01-2.最後の日常 後編
男主人公視点――
さてと……
「なあ兄貴、俺どうするのが一番なんだろう」
俺にとってアリサは家族であり、幼馴染であり、妹のような存在だった。
でもそれは、いつの頃からか俺がアリサを〔一人の女性〕として見るようになってから変わってしまった。
平たく言えば愛してしまったわけだ。
俺は苦しんでいた。恋に焦がれるとはこういう事なのか。
アリサに想いを告げるべきか、このまま家族の一人として接するべきか……
「どう選択しようとユーシス、おまえの自由だ。だけど想いを伝えなければ、いつかアリサが違う男のモノになるのは理解しているか?」
そう、伝えなければいつか誰かに奪われてしまうのは間違いない。
でもアリサは凄く可愛くて、御淑やかで、身体もボンキュッボンなんだけど、なぜか言い寄る男は皆無。
だから慌てずさらに距離を詰めてからでも良い気はするんだ。
ヘタレの逃げ口上なのは自覚してる。
「ちなみに、本屋のアッシュもパン屋のジョナサンも靴屋のマーカーも魚屋のモリスも果物屋のパーカーも男爵のバルバロッサも王国騎士団のレオナルドもアリサを狙ってるよ?競争率激高だから」
「は?」
カーシャの口から信じられない情報が飛び出した!?
「だからぁ、本屋のアッシュもパン屋のジョナサンも靴屋のマーカーも魚屋のモリスも……」
思わず耳を疑った。そんな噂聞いたことないぞ!?
「ななな、なんでそんなこと知ってんの?本当なのそれ!?」
「知っているも何も、アリサから何度も相談受けたよ、告白されたけどどうやって断ればいいかってね。言っとくけど連中アリサのことは全く諦めてないみたいよ」
青天の霹靂、驚愕の事実!
「いや、ちょっと待って、アリサってそんなにモテるの?」
「おまえ、あの容姿にあの性格でモテないわけないだろう」
「それに、あの子の店に花を買いに来る男って100%彼女狙いだよねぇ?」
これはいかーん!早く告白しないと!
「お、俺、アリサの誕生会で告白する!」
「「おおおお、がんばれー!」」
ニヤニヤと生暖かい眼差しで声援を送るアニキとカーシャ。
うん、ありがとう。でもなんか粘っこい感じ。
「バシっ!」
俺は両手で頬を叩き気合を入れた。
「ところでユーシス、気合入れついでにもう一丁稽古つけてやろうか?」
「え、勘弁してくれよ……」
「付き合い悪いなぁ、私達暇なんだけど」
「仕事してください。俺も帰って仕事に戻るんで」
かまってオーラむき出しにして絡んでくる勇者と聖女、非常にうざい。
「いいかユーシス、もしもアリサが成人の儀で聖女とかに覚醒とかした時にだなぁ、今以上の力とか絶対に必要になるだろ、魔王や竜王や勇者に狙われたりしたらオマエが守ってやらないと……だから稽古しようぜ」
「お断りします。俺ら日常生活レベルなら十分強いんで。だいたい本物の魔王や竜王なんて歴史上一度も攻めてきたことなんてないじゃん。勇者が攻めてきたらアニキたち呼ぶんで大丈夫」
「人に頼るんじゃねー、それにオマエ勇者を甘く見ちゃいかんぞ、勇者なんてエロイことしか考えてない性犯罪者ばっかなんだぜ」
「そうそう、こんなヤツばかり」
「あんたら、言ってて、悲しくならない?」
ジト目で二人にツッコミいれる。
「と、とにかく稽古しようぜ、ついさっき、新必殺技思いついたから試したいんだよ」
「帰るー!」
「「えー」」
纏わりつく勇者と聖女を引きはがす。
残念な勇者&聖女モードに入った二人は兎に角うざい
それにしてもアリサが聖女?
いや、流石にないだろう。
ない……よな?
*
ヒロイン(女主人公)アリサ視点――
朝の訓練が終わり、私は自分お店“フラワーショップ・アリサ”の開店準備をしている。
そこへカーシャさんとヨシュアさんが現れた。
「やあアリサ、今朝ぶり」
「こんにちは、お疲れ様です」
「いよいよ明日は成人の儀だね、今どんな気持ち?」
「私みたいに聖女になんかなるなよ、なったら悲惨だよ」
いたずらっぽく話しかけてくる二人に対して、私は困り笑顔で応えた。
「聖女はちょっと……もしなったら夜逃げしちゃうし」
「あははは」
「ふふふふ」
和やかに笑ってはいるけど冗談ごとではない。
私は聖女に覚醒した人で無事だった人など聞いたことが無い。
「まあ聖女なんてロクなものじゃないしね、私も聖女に覚醒したときは召喚勇者どもから怒涛の魅了攻撃受けまくったし、コイツが勇者に覚醒してくれたおかげで最後は助かったけど、そうでなかったら……ゾッとするわ」
「現役の聖女様を前にしてアレだけど、ほんと聖女なんてなるもんじゃないよな、あと勇者も……」
目の前でカーシャさんは軽い口調で話してはいるが、毎日が召喚勇者による凌辱の日々で大変だったらしい。ヨシュアさんが真正勇者でなければ、確実に終わっていたんだと思う。
このティラム世界において「聖女」は崇められてはいるものの、女性にとっては、やりたくない職業ナンバーワンだ。
「明日は午後から誕生会だろ?ちょっとだけ顔出すよ」
「なんかユーシスが思いつめた顔してたけど、明日あたり告白するんじゃない?」
ニマニマしながら二人は去って行った。
残された私は顔を赤く染め、どうしようもなく緩む頬を両手で覆う。
そして素敵な明日になるよう創造の女神テラリューム様に祈りを捧げたのだった。




