318. 到着、そして殴り込み!ユーシスと祐樹
「うるせええええええええええええええええええええええええ!!!!!
僕はまだ何にもやっちゃいねえええええええええええええ!!!!!」
ネストルは逆切れした。
「じゃあアリサは何で全裸で横たわっているんだあああああああああ!」
「ああああああ朱里ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ユーシスと祐樹もブチ切れながら抜剣!
ネストルに襲いかかった!
「出でよ、魔槍ルノードシャティヨン!」
―ギュルルルルルル……
禍々しいオーラを放ち現れた、魔槍ルノードシャティヨンを手にするネストル!
「うらああああああああああああああああああああああ!」
「どあああああああああああああああああああああああ!」
― ガシン!ガキッ! ボシュウゥゥゥ!
ネストルは、魔槍ルノードシャティヨンでユーシスと祐樹の聖剣と聖刀を受け止めた。
「ぐっ、あの時の魔槍か!」
「こいつ本当にルノードシャティヨンを!?」
「ルノードシャティヨンだ!しかも前には無かった黒魔石まで実装されてやがる!」
「ブリジットとマルタに改造されているのか!?」
「何をごちゃごちゃ言っている!」
― グオッ!
「ぐっ!?」
「うぉっ!?」
ネストルの槍圧で押し返されたユーシスと祐樹!
「二人とも、すぐ服を着ろ!おらルイス!いつまで寝ている!お仕事だ!」
― ドカッ!
ネストルはルイスを蹴り飛ばし叩き起こした。
「うぐっ、一体なんだ?何事だ!?何があった!?」
ルイスは蹴られた脇腹を擦りながら周囲を見渡した。ルイスの目に全裸のアリサと朱里の姿が飛び込んで来た。
「アリサ!それに朱里さん!なんで裸に!?まさかネストルが!……ブバッ!?は、鼻血がぁぁああ!!!うぐっ、なんか肋骨が折れてる!?」
全裸のアリサを見て豪快に鼻血を吹き出すルイス!その上ホノカに蹴られた一撃で肋骨の骨折が判明!
痛がるルイスに気付いたアリサと朱里は同時にセイクリッドヒールで癒す。
そんなルイスに対して“ちっ”と舌打ちしたあと指を差すネストル。
「ルイス、俺じゃない、後ろだ!俺達の敵は後ろだぞ!」
「なんだと!……なっ!?ユーシス!それに祐樹くん!いつの間に……二人を剥いたのはおまえらか!?」
寝ぼけて頭が回らない上、鼻血を吹き出して混乱するルイスは、アリサと朱里を裸に剥いたのはユーシスと祐樹と思い込んでしまった!
一方ユーシスと祐樹は、『どうやらルイスはアリサと朱里を襲ってはいない』と、なんとなく察した。
そしてアリサと朱里がセイクリッドヒールを使った事を目の当たりにして聖女の力を失っていないことを把握。つまりアリサと朱里の貞操ままだ無事なことを確認した。
だからと言って許す気など毛頭ない!
「ルイス、おまえも覚悟しろ!こいつやブリジット達と加担してアリサを誘拐するなど絶対許せん!」
「ユーシス、違うの!ルイス君は手を貸したかもしれないけど、私を助けようとして……」
「「アリサ、おまえは早く服を着ろ!」」
「は、はい……」
なぜかピタリとセリフが合うユーシスとネストル。
アリサは、そして朱里も、明らかにユーシスと祐樹の姿を見て動揺していた。
一時はハーレムテンプに飲み込まれていたユーシスと祐樹への罪悪感が、また沸々と沸いて出て来る。
「ユーシス、ごめんなさい……」
「祐樹、ごめん……」
服を着終わったアリサと朱里はネストルの傍に立った。
「アリサ、なんとか抗えないのか?」
「ごめんなさい、もう無理みたい。ネストル様の事で頭がいっぱいなの……」
アリサの心はネストルに染まり切っていた。
ネストルは先と同じ轍は踏むまいと、ユーシス達が来てから要所でハーレムテンプを掛け続けていたのだ。こうなるとアリサが自力で魅了を解くのは難しい。
「朱里、ダメなのか?戻れないのか?」
「祐樹、さよなら……私の事はもう忘れて……」
朱里も辛そうに泣きながら祐樹に別れを告げた。
「くっ……」
「ちっ……」
アリサと朱里の様に、ネストルはニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべた。
「おいユーシス、勇者の魅了で手っ取り早くこっちに戻せないか?」
「ダメだ、あれは頭へのダメージが少なくない。それに朱里の心に俺が入り込んでしまう。勇者の魅了は他にどうしようも無くなった時の最後の手段だ」
「じゃあやはり……」
「隙を見てハリセンを使うか、ネストルを殺すしかない……」
二人の会話を聞いて、ネストルは不敵に笑う。
