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劇的なる浪漫詩集および抒情詩集 Dramatic Romances and Lyrics  作者: ロバート・ブローニング Robert Browning(翻訳:萩原 學)
5/22

旗振り役が居なくなり The Lost Leader

本作は Wordsworth の変節を非難あるいは当てこすったものと言われるが、失望感の表明に留まり、ワーズワースの名その他個人攻撃的な要素は含まない。それより『立って戦え!』と、もどかしさが際立つのは如何にも若い。

I.

一掴みばかりの銀貨で彼は買われた、

 リボン一片ばかりを外套に刺し

幸運の女神遠ざけんがために生まれたような人だった、

 他の運勢など知るものか。

JUST for a handful of silver he left us,

Just for a riband to stick in his coat—

Found the one gift of which fortune bereft us,

Lost all the others she lets us devote;

奴等、与える金は持ちながら、銀少々を施したのみ、

 遠慮なく巻き上げながら出し惜しみ居り。

我等どれほど銅貨を積んだものやら、彼の仕事に!

 ボロく見えても心は錦、その心意気こそ誇りとしたものを!

They, with the gold to give, doled him out silver,

So much was theirs who so little allowed:

How all our copper had gone for his service!

Rags—were they purple, his heart had been proud!

我等彼を敬愛したもの、ついてまわり、崇め、

 その穏やかで気高い視界に入らんとし、

偉大な言葉を教わり、明晰な口調を見習い、

 死ぬも生きるも範とした!

We that had loved him so, followed him, honoured him,

Lived in his mild and magnificent eye,

Learned his great language, caught his clear accents,

Made him our pattern to live and to die!

我等のシェイクスピア、我等にとってのミルトン、

 我等と共にあったバーンズ、シェリー、(その墓からも照覧あれ!)

前衛からも市民からも独り飛び出して……

 後衛より奴隷より独り落ちぶれる!

Shakespeare was of us, Milton was for us,

Burns, Shelley, were with us,—they watch from their graves!

He alone breaks from the van and the free-men,

—He alone sinks to the rear and the slaves!

II.

我等雄々しく前進すべし、彼の姿見当たらずとも。

 詩歌が我等を励まさん、彼の竪琴ならずとも。

偉業為されん、彼がお篭もり広まる間に、

 他の信奉者はなおも跪くというのに。

We shall march prospering,—not thro’ his presence;

Songs may inspirit us,—not from his lyre;

Deeds will be done,—while he boasts his quiescence,

Still bidding crouch whom the rest bade aspire:

彼が名を消し去るや、刻むはまた一つ失われた魂、

 また一つ仕事が傾き、また一つ足跡途絶え、

また一つ勝利が悪魔に、嘆きが天使に、

 また一人の人でなし、また一つ神への冒涜!

Blot out his name, then, record one lost soul more,

One task more declined, one more foot-path untrod,

One more triumph for devils, and sorrow for angels,

One wrong more to man, one more insult to God!

人生の夜が来た。彼を二度と近づけまい!

 苦痛ためらい疑いしかなく、

此方には強いられた賞賛……夕べの薄明、

 もはや祝福の朝は来ない!

Life’s night begins: let him never come back to us!

There would be doubt, hesitation and pain,

Forced praise on our part—the glimmer of twilight,

Never glad confident morning again!

よく戦うがいい、言えるのはそれくらい。……堂々打ち合い、

 狙えよ心臓、我等が彼のを貫く前に。

新しい知識を受けるがいい、そして待て

 天に赦され、玉座の御前に!

Best fight on well, for we taught him—strike gallantly,

Aim at our heart ere we pierce through his own;

Then let him receive the new knowledge and wait us,

Pardoned in heaven, the first by the throne!

a handful of silver:マタイによる福音書26章14~15節

時に、十二弟子のひとりイスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところに行って言った、「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。

purple:古今東西、紫は高貴の色とされる。

Shakespeare was of us, :歴代詩人を引き合いに出しつつ、「彼こそ我等にとってのそれであった」とも言っている。

the van:【英】vanguard

thro’:through

lyre:楽器のリラ。竪琴の1種。手持ちで奏でる小型のもので、その伴奏で語るのが Lyrics であった。

the rest bade aspire:「私たち以外」の「熱望を表明する者」とは、少なからぬファンが離れずに居るという事情を語る。

Aim at our heart ere we pierce through his own:Strike our face hard ere we shutter his own (初出)

ere:before

his own :his heart

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