18-1.ユーシスvs加藤弾 第二ラウンド 前編
ダンの屋敷ラブホ部屋
「召喚勇者達が手助け?信じられん……」
「何か魂胆があるとか?」
ヨシュアとカーシャが予想外の助っ人に驚いた。
「はい、助けるかわりに幾つか条件を飲みました」
「何を言われたんだい?」
「条件というか取引です、特に無理難題と言うのではなくて……」
「ふむ、急ぐ必要は?」
「いえ、特には……」
急ぎでは無いと聞いて、その召喚勇者の件はまたあとで検討することにした。
「それで、ダンは今どこに?」
「わかりません、股間から血をまき散らして転げ回ったあと、フルポーションがどうのこうの言いながら何処かに行ってしまいました」
「むぅ……フルポーションがあるのか。ではヤツの傷は回復しているな」
「いいや、時空系の損傷はフルポーションでも治せないはずだ。痛みと出血くらいは治まるかもしれんが。それでも出血多量でフラついているだろう」
カーシャは改めてユーシスの目を見つめた。そしてそこに漲る闘志を感じた。
「ユーシス、ダンを倒したいか?」
ユーシスはコクリと頷いた。
「ああ、ここまで好き放題されたんだ。やり返さねえと気が済まねぇ!」
「そうか、ところでユーシス、その剣は鉄か?ミスリルなら戦いになるんだが……」
「いや、これは俺が作ったステンレススチールの剣だ…………まさかこの剣じゃ戦いにならないのか!?」
カーシャは少し考える。
「いいかい?その剣は鋼鉄の剣よりはマシだが、聖剣にマトモに太刀打ちするのは無理だ。鍔迫り合いにでも持ち込んだらすぐ砕けちまうよ。流すか避けてくれ、いいね?」
「わ、わかった!」
本当はヨシュアかカーシャの持つ聖剣を貸してやりたいところだが、一般人のユーシスには聖剣は扱えない。
聖剣は勇者・聖女・聖騎士・剣聖といった選ばれた者にしか扱う事はできないのだ。
「カーシャ、その心配は無さそうだぞ。やつの聖剣はそこに転がっている」
ヨシュアの指さす方向を見ると、なるほどダンの聖剣が壁に立てかけてあった。
「なら得物のハンデは無いかもな……あとユーシス、本来おまえの実力で召喚勇者に太刀打ちするのは無理だ。これは分かっているな?相手は人外級の実力なんだから」
「う、うん……」
「だからちょっとだけズルをさせて貰うよ。ズルと言ってもリスクを伴うズルだ。かなりきついゾ?」
「ダンを倒せるのならリスクくらい負うさ」
最愛のアリサをいいようにオモチャにされ、ユーシスの怒りは収まる気配など微塵も感じられない。
そのとき――
「へくちゅ!」
バスタオル一枚に身を包んだアリサの身体がすっかり冷えてしまい、可愛らしいクシャミを響かせた。
「おっと、とりあえずアリサに服を着せないと、皆アリサが着替えている間、ドアの外に出るよ」
アリサを残して三人は部屋の外で待機した。カーシャは〈ズル〉の方法をユーシスに説明する。
*
三階上、屋根裏倉庫。
「ちくしょう、治らねえ!いったいどうなってやがる!?」
ダンは高価なポーション他をしまってある屋根裏部屋倉庫に上がり、毒づきながら超高価かつ超レアなフルポーションを飲み、もしくは股間にぶっかけながら毒づいた
しかし欠損した男性器が治る気配は無い。
フルポーションの効果で出血は治まり痛みも全くない。
多少つっぱるが動き回る事も可能だ。
ただ股間が時空損傷により所々不気味に光っている。
「あのアマ、絶対ぶっ殺す!いや、あいつは聖女だからこの傷を治せるかもしれんな……ん、なんだ?」
ダンの耳に微かに男女の声が聞こえた。
丸腰に傷負いということもあって、とりあえず屋根裏部屋の昇降口を引き上げる。
「ちっ、だせえな。この俺様がコソコソ逃げまわるなんてよ、ボイヤー!」
ボイヤーは特殊な魔石をカメラ代わりにして盗撮する盗撮魔法だ。
近距離でしか使えないが、盗撮し屋敷内の部屋の状況を映像として覗くことができる。
もちろん勇者魔法ではなく、ダンが趣味のために必死で努力して覚えた特殊魔法である。
ダンは屋敷内の全室に特殊な魔石を設置していた。
「む、なんだこいつらは!騎士団か!?しかもユーシスとか言うゴミも一緒じゃねーか!?まさかあの聖女の奪還に!?」
ダンは各部屋の様子をボイヤーで覗くと、ヨシュア達に完全に制圧された状態であることを確認した。
「ちっ、あんなクズども普段ならなんでもないんだが、丸腰のうえに負傷の身だからな、何かないか……」
ダンは屋根裏倉庫部屋を探して回るとミスリル製のダガーナイフが出てきた。
続いて服は無いかと探したが無かった。
今のダンはナイトガウンしか羽織っていない。
「さてどうするか……んん?」
ダンは、ボイヤーでアリサが一人で着替えているのを見つけた。
自分の聖剣もそこにある。
―にやり
歪な笑みを浮かべてダンは、アリサのいるラブホ部屋の上、厳密に言えばベッドの真上に移動した。
そして――
「ふん!」
―スパッ!スパスパ!
