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18-2.ユーシスvs加藤弾 第二ラウンド 後編



「いけ、ユーシス!奴を仕留めてこい!そしてアリサを取り戻せ!」



 ―バシッ!



 弾かれたようにユーシスはダンとアリサの元に向かった。






*





 一方ヨシュアは、ダンとアリサを戦いやすい大広間―乱交部屋に誘導した。




 ―キンッ!ガキンッ!ズシャッ!ギュリリリリン!





「て、てめー本気じゃねーな!?」



 涼しい顔でダンとアリサの凶刃をさばくヨシュア。


 自分の攻撃がまるで通らないことにダンの苛立ちが溜まる!



「ヨシュアさん!ダン様のために死んでくださいぃ!!!」



 可愛そうなくらい必死なアリサだが、ヨシュアに通じるわけもない。


 そんなアリサを見て、ヨシュアはついつい言葉をかけてしまう。



「アリサ、もうよせ!……と言っても無駄だったな。勇者の魅了(チャームアイ)はそんな甘い外法じゃないか」



 哀れみの目でアリサを見ながら、ヨシュアは相変わらずノラリクラリとやり過ごす。



「おのれい!」


「キーーーッ!」



 いよいよ剥きになるダンとアリサ!



「悪いがダン、おまえの相手は俺じゃないんだよ、ユーシスだ」



「なに?」


「ユーシス?」



一瞬ポカンとするダンとアリサ。



「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」


「ぷ……くくくく!」


「何を言い出すかと思えば……あんなゴミが今更俺の相手とか?」


「ヨシュアさんボケちゃったんですか?ユーシスならもう殺しましたよ?」



 大笑いする二人。


 しかし――



「て、思うじゃん?ところがどっこい!」


「「え?」」



ヨシュアは指をフリフリ揺らしながらニヤリと笑う



「うりゃあああああああああああ!!!!」



 ―ガッ!



「きゃん!?」



 ユーシス突然の強襲!背後からまずアリサの首筋に手刀を決め気絶させた。



「て、テメーはユーシス!さっき殺されたはずじゃ!?」


「生憎だがおまえを倒すまで俺は絶対に殺されん!勝負だ、ダン!」


「小賢しい!ならもう一度殺すまでだ!」



 ―ブオン!バシュッ!ザンッ!シュリリリリン!



 超高速域の攻防!


 しかも剣と剣が激突しない不思議な流れだ。


 躱し流す非常に高度なユーシスの剣技!


 基本から応用までしっかりマスターしているユーシスだからこそ、大幅にパワーアップしたいま存分に生かされる!



「これが勇者のスピードとパワーの領域か!これなら!」


「なんだ、今までと全然違う!てめぇ、一体何をしやがった!?」



 まるで別人の動きのユーシスにダンが戸惑い驚愕する!?




「ぐぬぬぬ、ゴミのクセにぃいいいい!!!」



 ―ゴッ!ブオッ!



「予想以上に戦えているな、ダンの股間の損傷と多量の出血が良いハンデになっているようだ」


「ふむ、しかしスピード・パワーともにわずかにダンの方が勝っているか。だがこれなら……残り30秒……」



 いつの間に来ていたのか、ヨシュアの横でカーシャが戦いを観戦していた。


 そのカーシャにダンが気が付く。



「女!貴様が何かしたのか!?」


「しましたけど何か?」



 カーシャはヘラヘラとダンを見下す。


 そのイラつく顔を睨むうち、ダンは何かを思い出した。そして今度は顔色が青ざめていった。



「まさか……カーシャ・リースティンか!?」


「ん?どこかで会ったかい」



 かつてダンは、ティラム世界に来て早々、聖女であるカーシャを強奪・隷属させようと襲ったことがあった。


 しかしその時は勇者の魅了(チャームアイ)を使う間もなく瞬殺され、あっさり病院送りにされていた。



「おまえも私にチョッカイ掛けてきた召喚勇者のうちの一人だったのかい、全然気が付かなかったよ。その時に殺しておけば……よくも妹分と弟分を!」



―ギリリリリ!



 ヘラヘラしていたカーシャの顔が一転、般若の顔に代わりダンを威圧する!



「っ――――!」



 ―ブオン!バシュッ!ザンッ!ギュリリリリン!



 その間もずっとユーシスの攻撃は続いている。



「ええーい、ちょこまかと小賢しい!貴様らまとめて屠ってくれるわ!」



 ―ジジジジ……



 突如ダンの周りの空気が帯電しはじめる!そして聖剣に閃光が走り雷が乗り始めた!


 さらにダンは力を溜める為にユーシスから離れようとする!



「ユーシス、大技がくるぞ!チャンスだ!」


「 ! 」



 ユーシスもまたダンの動きを見て勝負を決めにかかる!



