夕方の時合までとボートの上で昼寝していた。
すると突然対岸から巨大な津波(ユーシス達の戦いの余波)が押し寄せ、二人はボートごと飲み込みこまれた!
それから二人は這う這うの体で陸に上がり、被災した近隣の人命救助等に当たってから、ユーシス達の前に現れたのであった。
「で、なにがあったの?」
「そっちの物騒なおばさん達は誰?」
「「お、おば……!?」」
おばさん呼ばわりされた事で、少なからずダメージを食らうブリジットとマルタ!
「瑠香!陽子!そいつらがブリジットとマルタだ!」
「あなた達をティラム世界に召喚した張本人よ!」
「なんやて!?」
「マジかっ!?」
― ギンッ!
瑠香と陽子は、予想もしなかったユーシスとアリサの言葉に驚き、ギン!と目を剥いて地上に降り立った。
二人の空気が変わり、口調も荒々しい関西弁風に変わる!
「そーか、そーか、このオバハン達がウチらをこんなぶっ飛んだ世界に召喚した張本人かい!」
「いやぁ、会いたかったでぇ!今まで苦労させられた分、キッチリと礼をせなアカンなぁ!」
― ボキッ、コキッ
瑠香と陽子はボキボキ、コキコキと指と首を鳴らしながら、釣り人の服から黒基調の武闘巫女衣装へと容姿を変えた!
手に持っていた釣竿も、彼女達の世界の神剣と神槍である天羽々斬 と 天之瓊矛に変化して青白く妖しい輝きを放つ!
「瑠香、陽子、気を付けろ!」
「その人たち、とんでもなく強いわ!」
「へーき、へーき」
「あんなオバハン、たいしたコトあらへんわ」
瑠香と陽子は臆することなく距離を詰める。
「いろいろ聞きたいことは山ほどあるけどなぁ……」
「足腰立たんくらいボコボコにいわしてから、じーーーっくりと尋問したるわ……」
― ニタァ……
目を細め、凶悪な笑みを浮かべる瑠香と陽子!
「まったく……リアースの女性は品のない喋り方をするものですね」
「やれやれ、どうやらリアースの民とは蛮族しかいないようです」
ブリジットとマルタは、人を小馬鹿にするポーズをとりながら瑠香と陽子を挑発する。
「まったくネチこい言い方をする中年女やな。なんであんな達観目線なん?」
「それが老害っちゅうもんやろ。ウチらはあんな中年女には絶対にならんとこな。愛される中年女を目指すで」
瑠香と陽子も負けてはいない。やはり人を小馬鹿にするポーズで挑発する。
どちらも人を食ったような性格の4人。ピキピキとお互い凶悪な笑みを浮かべ合う。
そんな言葉の応酬のあと、先に動いたのは!?
― ボウッ!
― ギュルルルルルル……
またもブリジットの身体に黒き炎が纏い、マルタの身体には立体魔法陣で覆われる!
刹那―
「黒炎撃!」
― ギュバオオオオオオオオオオオオオオオオ!ゴオオオオオオオオオオオオオウ!
さっきユーシス達を襲った〈黒き炎〉以上の〈黒炎撃〉が瑠香と陽子を襲う!
「やばい!」
「瑠香、陽子、逃げて!」
ユーシスとアリサの悲鳴!
しかし瑠香と陽子は眉一つ動かさない。
「なんやこんなもん」
「結界で防ぐまでもあらへんわ」
― ブンッ、ブンッ!
― ブシュウ……
瑠香と陽子は寄って来た虫を追い払うように、天羽々斬 と 天之瓊矛を軽く振って、黒き炎を全てかき消した!
「なっ!?」
「嘘でしょ!?」
自分達が確実に殺されそうになった黒き灼熱の炎。
その黒き炎をいとも簡単にかき消した二人に、祐樹と朱里が声をあげて驚く!
「今度はこっちの番や!」
「まずは挨拶がわりの羅魅亜式古流神武術……」
「「火爆十二角結界!えいっ!!!」」
瑠香と陽子は女神ラミアの祝福である殲滅スキルではなく、リアース世界の神道術の技を行使した!
火爆十二角結界の刀印と槍印を結び、“えいっ”と気合を入れる!
― ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「む、これは!?」
「リアースの結界爆裂魔法です!!」
「魔力周波数特定不可能!?やっかいな……!」
「彼女達の世界の魔法、“神通力”です!無効化できません!これは殺られます!」
ブリジットとマルタの周りに12本の柱が立ち上がり、それぞれの柱と柱の間に強力な結界が張られ、二人は捕らわれの身となる!
「オバハン達、こんなんで逝っくれんなや?」
「最初はゆる~くやるさかいな」
― にちゃぁ……
なんとも粘っこい瑠香と陽子の笑みのあと、殲滅のカウントダウンが始まる!
「「伍、肆、弎、貳、弌……零!」」
― ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!ボゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!!!」
TNT火薬にして約10キログラム相当の爆発が、十二角結界内で断続的に炸裂開始!
結界内で爆風、爆炎、衝撃波、爆圧、が濛々と荒れ狂い続ける!
「な、これは!?」
「リアース世界の爆裂魔法!?」
「すっげー!!!!!」
「これ、絶対助からないでしょ!?」
驚愕の表情で、爆裂が続いている結界に目を奪われるユーシス、アリサ、祐樹、朱里!
しかし瑠香と陽子は……
「上や!……あのムネタイラーなオバハンの立体魔法陣は、やはり転移魔法やったんやな」
「やるやん。まあ、それくらいやってもらわんと、面白ないわな」
瑠香と陽子は上空を見上げた。
今度はブリジットとマルタがテレポートを使い、悠々と空に浮いている!
そう、ブリジットとマルタは、最初から瑠香と陽子とは戦う気は無く、即撤退が出来るよう特殊な転移魔法の準備をしていたのだ!
「ふふふ、勝てる見込みの無い相手と戦うほど、私達は愚かではないですよ」
「ユーシスさん、とりあえず皆さんの命は預けておきます。ですが次に私達と相まみえる時は覚悟なさってくださいね」
そう言ってブリジットは両の手をヒラヒラと振って、ユーシス達にサヨナラの挨拶をする。
「では皆さん♪」
「さようなら♪」
「「テレポート!」」
―ギュルルウルルルルウ……
「あ、待たんかい!」
「逃げんな、こら!」
まさか二人が遁走するとは思っていなかった瑠香と陽子!
咄嗟に足元に転がっていた石ころを掴むと、ブリジットとマルタに向かって投げつけた!
― ギュン! がん! ごん!
投げた石ころはテレポートに伴う時空シールドを突き破り、ブリジットとマルタの頭にクリーンヒット!
「いたいっ!」
「きゃいんっ!」
― ドクドク……
ブリジットとマルタは悲鳴をあげて流血しつつ、テレポートで消え去った。
「キー、逃げられたやん!」
「遊んどらんと一気に決めるべきやったか!」
― ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ!
リアルに地団駄踏んで悔しがる瑠香と陽子!
「た、助かった……」
「もうダメだと……」
「あ、オシッコちょっと出てる……」
「ふええええええええん!」
どっと気が抜けて、その場にへたり込むユーシス達四人。
― スンッ……
「で、いったい何があったの?」
「あれ、ここに寝転がっているのって、武闘会でアリサを奪い合った二人?」
素(?)に戻った瑠香と陽子に、ユーシス達はこれまでの経緯を説明する。
「そんなことが……」
「アリサと朱里の様子が変なのもそのせいね……大丈夫なの?」
どこかよそよそしいアリサと朱里に二人は気遣う。やはり心のダメージは深刻なようだ。
「大丈夫……と言えばウソになるけど……」
「うう……祐樹を裏切って他の男に……」
二人は思い出してシクシクと泣き出した。
「アリサ、大丈夫だ。魅了されていた時間だって2時間くらいだし、こんなの裏切ったうちには入らないって」
「そうそう、魅了されていたんじゃ仕方ないって。大丈夫、今日はじっくり朱里と付き合うから」
アリサと朱里にはカウンセリングが必要なようだ。
「で、こいつらの処遇だが……」
ユーシスはルイスとネストルに目を向ける。
次回、ようやくネストルの処遇が決まる!?
「326.ネストルの処遇」




