18-3.暴動回避
ダンの屋敷ラブホ部屋
ダンをベッドに拘束させてから最低限の治療をしたあと、今後の仕事を確認し合う。
「よし、じゃあこれよりは奴隷達の解放を優先しよう、ああ、ユーシスとアリサはエントランスホールにあるソファーで休むがいい、ヨシュア、すまんがここを頼む。」
カーシャはそう言って部屋から出て降りて行った。
1階エントランスホール。
エントランスホールに降りたカーシャは状況を確認する。
エントランスホールの床にはダンの奴隷達が眠らされており、隊員達がキューリーと共に身元確認の作業をしていた。
ホールの角にはローテーブルとソファーが有り、ユーシスとアリサが肩を寄せ合って“くぅ……くぅ……”と寝息を立てている。
その様子を見て安堵の笑みを浮かべていたカーシャに、ダーシュがまた聖水の申し出をする。
カーシャは隊員に大量に水を入れる容器を探して来るよう命じた。
また、ケスとワナが夜食を準備したいとの申し出があったので許可する。そう言えばユーシス以外、皆は昼から何も食べてなかった。
あとカルとリュックにユーシスの店まで戻らせアリサが無事に救出されたことを集まった民衆達に報告する共に暴動に発展しないよう注意するよう命じた。
その後、隊員が持ってきた水瓶に聖水を一杯に満たしたカーシャは、ダーシュと共にまたダンのいるラブホ部屋に上がった。
「どんな具合だ?」
カーシャがヨシュアにダンの様子を尋ねる。
「なにも変わらずだ」
そっけなくヨシュアが応える。
「この爆発による傷は…………時空断裂系の爆破によるもの?時空魔術師の仕業??」
ダーシュはコテリと首をかしげシゲシゲと爆破された股間を観察する。
「助太刀してくれた魔術師がいたようです。隣の屋敷に住む者の一人のようですが……」
「ほう。それにしてもこの傷見てごらんよ、傷口のあちこちで時々妙なテカリ具合してるだろ?これは次元断裂の残滓だね。カーシャ、コイツの股間まわりだけセイクリッドヒールをかけてみな」
「セイクリッドヒール…………」
ダンの股間周りが金色の粒子が広がり…………皮膚で覆われこそしたものの欠損した男性器は復活しなかった。
「「これは……」」
「な?治らないだろう、時空断裂爆発は直撃を受けると簡単には元に戻らないんだよ、気の毒だがこのボウヤ、残りの人生、玉無し・竿無し・女不要だねぇ」
「「朗報だ!」」
「そんなことより問題は、こいつにどうやって奴隷解放の言質を取らせるだが・・」
ダンに奴隷解放宣言すれば、ダーシュは大幅に奴隷解放の術式を省略できる。
無くても出来ないことは無いが、時間がかかり解放人数も多いのでできれば手間を省きたいのだ。
その場にいた全員が方法を模索する。
「魔法で喋らすとか」
「魔法での強要は駄目だ、こいつ自身に喋らさなと」
「普通に拷問にかけては?」
「こいつの口を割らそうってなら四肢を切り裂くくらいしないと」
「相手は一応勇者なんだろ?拷問は後々王国が介入してきて面倒になんじゃ……」
「正当防衛ってことなら行けるだろ」
「ふん、今のこいつの状態で何かやらかそうって言うとアレかい?」
「「勇者の魅了……」」
「じゃあそれで行くかい、勇者の魅了に耐性ある女性は今誰かいるかい?」
「私を含め女性隊員は対応済みです」
カーシャが答える。第三独立小隊女性隊員は、悲しい過去の出来事が原因で、魅了耐性を獲得するに至っていた。
「そうかい、じゃあ行ってみよう、カーシャ、女性隊員が来たら電撃でヤツを起こしな!」
「了解」
*
ところ変わって、王都東商店街ユーシスの店付近
彼らが出発したときより大勢の民衆が王都東商店街に集まり、異様な熱気に包まれていた。
今にでも暴徒化しそうな民衆を、必死で憲兵隊が抑えているが、ボチボチ限界のようだ。
「これってかなり拙くないか?」
「ああ、暴動一歩手前だ」
馬を走らせユーシスの店近くまで戻ってきたスラヴ王国第三独立小隊のカルとリュックは、緊張した表情で状況を分析する。
このままだといずれ暴徒化した民衆を鎮圧するために組織立った暴徒鎮圧部隊が送られてくる……
「アレでこちらに注目させるか……」
「了解!」
カルとリュック、聖騎士である二人は民衆からほんの少し離れたところで下馬し、そのまま抜剣してお互いの剣を高く交えて聖光を輝かせる!
民衆のほとんどが一斉にカルとリュックに注目した。
「第三独立小隊のカル・パラティンヌとリュック・パラティンヌだ!聖女誘拐、並びに傷害・殺人未遂容疑の召喚勇者加藤ダンの屋敷からたった今戻った!」
「誘拐された聖女、アリサ・リースティンは無事確保した!洗脳の影響もなく正気を保たれておられる、もう大丈夫だ!」
「容疑者の召喚勇者加藤ダンだが、現在我々第三独立小隊の管理下にある!落ち着き次第尋問を開始する!だから皆の者、安心してほしい!冷静かつ秩序ある行動をお願いする!」
「「我々の勝利だ!!」」
そう言い切ると民衆から“わっ”と歓声が上がった。
民衆の空気は良い方向に動き出し、暴動の危機は去った。
前話との整合性を取るため、微細な改稿を施しました。
2020.12.08