床を……三階から見れば天井を切り裂いた!
―ぼふっ
切り裂かれた天井はベッドの上に落ち、音はほとんどしなかった。
そしてダンはその穴から部屋に侵入。
脱衣所で着替え中のアリサのところへ……――
「よかった、ユーシスが無事で……許して貰えて……私もう絶対にユーシスを裏切らな……むぐぅ!?」
安心しきったアリサをダンが強襲!
突然背後から忍び寄り手で口をふさがれる!
「へ、何言ってやがる、そんな汚れた身体でよ」
「んーーー!?」
「ユーシスを裏切らないか……いやー、ほんと可哀そうになぁ、おまえはまたユーシスを裏切るのさ、ひひひひ」
「んん!んーーー!」
「それじゃあ……勇者の魅了!」
「っ―――――!」
超至近距離からの勇者の魅了の連撃!
そしてまたしてもアリサは………
*
―ガチャ
ドアが開き、アリサが部屋から出てきた。
そしてすぐ――
「ねえ、ユーシス……」
「なんだい……グフッ!?」
―ザクリ
「アリサ……?」
「ごめんね、また裏切っちゃった♪」
アリサは隠し持っていたダガーナイフでユーシスを深々と刺した。
―ドサリ
ユーシスは致命傷を負い床に崩れ堕ちた。
「よっし、よくやった!次はあの男をやれ!」
「はい、ダン様!」
ダンが姿を現しアリサに命令!アリサは言われるままにヨシュアに凶刃を向ける!
「あの子また魅了されたのか!」
―ギリリリ……
悔しさにカーシャの歯ぎしりが響く!
しかしダンはそんなカーシャを無視!アリサと一緒にヨシュアを屠りに行く!
「ふん、放置するとは女だと思って舐めてくれたか。だが丁度いい……セイクリッドヒール!」
キラキラとした金色の粒子がユーシスを覆い一瞬にして傷を癒す!
「ぶはっ!はぁはぁ……」
「大丈夫かい?いよいよユーシスの出番だよ。いいかい、ヤツは聖剣を持っていた。剣と剣を合わせるのは無しだ、簡単に砕け散ってしまうからね。全て躱すか流すんだ、縮地と組み合わせればきっと勝てる!そして活動限界は約2分、それまでに勝負を決めな!オーケー?」
「オーケーだ!やってくれ!」
「過剰身体強化!」
―ゴゴゴゴゴゴゴ!
ユーシスの身体に信じられないほどの力が漲る!
しかし同時に――
「ぐあああああああ!!!???」
全身の神経が塩漬けにされたかのような激痛が走る!
そしてコンコンと湧き出る力に耐えきれない身体は破壊と再生を繰り返す!
これこそが限られた聖女にのみ使える禁じ手、過剰身体強化だ!
「いけ、ユーシス!奴を仕留めてこい!そしてアリサを取り戻せ!」
―バシッ!
ユーシスは弾かれたようにダンとアリサの元に向かった。
2020.12.08 新規に上げました。