「死ねい、ユーシス!勇者の秘剣技ジゴブレ……なっ!?」



 召喚勇者最大の秘剣技、ジゴブレイクを放とうとした瞬間!



「縮地ぃぃぃ!」



 ―ギュン



 ユーシスの姿が消えた!


 いや、ダンの眼はユーシスを捉えてはいたのだが、大技のモーションに入っていたため対応できない!



「ガラ隙だぜ!どりゃあああああああああ!!!!!!」



 ―ザンッ!ザザンッ!



「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」



 ダンの右腕が空を舞い、絶叫が屋敷中に響き渡る!



「まだだ、どらぁああああああああああ!」



 続くユーシスの第二撃!



 ―グオオオオ!



「な、舐めるなぁぁぁあああゴミィィィィ!」



 ユーシスの斬撃に応戦するダン!



 ―ガッキャアアアアン! バキン!



 ダンの左手に握られた聖剣とユーシスの剣がマトモにぶつかり合い、ユーシスの剣が木端微塵に砕け散る!



「予測ずみだ!沈めえええええええ!



 ―ボゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!



 剣を聖剣に砕かれてなおユーシスは踏み込み、渾身の拳をダンの顔面に叩き込んだ!



「ぶげらああああ!!!」



 ダンの顔面が大きく歪み、床に叩きつけられバウンドする!



「う、ぐ……がぁ!…………………… ……」



 ダンの意識は完全に刈り取られ、無様に床に沈んだ。



「はぁはぁ、や、やったぜ!ダンに勝った!……ぐぉ、いでででで!体中が痛えええ!」



 勝利の余韻に浸る暇もなく、ユーシスは過剰身体強化(オーバードライブ)の負荷が一気に身体に押し寄せてきた!



「ぎゃああああああああ!いたたたたた死ぬ!マジ死んでしまう!」



 痛みにのたうち回るユーシス。


 とても勝利者には見えない醜態ぶりを晒すユーシスにカーシャとヨシュアが労いの言葉をかけた。



「危なかったね、ギリギリ2分だったよ」


「これ以上伸びるようなら俺達も介入したんだがな、まあ良かったぜ」



ヨシュアとカーシャは苦笑いしながらユーシスの勝利を喜んだ。


そしてユーシスにセイクリッドヒール(完全回復)をかけて回復させた。



「ふぅ、セイクリッドヒール(完全回復)かけてもらったけど、まだ全身に疲労感が残っているぞ?なんて技だよ……」



ブツブツと文句を言うユーシスにカーシャが呆れる。



「勝ったのに文句言うとは贅沢な!でもなんで殺さなかったんだい?」


「アリサもまた魅了されていたし、殺してもよかったんだぜ?」


「殺したかったさ。でも……」


「でも?」


「この屋敷の従業員の現状がアレだからな。殺すと都合悪いんだろ?それに調書とかもあるだろうし……」


「まあな」


「それに今だからこそ言えるんだが、本当に俺に殺せたか大いに疑問なんだ。最後の一撃が拳じゃなく剣だったら……もしかすると躊躇いが生じて最悪は……」



 ユーシスは考え込んでしまった。


 ハイファンタジー世界の住人とはいえ、殺人の経験のないユーシスには確かにハードルは高かったのかもしれない。


 それが憎むべき相手であったとしてもだ。


 しかしこの甘さはこの先ユーシスを、そして同様にアリサも苦しめることにもなるのだが、それはまだまだ先の話だ。



「ユーシス、あんたやっぱりヘタレだねぇ。でもそれでいいよ。汚れ仕事は私達みたいなモンに任せておけばいいのさ。あんたヘタレにしちゃよくやった方だよ」


「そうそう。今はそれよりアリサだ、早くダンに魅了を解かさないと!」



 ヨシュアは伸びているダンを叩き起こし、このまま殺されるか、アリサの魅了を解いて大人しく捕縛されるかを選択させた。



「ちくしょう、なんで俺がこんな目に……へぶっ!?」



 ダンはアリサの魅了を解いた後、再び気絶させられ、拘束魔法でベッドに括り付けられ眠らされたのだった。



「ユーシス……私また……もうユーシスの顔を見ることができない……」



 またしてもユーシスを裏切ってしまった罪悪感から、アリサのメンタルは完全に限界を越えてしまった。



「アリサ、俺は何も気にしちゃしないよ。もう離れないでくれよな?」



 そう言ってユーシスはアリサを優しく抱きしめた。



「うん……」



 ユーシスを何度も裏切った罪悪感と、それでも許してくれるユーシスへの優しさに翻弄されながら、アリサはユーシスの温もりを感じつつ身を委ねた。



 ユーシスはようやくアリサを取り戻した。


 しかしこれで事件が終わった訳ではなかった。




2020.12.08 新規に上げました。

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