「おいおい、勇者の魅了じゃあるまいし、僕を殺せば二人が元に戻るとでも?残念だが僕を殺しても、永遠にアリサと朱里の心にこのネストルへの深い愛が刻み込まれたままになるだけだよ」
なんと!ハーレムテンプは術者を殺しても魅了はとけないらしい。
それを聞いてユーシスと祐樹は顔を歪める。
「だー、なんて面倒な野郎だ!」
「だったらテメーをぶっ殺してから、ハリセンで元に戻せばいいだけだ!」
「ふん、やれるもんならやってみろ!武闘会のようにはいかんぞ!……だがここではホテルに迷惑がかかる。どうだ、外で思いっきりやり合わないか?」
目からバチバチと火花をぶつけ合いながらネストルは提案する。
「いいだろう……」
「望むところだ!」
ユーシスと祐樹は了承した。確かにホテルで暴れて迷惑を掛けるわけにはいかない。下手をすればホテルが倒壊してしまう。
一方ネストルはホテルが壊れようが倒壊しようが、実はどうでもよかった。ただ部屋の中では長い槍で戦うのは不利だと思い外に連れ出しただけだ。
6人はレイクサイドホテルのすぐ前に広がる湖水浴場に移動した。
今は冬12月。湖水浴場には人の姿は全くない。せいぜい湖沖合にボートを浮かべマス釣りをしている釣り客がいるだ。
「おい、打ち合わせ通り、ルイスはユーシスの相手を頼む。その間に俺は祐樹とか言う雑魚を片付ける!」
「わかった。今度こそユーシスに勝つ!」
「アリサと朱里は、邪魔にならないところで僕の戦いぶりを見ていてくれ」
「…………」
「…………」
「なんだ、どうした?」
「あの、どうしても戦うのですか?」
「戦わずに話し合いで……」
アリサと朱里はなんとか戦わずに済むように訴えたが、ネストルとルイスが聞くはずもない。
「心配するな、別に殺そうというわけじゃない。ただ二度と歯向かう気が起きないくらいボコボコにしてやるだけさ!」
「そうだよ、アリサは心配しなくていいから!」
「…………」
「…………」
勇者の魅了とは違い、ハーレムテンプは想い人に対して憎しみを抱くことは無く、愛情が失せた訳ではない。ただ途轍もなく大きな偽りの愛に飲み込まれ、さらには魅了の効果でネストルを選んでしまうのだ。
そんな状態だからユーシスと祐樹をボコボコにすると聞かされて、心中穏やかでいられるわけがない。
「へぇ?俺達を殺す気はないのか。意外だな?」
「当たり前だ、俺はハーレム王になる男!殺人と営利誘拐は絶対にしない!」
「何が営利誘拐はしないだ!アリサと朱里を誘拐しておいてどの口が言う!」
「あれは営利誘拐ではない!愛ゆえの略奪だ!キミ達は僕に大切な女を奪われて一生悔しがって生きるがいい、この負け犬どもめ!めははははは!」
「てめぇ……営利誘拐だろうが愛の略奪だろうが、どっちにしろぶっ殺す……」
「もういい、イライラするだけだ。そろそろはじめようぜ……」
ユーシスと祐樹はネストル達を急かした。
「ふん、いいだろう……出でよ、魔槍ルノードシャティヨン!」
― ボヒュウ!
黒きオーラを纏い、魔槍ルノードシャティヨンがネストルの両の手に握られる!
「僕の相手は君だ、祐樹とやら!」
「おまえ、さっき俺の事を雑魚扱いしやがったな?後悔させてやるからかかってきやがれ!」
― スッ、スラリ……ギュルルル……
祐樹は、大小2本の聖刀をスラリと鞘から抜き、和洋折衷のディメンションアーマーを纏った。
続いてルイスも、ブリジットから貰った新しい魔剣を鞘から引き抜いた。
真っ黒な刀身に深紅の装飾がほどこされた試作魔剣!その名もルノードシャティヨン!?
ルイスの持つこの魔剣は、ブリジットが魔槍ルノードシャティヨンを解析し、作り上げた同様の能力を持つ試作の魔剣だ。
「ユーシス!アリサを解放しろ!おまえの運命にアリサを巻き込むな!解放して二度とアリサの人生に関わらないなら痛い目には合わせないでやる!どうだ!?」
「寝言は寝て言え!おまえこそ今すぐ降参しろ!降参するなら半殺しで許してやる!」
ユーシスもルイスも一歩も引かない!
お互いアリサに対する愛情は偽りなく、純粋で本物の気持ちなので退くことはあり得ない!
― シュッ……
ユーシスも聖剣を鞘から抜き、ディメンションアーマーを纏う。
そして怒気を含んだ目でルイスを睨みつけた。
「いくぞ、ルイス!せえええええええええええええい!!」
「こい、ユーシス!やあああああああああああああああ!」
― ガキンッ!
「槍の錆びにしてくれる!ごおおおおおおおおおおおおお!」
「朱里に手を出しやがって!ぶっ殺おおおおおおおおおす!」
― ギュガンッ!
「「やめてええええええええええええええええええええ!!」」
アリサと朱里の悲鳴が響く中、女を賭けた戦いの第2ラウンドが始まった。




