29.王都脱出 sideB
前日、加藤ダンの屋敷 1階食堂
カーシャによる王都脱出計画のブリーフィング
「ではこれより王都脱出計画の説明に移る。
最終逃亡先は中央大森林を取り巻く環状砂漠にある都市“ダバス”、
別名「逃亡者の都」だ」
カーシャが皆に王都脱出の手はずを説明始める。
「あそこか……」「また遠いところに……」
「だが年に一度は視察に行く場所だし、またすぐ会えるな」
「先ほど召喚勇者小西道夫と話し合いをしてきたが、彼らに逃亡の手助けをしてもらえる承諾を貰った。時空魔術師の亜空間を利用して王都を出る」
「召喚勇者……信用できるのですか?」
「彼らにはすでにアリサを助けて貰っている。それに今後は情報交換をすことになっている。ここで裏切る理由が無い。大丈夫だ」
「我々はこれより王都東地区のユーシスとアリサの家に向かう。その後はアイザック、カル、マーク、リュック、お前たちは王命の出ていたトリコロール視察の準備を始めてくれ」
「はい!」
「ユーコとフランソワーズはそのままユーシスとアリサの護衛についてくれ。必ず召喚勇者の襲撃がある。十分気を付けてくれ。
夕方頃にレベル上げが終わった小西道夫パーティーがユーシスとアリサの回収に来るはずだ。適当に戦っている振りをしてから彼らを送り出せ。
翌朝0400頃に迎えに行く。そのまま一緒に王都を出るぞ」
「はい!」
「ユーシスとアリサはさっき言った通り、道夫君達が来たら真美さんの亜空間収納に入り、そのまま彼らに身を任せてくれ。明日早朝に東の森で君たちと合流する」
「了解!」「わかりました!」
「ダーシュ様とシーナとケスはユーシス達と別れた後、速やかに建物の売買手続きに入ってくれ。金は後でヨシュアが渡す」
「おっけー」「「はい!」」
「王都を出てからだが、アイザック、カル、マーク、リュック、お前たちは陽動も兼ねて王命が出ていたミンバリ特区のトリコロールへ向かえ、俺達も後から向かう」
「はい!」
「ユーコとフランソワーズは、私とヨシュアに同行し、東の森入り口付近で待機、その後は私、ヨシュア、ユーシス、アリサと共に6人で一旦オリヨール村を目指す、かなり飛ばすから覚悟しといてくれ」
「はい!」
「オリヨール村へはここから早馬で5日ほどだ。距離にして1500kmと言ったところか。現地に着いたらユーシスとアリサは旅に出るための特訓を行う。いいな?」
「ありがとう」「感謝します!」
「以上だが何か質問はあるか?」
「…………」
「では各自ここの撤収作業が終わり次第、ユーシスとアリサの家に向かう。解散!」
「イエス、マム!」
*
前日、東の森 小西道夫パーティー ――
現在ダンジョン前でレベルアップ作業中。
「真美、そっち言ったぞ!」
「うそ、わ!わ!」
「こっち来ないで!いや~~~~!」
「任せて!でりゃ~~~!」
― “ぐぇ“
麗子の斬撃!フォレストトード(森カエル)を真っ二つにぶった切る!
そして、
― “ぶしゃあ“
斬られた拍子にフォレストトードの血と粘液と胃液がパーティー全員に飛散し、阿鼻叫喚の図になった。
「なにこれ?くっさ!」
「おえ~~~~~~~~」
「うえーん、生臭いよう、気持ち悪いよう」
「こ、心が折れそうだ・・」
それでも道夫達は引き続き魔物討伐に頑張った!
そして30分ほどして……
「や、やっとレベルアップしたか……」
「おうち帰りたい……日本に帰りたい……」
「真美、とりあえず試してみてよ……」
「わかった……ううう……うううう……ひっく……」
真美は亜空間収納Lv1を試した。しかし……
「なにこれ……」
「せ、狭い……」
「これ子供一人分のスペースすらないじゃん」
「レベル上げ続行か……」
「「「もうやだ~~~!」」」
*
王都東商店街 ユーシスとアリサの店の前 ――
家の前に立って警護しているユーコとフランソワーズ。
「あ、来たみたいよ」
「あれが召喚勇者の小西道夫か……なんか少しやつれている様な……」
「おまたせしました、小西です……」
「あ、はい……」
「えっと、4人と伺っていたんですけど後一人はどこに……」
「遮蔽魔法ですでに家の中に入っていると思います。これから順次回収しますので……」
「あの、この辺に銭湯ってありましたっけ……一応川で洗ってきたんですけどまだ生臭くて……」
光を失った目で真奈美が聞いてくる。
フランソワーズはちょっと覚えが無いと答えると、小西パーティー全体が黒い縦線に覆われたような気がした。
とりあえず適当にチャンバラゴッコして最後に道夫が
「おぼえてろよ ばかやろー」
と棒読みの捨て台詞をして去っていった。
小西パーティーはどうにか公衆浴場を見つけ体と服を洗った後、食料を買い込み、ヨシュア達との合流のために、再び東の森に向かった。
*
東の森 朝4時30頃 ――
駐馬中のユーコとフランソワーズ。
「ユーコさん!フランさん!」
アリサの声がして振り向くと、ヨシュアとカーシャが無事にユーシスとアリサを回収して戻ってきた。
「隊長、上手くいきましたね!」
「ああ、これも道夫君達のおかげだ」
「いい人たちだったな、召喚者にもあんな人達がいたんだ」
「道夫さん、皆さん、ありがとうございます……」
召喚勇者小西道道夫の株が曝上がりする。
空には輪を持つ月が優しい光で大地を照らしていた。
しかしそれも半刻もしないうちに日が昇る
「隊長、急ぎましょう。もうすぐ夜があけます」
「そうだな、時は今の私達に味方してくれない、急ごう!」
「「「はい!」」」
ユーシスはユーコの後ろに、アリサはフランソワーズの後ろに騎乗し、6人は王都を後にした。
*
「成人の儀から今日でまだ3日目、いろいろあったな……」
騎乗し揺られながらアリサは回想に更ける。
「誕生日を迎え幸せな一日が始まるはずが、一転悪夢の始まりになるなんて……なんでこうなったのかな……」
アリサは想う――
だけどユーシスと心を通わせることが出来た。
彼の私への想いが伝わり、私は彼に想いを伝えた。
お互いがお互いの想いを受け入れて私達は相思相愛になった
たくさんのモノを失ったけど、私は幸せを掴みかけているのかもしれない。
それでも……
「私はユーシスの傍にいていいのかな、そんな資格あるのかな……」
アリサの闇は拭えてはいなかった。




